ビッグスクーターの進化。
ビッグスクーターといえば、「重い」「加速が悪い」「小回りが利かない」「デカい」の三拍子どろか四拍子揃った微妙なバイクだった。
筆者としても大昔のイメージはそんな感じ。
しかしそんな状況が変わりつつあるのはご存知だろうか。
そもそも、上の4つのイメージになった原因はヤマハ。
一連のブームの火付け役はヤマハのマジェスティによるもの。
デカすぎるボディといえばマグザムなんかが代表的だが、250ccにアルミフレームなんか導入しちゃってバカみたいにデカイもんを出していたりする。
何よりも重すぎて加速は最悪。
しかしマグザムはニッチ層に売れてしまい、カスタムなどがされたものが注目されたため、他のビッグスクーターがワリを食った感がある。
まあマジェスティやスカイウェイブなんかもスイングユニット延長とかする人間がいたので、そういう人間の影響も多分にあるとは思う。
そんなイメージを引きずったため、ビッグスクーターは一部にしか売れず、現在の売り上げはむしろ減少傾向にある。
理由としてはホンダのNCシリーズなどの成功によるもの。
やっぱり、操作感がどうしてもよろしくないビッグスクーターにはそれなりに限界点があった。
そんな状況が変わってきたのが2012年を過ぎたあたりである。
進化したMAX一族の登場だ。
それまでマジェスティのちょっとした改良でしかなかった存在が、単独のシリーズとしてデビューを果たす。
何こまもが一新された新型T-MAXなど、一連のシリーズが登場しはじめるのだ。
この一連の次世代MAXシリーズは、ヤマハの現地調査による結果をフィードバックしたものだった。
それは欧州の若者は「クラッチなんてださいよな!」と思う層がかなりいて、その上で「どこにでも行きたい、どこでも1台で済ませたい」といった需要があり、一方で「最高性能はそこまで求めない」という思想があり、そこに当時のビッグスクーターが合致していたことをヤマハが知っていたため。
これはつまりNCが成功した理由と同じだけど、ヤマハが進んだ道は「ビッグスクーターをもっと強化してバイクらしい性能にしてしまおう」というものだった。
T-MAXは大成功。
見事にスポーツ性能の高さが認められ、BMWなどが後追いする形となるぐらいだ。
それぐらい欧州の若者を筆頭にスクーターは認められたわけ。
しかし一方でT-MAXはどちらかといえば「真のビッグスクーター」というイメージに近い。
ただデカいだけでなく、エンジンもそれなりの性能であり、それに合わせたスポーツ仕様としてくみ上げられている。
一方で、「もっと軽くて普段使いもできるものがほしい」と求められて生まれた存在こそ今回紹介したいXMAXである。
こちらも元々はマジェスティの系列だが、独自に進化していった。
特にヤマハが力を入れたのが「軽量化」であり、フレームを一新し、最近発売されたばかりの新型の250と300はなんと「車両重量179kg」とマジェスティから9kgもダイエットに成功している。
Vストローム250が180kgオーバーなのを考えるととても軽い。
にも関わらず、コイツのラゲッジスペースはそれなりの空間が確保されている。
何しろハンドル付近にも小物入れがあるほどだ。
合計で48Lぐらいの収納力である。
(マジェスティが60リットルなので少ないと主張する人間もいるが、マジェスティが業界No.1で脅威の空間だっただけ)
しかも、9kgも軽いといったが、そもそもコイツはABSにトラクションコントロールにスマートキーまで装備しちゃった化け物だ。
こいつらだけでどんだけ重量が増えるか正確には不明だが、それを装備して9kgも軽い。
なんでそんな贅沢な仕様となったかって「アジアでもXMAXが売れる需要があるから」
特に需要があるとされるのは300ccシリーズで、日本では250ccがメインで売れるとされるが、300ccのために生産ラインを制限した結果250ccの納車が遅れているという。
筆者が見積もりとったら4ヶ月待ちだった。
それだけアジア各国で望まれたバイクだったというわけだ。
理由としてはフィリピンやタイなどでタクシーなどにも使われるからだが、一方でこれらの地域では「フラットダートが当たり前」だったりするからである。
となるとこういう装備はどうしてもほしくなる。
こういった豪華絢爛な装備は重量を重くするわけだが、それらを排除した場合はそこらのビッグスクーターよりも15kgほど軽いといわれる。
かなりの軽量化具合である。
値段を省みない場合はリチウムイオン電池とすることで後2kgほど軽量化できるので、恐らく所有者の一部はバッテリーをリチウムイオンにしてしまうんじゃないだろうか。
そんなXMAXがとにかくどこが進化したかといえば、走行性能である。
