↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達以上、恋人未満  作者: 君に夢中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/1

電話

電話を切った。

 画面には、さっきまで話していた君の名前が残っている。

 四時間。

 たった四時間と言うべきなのか、それとも、四時間も話せたと言うべきなのか。

 僕には、まだわからない。

 君が眠そうに笑ったこと。

 何気ない話で一緒に笑ったこと。

 どうでもいいような話なのに、いつまでも聞いていたかったこと。

 全部、嬉しかった。

 だからだろうか。

 電話が終わった途端、部屋がひどく静かになった。

「……寂しいな」

 誰もいない部屋で呟いた。

 さっきまで、あんなに近くに感じていたのに。

 スマートフォンを見つめる。

 もう一度、電話をかけたら迷惑だろうか。

 そんなことを考えて、やめた。

 君にも君の生活がある。

 君にも君の時間がある。

 僕だけのものじゃない。

 そんなことは、わかっている。

 わかっているのに。

 もう少しだけ話したかった。

 もう少しだけ、君の声を聞いていたかった。

 君にとっては、何気ない四時間だったのかもしれない。

 でも、僕にとっては違った。

 君と話せる時間が、今の僕にとって、何よりも幸せだったから。

 だからこそ、怖い。

 この時間が、いつかなくなってしまうことが。

 君が僕と話すことに飽きてしまうことが。

 いつか、別の誰かの隣で笑うようになることが。

 考えたくないのに、考えてしまう。

 僕は、君の何なのだろう。

 友達?

 それとも、ただ話しやすい人?

 以前、君は言った。

『お兄ちゃんみたい』

 嫌じゃなかった。

 君が僕に安心してくれていることが、嬉しかった。

 僕と話すとき、無理をしなくていいと思ってくれていることが、嬉しかった。

 でも。

 ほんの少しだけ、思ってしまった。

 いつか、その安心感が恋に変わることはないのだろうか。

 君が僕のことを、ただの話しやすい人ではなく、一人の男の子として見てくれる日は来るのだろうか。

 そんな期待をする自分が、嫌になる。

 君は、正直に話してくれた。

 今は自分の気持ちがわからないこと。

 僕の気持ちに応えられると約束できないこと。

 変な期待をさせたくないこと。

 その言葉は、優しかった。

 僕を傷つけないように、考えてくれた言葉だった。

 だから、責めたくなんてない。

 君が悪いわけじゃない。

 僕が君を好きになったからといって、君も同じ気持ちにならなければいけない理由なんてないのだから。

 それでも。

 好きになってほしいと思ってしまう。

 僕を選んでほしいと思ってしまう。

 君が誰かに恋をするなら、その相手が僕だったらいいのにと思ってしまう。

 こんな気持ち、君には言えない。

 言ってしまえば、今の関係が変わってしまうかもしれないから。

 君が安心して話せる場所でいたい。

 君がつらいとき、頼れる人でいたい。

 君が笑ってくれるなら、それだけでいい。

 ……なんて。

 本当は、そんなに綺麗な気持ちだけじゃない。

 僕だって寂しい。

 僕だって、誰かに愛されたい。

 君にとっての特別になりたい。

 誰よりも近くで、君の笑顔を見ていたい。

 君が僕に向けてくれる優しさを、いつか恋と呼べる日が来たらいいのに。

 スマートフォンの画面が暗くなった。

 そこに映った自分の顔は、少しだけ情けなかった。

「……好きなんだよな」

 口にした途端、胸が苦しくなった。

 好きだ。

 どうしようもないくらい。

 だから、困っている。

 どうすれば君のそばにいられるのか。

 どこまで近づいていいのか。

 どこから先は、君を困らせてしまうのか。

 答えなんて、どこにもない。

 ただ一つ、わかっていることがある。

 明日もきっと、君からの通知を待ってしまう。

 君が元気にしているか、気になってしまう。

 ちゃんとご飯を食べているだろうか。

 今日も笑えているだろうか。

 そんなことばかり考えてしまう。

 そして、また君と話せたら、きっと嬉しくなる。

 たとえ電話が終わったあと、今日と同じように寂しくなったとしても。

 それでも僕は。

 君の声を聞きたいと思ってしまうのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。