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彼の好みのタイプは……

目が覚めた……。不思議と寝起きは暖かかった……。なんだか安心できる匂いがした……。この感覚……知っているような……でも知らないような……僕の体はこの感覚を知っていただろうか……?

えっと、この人の背中の感覚だったら知っていたのだっけ? 幼い頃なら、確か……。

そうだね、少なくとも僕がそれを強く望むようになってからは一度だってなかったはずだ。だって、もしも僕の望みが一度でも叶っていたなら、僕がそれを忘れるはずなんて無いのだから。

この温もり、ぼくは知らなかった……だけど、分かるよ。だって……これは僕が、ずっと求めていたものなんだから。

 「おはよう、将也」

 「ああ、おはよう……鈴」

大好きな人の腕の中で目を覚ます、こんな幸せが僕に与えられるだなんて……いつもあいつのことはクズだのゴミだの言っていたけどたまには良いことするね。ありがと、神様。今日だけは感謝してあげる。

それにしてもお尻が痛い。どうも僕はベットから転げ落ちたようだ……床が固い。

 「しょうや、お尻痛い……ベッド連れてって」

 「……お前はアホか……おい、鈴。お前今の状況分かってんのか?」

 「じょうきょう? えっと、なんのこと? あとアホじゃないよ……」

よく動かない頭で反射的に答える。

あれ、なんだか将也の言葉遣いが昔に戻っているような……。

 「おいアホ、寝ぼけてないでさっさと目を覚ませ。俺は早い事アホを叱らないといかん」

ありゃ、これ完全に昔の口調だ……。将也のお叱りモードだ……。ちなみ僕限定のモードだったりする。つまり僕はこれから彼のお説教を受けるわけだ……そう思うと、少しづつ頭がすっきりしてくる。

僕、なにかしたっけ……。

 「えっと、おはようございます。将也さん。本日はおひがらも……」

 「……はぁ。ああはいはい。なんのことか分かってないパターンね。了解。んじゃ、鈴、お前あれ見てなんか思い出すことないか?」

 あれとは? 将也が指差した方向にあったのはなんの変哲もない勉強机。僕が小学校入学と同時に買ってもらって今でも大切に使っている、本当に何の変哲もない勉強机だった。

 「え、えと……勉強、しろと?」

 「違う」

そう言って指を上下に動かす。

上……真っ白とは言えない少し汚れた天井……。うん、何も無い。

下……何の変哲もないカッターナイフ、刃が出てる……刃が、でて……。

 「っ……! わか、わか、った……。しょ、しょうや……」

瞬間で全てを思い出した。あの時感じた恐怖、絶望。将也に縋りたくなって、手を伸ば……そうとして、彼の侮蔑を思い出す。

 「いや、あ、ああああああああ」

少しだけ伸ばした手が空を切る。

たすけて……だれか、しょうや……たす、けて。


 バシッ!

頬に感じた微かな痛み。その痛みが僕の意識を僅かに正気に戻してくれる。

 「しょうや……? うう、いたい」

 「ごめん……。でもこうしないと、本当にお前がどっか行ってしまいそうだったから……」

 「うん。ありがとう。ごめんね」

僕の目には将也の顔が映っている。僕の事を本気で心配してくれて自分だって痛いのにペシッとしてくれて、なのに本当に申し訳なさそうにしている彼の顔。

あ、うう。ごめんね、ごめんなさい……悪いとは、思ってるんだよ、思ってるんだけど……。

抱きつかずにはいられない。謎の引力……なんちゃって。

 「ヒシッ……なでなで……なでなで……はふぅ」

 「お、落ち着いたか……?」

 「うん。落ち着いた。お話し、聞くよ」

将也に引っ付いたお陰かな、だいぶ落ち着いた。

大丈夫、今の僕なら恐れずに言える。彼がこんな事で僕を拒絶するわけ無いもん。うん、大丈夫。

 「ねえ、将也。お話し……怒られる前に聞いておきたいことがあるんだけど、いいかな?」

 「ああ、勿論。なんでも聞いてくれ」

 「な、なんでも……ゴクリ……。へ、あ、あぁ、ごめんなさい引かないで、ごめんなさい、違うから、変な事考えてないから!」

あ、危ない……。ちょっと変な事考えちゃった。なんだかあんまりシリアスにならなくて良いんだって解って、ずっと妄想していたことが次々と頭を過ぎって……ああ、だめ……やばい、本当にやばい。このままじゃ将也のこと押し倒しちゃうかも……。

いや、まあ、そうしたらもう一回ビンタが飛んでくるだけなんだけど。

将也には勝てないからね、うん。

 「えっと、じゃあ気を取り直して。ねえ将也、僕女の子になっちゃった。ど、どう思う? これからもずっと一緒?」

 「おう、もちろん!」

 「っ! だよね。うんうん。そうだよね! あ、じゃあさ、僕って可愛い?」

完全に調子に乗ってる僕だった……。

 「ま、まあ……可愛いんじゃないか、うん。かわいい……」

なんだか歯切れの悪そうな将也だったけど、僕は解ってる。これはお世辞とか、空気を読んでとか、そういうあれじゃないことは。

だって、さっき見た僕の姿、完全に将也の好みのど真ん中なんだもん。

 「えへへ、だよね、かわいいよね! 将也こういう子大好物だもんね!」

神への不遜が過ぎる。

神キライ系女子、その名も水波 鈴!

神罰落とされないように気をつけてね。


次回、鈴被告人……判決、ギルティ(予定)

次回もよかったら読んでください。

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