頑強になった鋼のバックボーンフレームや強化されたスイングユニットは完全にフラットダートなどの走行も視野にいれたものだが、信じられないことにコイツでガレ場に突入するのが欧州に平然といたりして、そしてそれをものともしない性能並びに仕様だったりする。
そんなんだからホンダが対抗してX-ADVなんかを出してきたわけだが、ヘタするとX-ADVの小型250cc~400cc版とか出かねないぐらいいの勢いがある。
また、エンジンパワーは馬力換算で5馬力上昇、トルクもかなり上昇し、加速もスポーツ走行だけを考えたら微妙だが普段乗りではかなり軽快な加速を示す。
乗ってみたが一時期本気で購入も考えた。
この理由としてはPS250が関係している。
バイクを最初に購入したいと思った時から、筆者は別段クラッチに魅力をそこまで感じていなかった。
だから最初からクラッチレスのものばかり考えていたのである。
それでいてどこにでも行ける上で中型でいいかなと思っていた。
そう思う要因にはPS250の憧れというものがあったからだ。
しかし問題はPS250がドリームでも殆ど整備できなくなっていること。
元々ドリームでお世話になりたい筆者にはドリームで整備できない中古車両の購入は難しい。
XMAXが成功したらPS250の後継機の登場は硬いと思うが、そのPS250とXMAXは見た目こそ似ていないが設計思想がすごく似ているのだ。
「どこにでも行ける」
「普段でも使える」
「頑丈」
「優秀なラケッジスペース空間(PS250は前後に積載力がある)」
「軽量な車体」
例えばPS250の車重は172kg。
無骨なPS250はカウル類が排除されているため、当時のビッグスクーターとしては極めて軽量。
仮にリチウムイオン電池に換装した場合のXMAXは177kgなので5kgの差。
しかしその分を十分埋めるパワーがあり、両者共にトルク性能の影響でフラットダートなどには極めて強い。
また、さほど注目されていないが燃料13Lに対し、それなりの燃費なので航続距離はマジェスティと比較して長い方であり、燃費がいいとされるPS250と並んでいた。
まあ見た目として後者はキャンプツーリングなどに不向きではあるが、そこは妥協できる。
例えばXMAXにGIVIのステーを入れてTRK52のモノキートップケースをブチ込んだら、100L近い積載が可能。
これは実はXMAXの特徴で、強化されたフレームによりマジェスティと違いモノロックケースではなくモノキーケースというデカくて最大積載重量10kgのものが普通に乗せられる。(モノロックケースは3kg(国外では5kg)と積載重量が低い)
マジェスティにモノキーケースを搭載させようとすると結構ムリをすることになるが、そういうことがXMAXにはない。
そもそもマジェスティはラゲッジスペースが観音開きのせいでトップケースは使いづらいがそういうことがない。
トップケースだけで日本一週も不可能じゃない積載力になる。
だから本気で考えてみたが、結局やめた。
やめた原因はXMAXの性能ではない。
例えば足つきが悪いといわれているXMAXだが、筆者はベタ足ではないものの普通に足がつく程度の身長と股下。
なので特段そこに不満もなくローダウンの必要性はなかった。
やめた理由は単純にニーグリップできないことと、Vベルト式無断変速が実に面白くなかったから。
DN-01が売れなかった原因とDCTが売れた要因はそこにあったかとXMAXで気づいてしまった。
やはりニーグリップが出来るのと出来ないのではかなり違う。
直線ではさほど気にならないが、筆者の場合は極めて狭い道を進み、急カーブや狭い街路のT字路をよく右左折したりするため、そういう際に大きな差となってくる。
乗ったことが無いPS250だが、これによってこいつの存在も霞んでしまった。
どこでも1台で済ませようと思うとなかなか希望の1台には辿り着けないというが、まさに修羅の道である。
また愛車の選定は振り出しに戻ったと言える。
まー乗ってみるとわかるが車重は250kgをオーバーすると手軽な乗り物ではないね。
CB1300とかXJR1300に乗る人は純粋に凄いと思う。
引っ張って取り回すだけで息が上がるし、多分こいつら持ち上がらないぞ。
240kgは何とかなるが270kgとかになると想像もつかない。
だからこそ、そこそこに軽くてどこにでもいけるバイクを求めているが、どこかで妥協が必要なようだ。
とにかくXMAXはビッグスクーターのイメージが変わるようなバイクだが、まあなんていうかコイツが成功したら、いよいよホンダやスズキもビッグスクーターの考え方を改めねばならないと思う。
ホンダはどうやら直接後追いしないようなので250cc帯でNCみたいなものを出してくるかもしれない。
筆者は250ccよりも600cc前後でそういうものが欲しいのだが……
ちょっと捻ったら3秒前後で100kmまで行く様な化け物でなくていいんだけど!?