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~とりあえずデートする~


「……と、まぁこういう経緯で今に至るわけ」


結局、男だと思われてた事にぶちギレたキグナスにボコボコにされ医務室に運び込まれた俺はそこで今までの経緯をキグナスとマリアに語る事になった。

キグナス曰く、同じ冒険者としてジェイクが急激に強くなった秘密がどうしても知りたいと譲らなかったのだ。


本当はプヨの存在はかなり特殊なのであまり知られたくなかったのだが、昨日まで格下として見くびっていた相手に誠心誠意、頭を下げて頼めるキグナスの誠実さを無下には出来なかった。

あんまりグイグイくるもんだから俺も困り果て、シリウス学長もキグナスさんなら大丈夫でしょうと言うもんだから諦めてプヨとの出会いを語ったわけだ。


「ん……たしかに、数日前のジェイクからは信じられないほど強くなってた。その原因はプヨにあると考えて間違いなさそうだね」


またゴドン教官の時のように信じてもらえないかと思ったが、キグナスは優等生らしい頭の柔軟さで受け入れてくれたようだ。


「えーと、だからその、なんだ……俺がキグナスに勝てたのはプヨのおかげだから結婚とか何とかはノーカンって事で……」


「いや、それとこれとは別だ。君はモンスターテイマーでありモンスターの能力を駆使して僕に勝った。それに1度宣言した事をなかった事にするような卑怯な真似を僕はしない」


ええ……融通効かな過ぎるだろ、さっきまで男だと思ってたやつと結婚とか言われてもピンとこねぇよ……。

今までの冷たい態度からは分からなかったが、キグナスは意外と融通が効かないというか頑固な所があるようだ。


これは俺が何を言ってもムダな気がして、とりあえず濁す以外に俺が出来ることはなさそうだった。



「ま、まぁその話は追々って事で……」


「うむ。」


このまま忘れてくんないかなぁ。俺がキグナスにたじたじになってる間にプヨはマリアの手のひらの上で呑気に跳ねている。

くそっ、相棒なんだから少しは助けてくれよとついジト目でプヨを見るが完全にスルーされた。プヨは頭いいから絶対に気づいてるはずなのに!


「でも、プヨって一体なんなんだろうね?武器になったり身体能力を上げてくれるスライムなんて聞いたことないよ?」


マリアの疑問も最もだ。こうも不思議な事が続くと、いよいよプヨの存在が分からなくなった。

もしかしたらスライムですらないんじゃないか?


「ジェイク君、起きてますか?」


「あ、学長」


「こほん、ジェイク君。たしかに君の戦闘能力は確認させて貰いました。あなたを今日付けでAクラスにクラスアップする事を学長シリウス・ハインベルグが正式に認可します。」


「Aクラス、ですか!?やった!」


「うむ。それでこそ僕の旦那にふさわしい」


なんかキグナスが自慢げに頷いてるけど……まぁ無視しよう


「ですが、あまりに前例のない急なランクアップのため手続きやプヨちゃんの調査を行わないといけません、あなたもボロボロですしね。なのでAクラスには来週から登校してください」


「あ……はい」



キグナスにボコボコにされたダメージは意外と大きく医務室の先生には数日安静にしろと言われてる。ちらりと目をやればキグナスはやり過ぎたと反省してるのか顔を真っ赤にして縮こまっている、頼むからそのまま大人しくしててください




とりあえず、全てうまくいったようなので俺は安心して一晩医務室に泊まり翌日プヨと一緒に寮の自室へと戻った。

プヨを草かごのクッションに座らせて自分もベットの縁にドカリと腰を降ろすとようやく全て上手くいった実感が沸いてきた。


「あー……大変だったけど、なんとかFクラスから卒業できたなぁ。しかもいきなりAクラスだなんて!もう全部プヨのおかげだよ、ありがとな?」


「ぷよ!」



しかし……キグナスとの試合中、間違いなくプヨの声が聞こえたんだよな。

煉獄拳の方を使え、って。言葉を喋るスライムなんているのかな?追い詰められてそう聞こえただけなのか……ピンチに主人公としての力が目覚めたとか?うーん……物語の主人公じゃあるまいしそんなわけないか。またプヨの謎がひとつ増えた



