別世界が嫌いなとある戦士の話
ここにはない『何か』を求める。求めるために刺激的な別世界を望む。いつでもどこでも人間なんてのはそんなものさ。でも何を?君は何を求めているかもわからないのか。わかりもしないのに別世界を望むのは、ただの逃避だよ。囚われのお姫様のつもりかい?この世界に嫌気が差しただけだ。求めて、求めて、求めて、どこまでいっても求道者のまま。『何か』はいつだってここにあるのに。結局、君は自分が大嫌いな世界にそれを見出だしたくないだけなんだ。その日常、暮らし、平和、君にとってそれはつまらないものなんだろう。でもね。いつの時代も、どこの世界も、どんな人々にも、それが一番尊ばれるものなんだよ。君が望む刺激的でスリリングな世界がこの世にはある。でも、もしそこに放り込まれて、百年後もその世界を楽しむことができるだろうか。楽しんで──笑うことができるだろうか。笑って──愛することができるだろうか。私には、できない。愛する隣人を殺す世界を……誰が望み、誰が許し、誰が愛するものか。変えるんだ。私は変えてみせる。君が求める『別世界』をこの世から一片残らず消し去ってやる。だから、君の望みは一生叶うことはない。勘弁してくれたまえ。私は楽しい『別世界』が大嫌いで、退屈な『この世界』が大好きなんだ
短く拙い話でした。
異世界トリップものを作者はよく読みますが、その一方で頭の中でそれを勧告する声もあります。こんなにも異世界トリップものが多いのは、人間にはここではない別世界に憧れる気持ちがあるからでしょう。作者の頭に響く勧告をとある戦士の口を借りて、綴ってみました。