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2年1ヶ月振りに会った大好きな人は相変わらず人間嫌いでした。

作者: 柚晴

正しくいえば2年と1ヶ月と5日前のお話。私が高校1年の頃の、7月15日金曜日の放課後に、休んだことのなかった部活に15分だけ顔を出して早退し、短縮授業で、部活が16時上がりだった地元の高校に通っている彼に合わせて学校を出た。

「今から電車乗るから1時間後くらいかな。"いつもの公園"でいい?」

「俺も同じくらいにつくと思う。いいよ。」

そして、2人は、"いつもの公園"へ向かった。


この数ヶ月後、私達の関係は恋人から友人に戻った。お互いに忙しく時間が作れなかった。それどころか連絡の回数が著しく減り、恋人と言う関係すらが曖昧なものになっていた。だから、曖昧なままではなく、今は、お互いのやるべきことに専念しよう。そう言う気持ちで私から別れを切り出した。だから、私は、成人式までに、可愛くなる努力をして、いい女になって、また、はるに好きって言おうと決めた。


はると別れてから、私は、部活に打ち込んだ。次第に身体にボロが出始めた。ろくに学校にも通えないくらいに体調を崩した。数ヶ月後、病院に行き、とある病気であると言われた。


別れて間もない頃は、頭の中は、はるのことで一杯だった。正しくは、別れる前から、なんだか私、この人と一生一緒にいる気がする。中学生ながらに、勘でそう思ったりしていた。だから、はるを手放した反動で、一層の事死別した方が良かったとも思った。でも、時間とともに解決してくれる。きっとそうだろと信じていた。


部活が私達が主体になり忙しくなった頃、はるの事はたまに何かの拍子に思い出すくらいになった。何事にも熱く打ち込む自分の性格に救われた。


そう思っていた矢先、夢にはるが出てきた。私の大好きなくしゃっとしたあの笑顔が。

その時、今まででは考えられないくらいに、この人に会いたいって心の底から思った。会って、話がしたい。どんな話でもいい。ただ、はるの顔を見れば済むのだろう。顔を見るまで、このよくわからないモヤモヤを消すことはできないだろう。未だにヒールの靴を履くことが出来ていない自分の足元を見てそう思った。


強がりでアカウントごと全部消したLINE、消していなければ、また、会いたいって言えたのに。今の私には、家に電話をかけるしか方法がない。

私の家からはるの家までは徒歩5分。この2年と1ヶ月と5日の間に、一度も遭遇するとはなかった。はるのお母さんや、お姉さんとは、何度か駅で顔合わせてるんだけど。

どうしたら会えるだろうかと、悩みながらそれこそ2年以上ぶりに地元の図書館へ行き本を借り、夕方の涼しくなってきた公園で、読書でもしようと思い公園へ向かった。"いつもの公園"は、もう、"いつもの公園"ではなく、ただの思い出の場所だ。この人気の少ない公園で、よく、バスケをしているはるを眺めるのが好きだった。


もう暗くなってきた。帰ろう。そう思い、家の方面へ向かって歩き出した。


自転車で向かい側から走ってる来る高校生がいた。部活終わりだろうか。それとも講習とか。だんだん距離が近づいてきた。顔が判別できる距離まできたその高校生は、はるだった。夢かな?って思った。それくらい唐突にはると再会出来たのだ。予定より1年半早く再会した。


無言でお互いに会釈をした。このままじゃいられないと思い、鼓動が早くなるのを感じながら、私は声を発した。

「少し時間を貰えませんか?」

はるは無言で頷いた。泣いたらはるを困らせちゃうと思い、必死にこらえた。嬉しくて泣きそうだ。半分パニックで泣きそうだったのかもしれないが。会っていなかった期間を穴埋めするかのように、色々な話をした。

「すごい久々に人と話したよ。でも、やっぱり人間は嫌い。」

人見知りがひどく、無愛想で、寡黙な感じ。私と5センチくらいしか変わらない身長。話す時につくジェスチャー。私が知ってたはるとなんら変わりがない。2年1ヶ月ぶりに会った大好きなはるは、相変わらず人間嫌いなはるでした。


よく人間嫌いなはるが人と付き合ったなとか思うけど、結局はるから言わせてみると

「やっぱり動物だよね?」

ってガチな顔して私に言ってくることでわかるように、私のカテゴリは人ではなく動物らしい。彼女を愛でるではなく、動物を愛でていた感じだろうか。

「お姉さんと何回か駅ですれ違ったよ。いい匂いがした。はると同じ柔軟剤の匂い。私の好きな匂いだ。」

「ねーちゃんの匂い嗅いだことないから、いい匂いって言われてもわからんが。嗅覚のレベルもだけど、なんか、やっぱり人間ではない動物だよね。」

そんなことを言われた。


「2年ぶりに急に現れてびっくりしているよね。ごめん。でも、私には、はるが必要だし、4年前からずっとはるのことが好きです。」

「普通、俺みたいなやつのこと4年もしたら嫌いになるだろう?」

「嫌いになるどころか、もっと好きになっとるわ。うち、面倒くさい人間やからね。」

後半はなんかもうヤケクソだった。一人称をうちって言うときはだいたい自分をコントロール出来てない時とかが多い。八つ当たりしているようでもあった。今は、すっかり私って言う一人称が定着しつつあるが、中学に入ってから、関西訛りが強かった私は、話し方を改めた。

「確かに面倒くさい人間の部類だよね。まぁ、人間自体が面倒くさいものだし、俺はやっぱり人間は嫌いだけど。」

初めてディスられた気がする。でも、ディスられることですら愛おしく思えた。


はるは私と別れてから、もう、一生彼女を作ることはないと思っていたらしい。


半年後、受験が終わったら、また、会おう。そう決めた。女子力とやらを磨いて、その時まで気長に待とう。また、一緒に居られるように。


来年の夏もやっぱりぺったんこ靴を買おう。そう決めた。


私って本当面倒くさい人間だ。

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