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気持ちよさそうに寝ているミチルの横で私は本を読む。


何の本かと言うと、料理本だ。


ミチルは偏食家で野菜は死んでも食べない。


好きな食べ物は甘いもの。嫌いな食べ物は苦いもの(主に野菜全般)特にピーマンを食べさせるのは一苦労で、ピーマンを食べさせるなら全力投球で挑まなければイケナイ程だ。


肉は気が向いた時、魚は目が付いてない刺身ならば二、三キレ。


まるで子供の様なミチル。甘い物を食べてる時はあんなに幸せそうな顔するのに、苦いものを食べた時のあの表情。この世の終わりの様な顔するから私としても非常にヤリずらい。



最近では食べさせ様とするのを事前に察知する始末。何処かにそのアンテナでも付いてるのかも知れない。ミチルの一日の食事は主にスイーツで成り立ってる。そんなの非常に許し難い事なのだ。


ケーキ屋の娘からしたら、お菓子をこよなく愛するミチルは非常に有難いものの、彼女の立場としては心配なのだった。


朝昼晩、スイーツと言うのを聞いた時は驚き過ぎて何も言えなかった程だ。


だから少しでも身体に良いモノを食べさせたくて、最近ではお菓子を作る片手間空いた時に料理をする。まだまだ毛が生えた程度の能力で申し訳ないけれど、一人暮らしのミチルの栄養バランスは最悪で心配症を発症する度に食べさせる私だった。


ナオ曰く「嫁通り越して.....オカンみたい」だそうだ。


まぁ.....そう言われればと思う。


野菜嫌いのミチルには内緒だが、野菜入りスイーツを検討中だ


その試作品が既にスタンバイなのも内緒だ


チーズケーキでおびき寄せ....では無くて、チーズケーキと一緒に出して、それとなーく食べさせる寸法だ。


感の良いミチルの思考をチーズケーキで鈍らせ....騙し....では無く、純粋にミチルが心配だから私はこうして試行錯誤を繰り広げ使うのだった。


余り苦味の無い人参から始める手筈だ。匂いにも味にも敏感なミチルが気付かない事を願う。


こうしている間にモゾモゾと寝返り打つミチル


起きたのかな?と振り返るとヌッと布団の間から手が伸びて来て、あっと言う間に引き込まれる私



「ミチルっ、起きたのっ?って、ちょ!まっ!」


ミチルの掌が私の臍を中心にサワサワと撫でていく。その手が腰に回り、後ろからガッチリホールドされる様に抱き寄せてくる。その手が怪しい動きをするのに時間は掛からなくて、肋へ辿り着き下から持ち上げる様に胸へと到着する


頭にミチルの鼻先が触れスンスンと匂いを嗅がれ、お前は犬か!と言いたくなる。


階下には両親が居るのだから、迂闊な事は出来ないと声を張り上げる私


「ま、待って待って!ミチルの大好きなチーズケーキ有るよ?試作のお菓子も作ったから起きようか」


チーズケーキの言葉にピタリ止まるミチルの指先。何やら考えてるのか暫く動かない指先は私の胸を押し上げたまま微動だにしない。私は開放されるのを唯ひたすら待つ。しかしミチルの指先は再び動き出すのだった。


「陽菜子、美味しそうな匂いするからちょっとだけ....」


そう言いながらサワサワと轟くミチルの指先。掠れた小さなミチルの囁きにドクドクと胸が鳴るも、良い匂いなのと触るのは関係なくないか?と抗議の声を上げる


ーーーー



結局、散々身体を触られ、匂いを犬の様に嗅がれ、満足したのか漸く開放された私。



ヨロヨロと起き上がり、キッチンへ向かう私


我儘な無気力ボーイの為にチーズケーキを取りに行くのだ。


しかし、後ろからチョコチョコ付いてくるのはどう言った事だろうか?

大好きなチーズケーキに一秒でも早く会いたいのだろうか?


無言で背後に立たれた時の圧迫感を皆様はご存知だろうか?