コンコン


ん?誰かが俺の部屋の扉をノックしてる。客が来るような用事はないはずだけど……俺、Fクラスでも浮いてたから友達とかいないし。

あ、自分で言って悲しくなってきた。


とりあえず、客を待たせるのも悪いので俺は急いで扉を開けた。



「あの…………体はもう大丈夫?」


「えっ、あっ、はい……はい?」


扉を開けた先には、見たこともない可憐な少女がモジモジと頬を赤く染めて俺をちらちらと見ていた。

真っ白なワンピースが映える美しい肌に華奢な体つきは思わず守ってあげたいような気にさせられる非常に可愛らしい女の子だった。


突然現れた美人につい見とれてポカンとしてしまったが…………誰?



「えっと……」


「さっき病院に行ったらもう退院したって聞いて大丈夫か心配だったから来ちゃったんだけど、来るの早かったかな?忙しいなら出直すよ?」


「えっ……と……」


「……」


「…………」



俺と少女の間に気まずい無言が流れる。俺の知り合いにこんな美人さんはいないはずだが…最初は何事かと不思議そうにしてた少女が何かに思い至ったのか拳を握り締めてワナワナと震えている。え?怒ってるんですか?な、なんで?


「……もしかして、僕が誰だか分かってない?」


「ぼく?え……まさか!キグナスか!?」



段々不満げな顔になってきた可憐な少女が『ぼく』と言うから一気に理解した。

そうだよ、よくみたらこの子キグナスじゃん!嘘だろおい普段のボーイッシュな雰囲気が全然ないから全く気が付かなかった。


「き、君ってやつは……」


「待て待て!だっていつもと違いすぎるだろ!いつもと違ってワンピースに化粧してるんだもん、可愛すぎて誰だかわかんねーよ!」


「ふぇ!?か、かわいい……?」


「俺の知り合いにこんな美人いねーから分からなかったんだ!だから殴らないでくれ!頼む!」


「なっ、殴らないよ!」



殴らないと言いつつすでに拳を振り上げて後は降り下すだけの所まで来てますよキグナスさん……プヨの身体能力強化なしで殴られたら命に関わる。

俺は必死でキグナスをなだめた。いつまでも玄関で騒ぐわけにもいかないし、俺はようやく落ち着いたキグナスを招き入れた。



「と、とりあえず、どうぞ……」


「ありがとう…」



俺はキグナスを部屋に上げて来客用のカップに紅茶を入れて出した。

考えてみれば、俺にとって始めての来客だ。クラスから浮いてたからなぁ…やべっ、虚しくなってきた。


「で、何しに来たんだ?」


「あの……ケガさせたのは僕だから、お詫びの意味でも込めて看病しようかと……それくらいの責任はあるだろ?」



え?うーん……看病か。ケガしたとは言え身動き取れないわけでもないし、そんなに気を使わすのも悪いような……というかまた変な事を言ってキグナスにぶっ飛ばされたら次は命に関わるような気がするんですけど。

