表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/26

老いからは逃げられない

 「あら、ここにいたのね。お二人さん」

 「お、お待たせです」

あの後もうそろそろ場面を変えてもいいんじゃないか、という事で私とお姉ちゃんはリビングに下りてきた。

ずっと同じ風景じゃ面白くないからね。

 「あ、ああ。鈴……」

なんだか疲れた様子の将也。なぜだか生気の無い目をしていた。

 「おやおや。しょー君。どうしたのよ。そんな離婚届けに判を押す直前みたいな空気しちゃって。なにかあったん? 離婚する?」

お姉ちゃん、離婚届って……いや、たしかにそんな空気纏ってるなぁ、とは思ったけどね。なんか重いの。しかも将也の空気だけが。お母さんの方は全然そんな事なくて楽しそうなんだけど、将也周りだけがドンヨリしている。

これはあれだね、女の人はとっくに冷めてて、男の人だけ抵抗しているパターンだ。

 「もう諦めよ、将也……、相手は完全に冷めてるよ。もう、修復は不可能な段階だよ……現実は早く受け入れたほうがいいよ。ね」

 「そうだよ、しょー君。男の人は修復したいと思っていても、相手は冷めちゃってるって多いんだよ。もう別れを切り出された時点で大抵は終わりなんだよ」

お姉ちゃんも乗ってきてくれて、2人掛りで将也への攻撃。我ながら流石の姉妹だね。打ち合わせなしでちゃんと出来てる。

 「はぁ……相手って、二人のお母さんなんですけどね……」

 「そうねぇ、流石にその冗談はお父さんに悪いわ。私があの人に怒られちゃう。意外と嫉妬深いのよお父さん……」

 「うーん。それもそっか……お父さん、お母さんの事大好きだもんね」

そう、結婚してもう何十年と経っている筈なのに未だにラブラブな両親なのだ。

今は海外に長期赴任中。一年に数回しか帰ってこられないみたいなんだけど、もうねそのたまに、がやばい。もうね、目に毒、いや、全身に毒だよ。

あの二人は私達が気付いていないと思っているのかな。お父さんが帰ってきた日は私達気を利かせて早く寝てるんだけど。まあ……私なんか眠りが浅いから普通に気付く。うん。そう、ドシドシ、ドシドシ、ともううるさいの何のって。

イチャコラしよってからに……。……いいなぁ……。

とまあ、そんなことは今どうでもいいとして、

 「お父さんだって冗談が解らないほど子供じゃないわよ。鈴ですら反応しなかったんですもの。これで本気になんてしたら鈴以下ね」

むむ、若干バカにされた感が……、

 「ん、んん……ま、それもそうね。流石のあの人でも本気にはしないか。鈴以下はないわね、うん」

な、なんか、若干。……もの凄く馬鹿にされた感が……、

 「なんか物凄くバカにされた感が! あるんですが!」

 「あら、声に出した。……まあ、だってその通りですもの」

 「だね。私、実はちょっと言った瞬間しまったって思ったのよね。これ下手したら鈴が不機嫌になるぞって」

 「さ、流石の私もこんな事じゃ……、こんな事じゃ……」

将也が、結婚……私以外と……? そんなの、

 「みとめない……」

 「っ! 鈴っ!}

将也が慌てて席を立ってこっちへやってくる。

どうやら話しに入らずに聞きに回っていたみたい。

 「みとめない……。みとめない……んだけど……。けどまあ、流石にお母さんの年齢の女性まで敵認定はしないよ。あはは。私もそこまでバカじゃないよ」

 「……へ? 鈴? えっと、あれ?」

さっきの慌てた顔は何処へやら。抜けた顔をする将也。

 「ん? どうしたの?」

私の肩を掴んだままなにやら固まっている。

 「ま、まあそうよね。流石に私じゃ鈴も本気にはならないわね。うん、そうよね、私もういい年だものね」

 「お母さんお母さん……どんまい」

 「茜……お母さん、もういい年、だったみたい」

 「まあ、うん。知ってる。私がもう今年大学生なわけだし。まあ、年ではあるよね」

ありゃ、いつのまにか不思議な空間が出来上がっている……?

将也は固まっているし、お母さんはなんかショック受けているし、お姉ちゃんはお母さんの肩をぽんぽんしてる。なんだこれは……、

 「え、えっと……なんだかよく解らないけど……取り合えず……話しが進まないから……。皆元にー戻れ!」

そういって頭を小突いて回る。こつん、こつん、こつんと3発、小気味いい音が響く。

 「鈴……、まあ、大丈夫だったんならよかった……」

 「いったいなぁ。もう鈴、お姉ちゃんまで叩かなくても良かったんじゃない? 私だけは普通だったじゃない」

 「はい」

お姉ちゃんにはいらなかったかもだけど、一応ね。一応やっておきました。

 「私は……年寄り……ま、まだ30代なのに……。あれ、30代って年寄り? おばさん? おば……さん……」

 「あれま、まだお母さんがおかしいままだ。ねえ、お姉ちゃん、お母さん可笑しいよ、どうする?」

 「うーん。そうねぇ。一応鈴のせいなんだけど……まあ、それは置いといて……しかたない。放っておいて若い私達だけで話しを進めましょう」

 「わ、わかい……私達……。私は、おば、おば、さん……」

 「まあ、しょうがないね。そうしよっか」

 「ちょ、鈴まで……。え、あか姉さん、本当にいいんですか? 放っておいて」

 「うん。まあ、いいんじゃない? 多分お母さん位の年齢の女性には避けて通る事はできない問題なのよ」

避けては通れない、問題……なんかかっこいい。

 「そ、そうなんですか……」

 「そういうことなら私達で話を進めよう。将也、お姉ちゃん」

 「りょーかい」

 「お、おう」

次回、鈴探偵社廃業のお知らせ(予定)

次回もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