夢から覚めて……
第2話目です。
「ん……んん……ふぁあ……。あさ、だ……」
カーテンの隙間から朝日が差し込み僕の顔を照らす。こうして朝日は今日も僕に地獄を告げる。なんのことかって? 地獄は地獄だよ、この世界は生き地獄なのさ。神様は僕の事なんか完全に見捨てているからね。非情だよ、あいつは……。将也、僕が大好きな人。そんな人と同じ性別にするんだもん。もうそれだけであいつがどれだけ非情なのかが分かるってもんだよね。
「なんて、言ってても何も始まらないんだけどさ……」
さて、もはや日課となった神様を恨んで始まる僕の日常。そろそろ本当に始めないと、今日の食事当番は僕だったはず。つまり僕がここで神を恨んで時間が過ぎれば僕はもちろんお母さんとお姉ちゃんまで朝食を食べれずに空腹のまま一日を始める事になるわけだ。神じゃなく僕が恨まれてしまいそうだよ……。
「というわけで、よいしょっ」
ベッドから足を下ろすと一気に立ち上がる。寝起き特有の低血圧に脳を揺さぶられながら、よちよちとクローゼットに向かう。いや、実際にそんな擬音が出ているわけではないけれど。せいぜいがふらふら、くらいのものだ。よちよちなんてそんな赤ちゃんっぽい擬音は僕からは出ない、なにせ僕は男なんだから。
女の子だったら、まだかろうじてポイントが付くかもだけど僕がそんな音をさせた所で何のポイントにもなりはしない。況してや彼からのポイントなんて10は下がりそうだ。彼が好きなタイプは清楚系の黒髪ロングだからね。そう今目の前にちょうど居るこの女の子みたいのがタイプ……。なにさ? どの子のこと言ってんのって……ほら、いま僕の目の前に居る……居る……?
「who are you? 間違えた、あなた、誰……?」
今僕の目の前に立つ彼のタイプを狙ってきているような少女はいったい誰なんだ? 僕の部屋で、僕の1人部屋で、なんかあせった顔してるこの少女は何者なんだ? この鏡に映る少女は……えっ、僕だったり、する……?
「いやいや、そんなバカな……いくらアホだのなんだのと散々な評価の僕でも自分が見知らぬ、どこか面影があるような気がしないでもないとはいえ、見知らぬ少女になるだなんて、そんないつか望んでいた事とはいえ……そんな……そんな……」
ありえない……そんなこと、ありえない……。男として生まれた僕が、神が見捨てたせいで大好きな人と一生恋人になれない地獄を、あと何十年も過ごさなきゃいけなかった僕が……まさか……。女の子に……。
「ううん、ちょっと待って。ここで結論を出させて、後でもう一回絶望に叩き落とすパターンかも……。そうだ、そうに違いない」
髪の毛……うん、本物……。胸……小さい……じゃなかった、本物。下は……ない……。こ、これは……いいんじゃないの……? 結論出しても、ひょっとしたら神様が毎日恨まれるのに疲れたとか……そんな不思議があるのかも……。
じゃ、じゃあ。いくよ? 喜ぶからね? いいんだね? 後から取り消しとか無しだよ? そんなことしたら本当に一生恨み、飛ばし続けるからね? 良いんだね? よし、じゃあ……すぅ、はぁ、すぅ……。
「お、女の子に、なったあああ! これで、これで……将也ああああ!」
念願かなって、とうとう同性の幼馴染を思い続けても恥ずかしくない体になれた。その嬉しさはもう、とてつもないものだった。
「いっやったああああ! 僕、僕……しょうやあああ、しょう、や」
少し叫んで、頭も少しは冷静になって、将也の顔が頭を巡っていく。この変わった僕を見た彼が……すごく冷ややかな目をしていた。興奮が一気に冷めていく。そして変わりにきたのは焦り、いや、絶望……そう、きっとそれは絶望と呼ぶべき感情だった。
彼に嫌われる……。友達ですらなく、幼馴染ですらなく、どこの誰でもなくなる……。
「いや……そんなの……いやだ……。いやだ、いや、い……や」
意識が遠のいていく、頭が、回らない。バサッ、音がした。
床に倒れた音、薄れていく視線に見えたカッターナイフ。何も考えられない、だけど、それの使い方だけは不思議と分かった。
「ごめ……んなさい。しょうや……さよう、なら……」
銀色の部分を出して首に押し当てる。彼に嫌われる、くらいなら……。
いのちなんて、ひつようない……。
なんかシリアスっぽいですが、そういうのがダメな方ごめんなさい。もう少しだけ我慢してください。
彼女アホなのでシリアス直ぐ終わります。そう、彼さえこればすぐ終わるんです。
次回彼の好みのタイプは……。
次もよかったら読んでください。