俺がどうやって断ろうか悩んでるのを感じたのかキグナスは慌てて言葉を続けた。


「な、なんでも言ってくれ!君の為ならなんでもするぞ!僕はもう……君のものなんだからな?」



どきっ


か、かわいい……普段と違って女の子らしい格好してるからそんなセリフ言われたら思わずときめいてしまう。

だけどコイツ俺より全然ステータス高いから油断したら即やられる。い、一体どうすれば……



「……マリアから、君は清楚系が好みだからこういう格好の女に弱いとアドバイスを貰ってな。着慣れないけど、君の好みならと思って着てみたんだけど……どうかな?」


「あー……うん、かわいいです。」


「ほんとうかっ!?」


あーまってまって、近寄らないで!俺には刺激が強すぎる!くそっ、マリアの野郎なんで俺の好みのタイプを完璧に知ってやがるんだ。

余計なことしやがって、これじゃ強く突き放せないじゃないか。


「結婚したくなったか!?」


「いやそれは早すぎる」


もーなんなのコイツ、結婚願望強すぎるだろ……一気にドキドキが落ち着いたわ。

気持ちが萎えた今なら言える!ここはハッキリとキグナスと距離を取っておかないとマジで結婚する事になりかねない凄みをキグナスから感じる。


「と、とにかくケガって言っても動けないわけじゃないし看病とかは必要ないって。数日ゆっくりしてりゃ良くなるし」


「そ、そうか…………。余計なお世話だったみたいだな…」


そんな露骨にションボリするなよ、俺が悪いみたいじゃないか。


はっ!プヨがなんか俺を軽蔑するような目線で見てる気がする…男としてそれってどうなの?とプヨの目が訴えている気がしてならない!プヨに目ないけど


「あー…………えっと、じゃあさ。せっかくだしどこか遊びにでも行かないか?数日後まで暇だし、息抜きに付き合ってくれると嬉しいんだけど……」


「うん!」



そ、そんな嬉しそうな笑顔で……かわいい、かわいいけどコイツ危ないんだよ色々と。

という訳で、可愛らしいキグナスの魅力に抗いきれずに俺はキグナスと街へと遊びにでる事にした。「ジェイクってチョロいでしょ?」とドヤ顔してるマリアが脳内に浮かんだ。

悔しいが否定は出来ない。もちろんプヨも一緒だ。



「ほらジェイク、あそこでもう夏祭りの準備をしてるよ?王都の夏祭りはすごく盛大にやるんだ」


「へぇ……噂には聞いてたけど、かなり念入りに準備するんだな」


「ああ。元々は王族が1年の無事を祈る恒例式典だったんだけど、民間にも広まって今のお祭りのような形になったらしいよ。」


ほうほう、王都の生まれのキグナスはこの街の事について詳しいらしく色々な事を教えてくれた。俺は数ヵ月前にカカリコ村から出てきたばかりだから知らない事ばかりだ。街の広場では、夏祭りに使う大きなやぐらのような物が組み立てられている。

それにしても……さっきから行き交う人みんながキグナスの事をチラチラ見てる気がする。まぁすんごい可愛いもんな。



「なぁジェイク」


「ん?」


「こ、この先のカフェで少し休憩しないか!?歩いて疲れただろう!」


「お……おう、いいけど」


なんか急にギクシャクし出したキグナスについていって俺達はお洒落なカフェへと入った。

俺ひとりだったら気まずくてとても入る勇気はないな……店内は、なんか妙にカップルが多い気がする。

げっ……一杯のカフェに2つストローさして二人で飲んでる!あれは見てる方が恥ずかし過ぎるな……よくやるよ。んん?ていうか、よく見たら店内のカップルみんなあれ頼んでないか?まさか……



「ラ、ラブラブハートカフェひとつくだしゃい!」


えっ、キグナスが俺の注文も聞かずに大声でなんかすごいのを注文した。まさか……


「こ、ここはラブラブハートカフェというカップル向けのカフェが人気らしくてな!いやー、気になって気になってつい頼んでしまったよ!一人じゃ飲みきれないからジェイクも手伝ってくれたまえ!よいな!?」


ええ……めっちゃテンパってるよキグナスさん……普段あんなに冷静なのにどうした?よいなってアンタ王族か…まさかこれもマリアが余計なことを吹き込んだんじゃないだろうな?

普段のキグナスからは想像できないくらいに顔を真っ赤にしてもじもじしてる。



「お待たせしました~」


店員さんの持ってきたのは、間違いなく周りのカップルがいちゃいちゃと楽しんでる一杯にストロー2本つけて飲むやつだった!こ、これは……ストローが少し短くて飲むためには必然的に二人の顔を近付かなければならない!なんて計算されたコーヒーなんだ!



「ささささ、さぁ飲もうジェイク!」


「え、あ、うん……」


あわわ……俺とキグナスの顔が近付いていく。うっすらとキグナスのくちびるに塗られた桃色の口紅がやたら艶かしくて、緊張してきた……プヨ、お前なんかニヤニヤしてないか……?



「やっぱムリ!!」


「ごぶはぁー!!」


キグナスも恥ずかしさが極限に達したのか突然、拳を振り上げて全力でぶん殴られてしまった。

あんなにキグナスの一撃に警戒してたと言うのに、俺はつい油断してしまった。今回は俺の負けだぜキグナス…店の窓をあっさり突き破り俺は何mも吹き飛ばされながらそんな事を思った。



マリア……これお前がキグナスに余計なこと吹き込んだせいだったら絶対に許さなねぇからなちくしょう……ガクッ

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