イヤ、無言じゃ無くても大きな身体がピッタリ真後ろに張り付いてるのだ。動きづらい事この上ない



冷蔵庫を開けると真後ろから覗き込むミチル


トレーにミチルの大好きなチーズケーキとキャロットケーキをそれと無く乗せる。


試行錯誤して完成した人参ケーキ。


ミチルも人参ケーキに気付いたのか後ろからジーーーーーと視線を感じる



見てる見てると思いながら普通にトレーを運ぶ


その間も注がれるミチルの眼差し


大好きなチーズケーキと人参ケーキの間を行ったり来たりしてる事からチーズケーキが早く食べたいけど、得体の知れない人参ケーキが気になるのだろう


牛乳と一緒にテーブルへ置くとイソイソとやって来るミチルさん


そして先に手を伸ばすのは、やっぱりチーズケーキだった



此処で邪魔してはイケナイ事を私はよーく知ってる。


ミチルが食べ終わるのをニコニコと見守るのだ。焦って人参ケーキを食べさせ様としては駄目なのだ。


ユックリ、ユックリ丁寧に食べて行くミチルさん。幸せそうなその表情をニッコリ笑いながら気長に待った....お皿まで舐めそうな雰囲気を醸し出すのを耐えるのだ。


食べ終わり、ホォと息を吐き出すミチルへ、すかさず問い掛けるのだ


「美味しかった?」と


するとミチルはキラキラとした眼差しでコックリ頷く


もっと食べたいのを我慢してるのを私は良く知ってる。


チーズケーキは一つまでだと決めてるのだ。


お菓子の食べ過ぎは良くないと言えば渋々とだけど納得してくれたのだ


今日は父のケーキも食べたのだ。本来ならこれで終わりだった


だが、今日は人参ケーキを食べさせると言う使命が有るのだ


私は使命を実行するべく、恥ずかしそうな表情を作る(ココ重要)


「あのね、ちょっと失敗しちゃったかもだけど、新しいケーキをミチルに一番に食べて欲しくて作ったんだ(一番にと言うのも要重要。)」


だから食べてくれるよね?と笑えば頷くミチルに、ヨッシャーと心の中でガッツポーズを作る。



予め失敗した事を伝えて有るのをご存知だろうか?コレはあえて失敗したのを伝えたのだ


「何回も失敗しちゃったから今度こそ美味しかったら良いな」と、ボソリ呟くのがポイントだ。


こう言って置けば多少の味の誤魔化しやらが........効きそうな気がするのは私だけだろうか?


一瞬考える素振りを見せるミチルさん


ドクドク鳴る胸を誤魔化す様に不安気な表情を作る(気分は大女優だ!)


ユックリとミチルの指が人参ケーキに伸び、お皿を持ち上げると、何を思ったのかスンと一匂い嗅ぎ出す


バレたのか!?とヒヤヒヤする私にミチルは言う


「....コレ、何ケーキ?」とーーーー。



「え?えっと.....あ、当ててみて?」


我ながら何て名案だと、褒めてやりたいのを押し込め、ミチルへフォークを渡す。


砂糖を使わず作る人参ケーキには苦労を掛けられた。だが、これで漸く報われるとフォークを受け取るミチルに感動すら覚える。


ジーーーーーッと人参ケーキを睨む様に見つめるミチル(本当は無表情だが、私はそう見えた)


ミチルはフォークを持ったまま再び人参ケーキの匂いを嗅ぐ


「不思議な匂い.....でも嗅いだ事有る」


ミチルの嗅覚の凄まじさに一瞬身震いした私だった。


頭を傾けながらボソリ呟いた切り、ミチルは中々食べようとしない。何か動物的感でも働いてるのか、何度も何度も匂いを嗅がれ、その度に私の心はソワソワし出す


ああーも、良いから口に入れろよと言いたくなるのを我慢する私だった。



結局ーーーーーーーーミチルはーーーーーー。







「.......やめとこうかな」



フォークとお皿を置いた。



後一歩の所まで行ったのにーと諦めきれず、唸る私だった。



綿密に計画した私の努力が.....人参ケーキがー


唸る私の横でミチルがボソリ呟いた



「陽菜子の様子....変.....食べない方が良い気がする」


私かぁ!私がいけなかった私の馬鹿!と、項垂れたが、諦めきれない私はクククと喉で笑う


俯き小さな笑い声を上げるおかしな(お菓子だけにおかしな?)私を無気力ボーイは無表情で見つめる


そこで私は直球勝負を掛ける事にした。


「コレ食べて」


そして、誤魔化さない事に決めたのだ。だから、ミチルの「何ケーキか言って?」の問いにも正直に答える。


「キャロットケーキ」


敢えて人参だと言わなかったのは気休めだ。英語にした所で何も変わらないが、最後の抵抗だと思ってくれれば良い


やっぱりと顔に書いてあるミチルさん。俺の感は当たると思ってるのかも知れない。


何か言いたそうなミチルだが私は無視する


無気力ボーイは面倒くさがりで、何も言わないのをいい事に「食べて?」とお皿を差し出す。(笑顔付き)



人参ケーキからスススーイと視線を外して行くミチルさん


「食べて?」


視線をお皿に決してやろうとしないミチルとの攻防は長い長い時間がかかった。


この後どうなったかは後程分かるかも知れない。今はご想像にお任せします。


「食べて?」


「.....」



あなただったら、この無気力ボーイにどう食べさせる?私の方が知りたい!

18禁版をムーンの方で乗せてます。大人な方で見てもイイかもと思う方どうぞ見てみて下さい。18歳以下は大人になって見て下さい。内容は変わらず、エロいシーンを追加する位です。先にコチラの方から更新する予定ですのでムーンの方は少し遅くなります。

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