表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アークライト廃墟ダンジョン再興記――追放管理士と精霊少女のゼロから始める逆転経営譚――  作者: 盆ちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/60

第17話:影の執行者の潜行と迫る禁忌の足音

第17話:影の執行者の潜行と迫る禁忌の足音

アークライト廃墟ダンジョンの第三階層に開設された商業区画は、商人エリカの参入と活発な物資の流通によって、もはや単なるダンジョン内の交易スペースの枠を遥かに超え、一つの完全に自立した活気ある巨大経済都市としての様相を呈し始めていた。

フロアの中央に鎮座する青白い魔力精製炉から放たれる清浄な空気は、訪れるすべての冒険者たちの疲労を心地よく拭い去り、精緻な幾何学模様が刻まれた美しい床面の上では、ガランやレイナをはじめとする歴戦の者たちが、エリカ商会の窓口で獲得した素材を適正価格で次々と換金し、新たな装備や補給物資を調達する姿が絶え間なく見られていた。

「おい、エリカのところの商会が新しく仕入れた特製の防具、あれは本当にいい代物だぜ。王都で買うと法外な税金が上乗せされるが、ここでは正当な適正価格ですぐに手に入るから本当に助かるよ」

「ああ。しかも、俺たちがここで稼いだ魔獣の素材をその場で高価買い取りしてもらえるから、わざわざ外の街まで遠出する手間も一切ねぇ。まさに理想の循環市場だな」

その様子を、数階層上のコア・ルームから巨大な魔力モニタリングディスプレイを通じて見つめていた精霊の少女ミラは、嬉しそうに目を細めて両手を軽く叩いた。

「マスター、見てください! エリカさんが加わってから、ダンジョン全体の流通量が爆発的に増えています。冒険者さんたちだけでなく、外部の商人たちも安心してこの商業区画を利用してくれるようになって、本当に一つの立派な街みたいになってきました……!」

ミラの銀糸の髪が、好調な魔力の循環を受けてきらきらと心地よく揺れる。彼女の存在感は日々増していき、もはやこの迷宮の心臓部を支えるにふさわしい圧倒的な気品と美しさを備えていた。

コア・ルームの隅で静かに腕を組んでいたレオン・アークライトは、ディスプレイに映し出された数値の推移を確認しながら、穏やかに、しかし鋭い眼差しでうなずいた。

「順調すぎるほどの成果だな。俺たちが目指していたのは、単に魔物を倒して資源を回収するだけの殺伐とした迷宮ではない。搾取の構造から完全に解放され、生産者も、探索者も、そして商人も、すべての者が正当な対価と誇りを持って共存できる自立型経済圏の確立だ。エリカの参入はそのピースを完璧に埋めてくれた」

レオンの冷徹かつ合理的な経営手腕と、ミラをはじめとするダンジョン側の温かなサポート、そしてガランやレイナ、さらには商人エリカといった信頼できる仲間たちの結束によって、このアークライト廃墟ダンジョンは、もはや「辺境の忘れ去られた廃墟」などという嘲笑の対象では絶対にあり得ないほどの、大陸全土を揺るがす巨大な経済拠点へと成長を遂げていた。

しかし、レオンのその胸の裏には、決して油断の色はなかった。

「だが、ミラ。これほどまでに外部との交易が活発化し、我がダンジョンの名が大陸中に轟くようになれば、王都の迷宮管理ギルド総本部の最高幹部たち――バルトロや、その影の執行者であるガーロッドといった連中が、この状況を黙って見過ごしているはずがない」

レオンの低い呟きに、ミラの表情からふっと笑顔が消え、緊張の影が走る。

「マスター……中央の連中が、いよいよもっと恐ろしい手段で潰しにかかってくるということ……?」

「ああ。これまでのように、小間使いの特務管理官を送り込んだり、形だけの監査官を寄こしたりするような生ぬるい手口ではない。奴らが次に仕掛けてくるとすれば、王都の全軍を巻き込んだ商業封鎖、あるいは……このダンジョンが拠って立つ根幹の魔力脈そのものを断ち切るための、国家規模の破壊工作の可能性が高い」

レオンの瞳の奥に、かつてすべてを奪われた審問の日の記憶と重なる、冷徹で、しかし燃え盛るような闘志の炎が宿った。

「どんな手を使ってきても、絶対に負けないわ。私たちが守ってきたこの場所は、もう誰にも壊させないんだから!」

ミラが小さな拳をぎゅっと握りしめて決意をあらわにすると、レオンは優しく彼女の頭にそっと手を置き、力強くうなずいた。

「当然だ。来るなら来るがいい。この城塞のすべての構造、すべての魔力回路、そしてここに集う者たちの意志は、すでに俺の〈再構築〉と完全に同期している。奴らがどのような悪意を持って挑んでこようとも、すべてを叩き潰して逆転の礎にしてやるさ」

その頃、アークライト廃墟ダンジョンのはるか外縁、荒涼とした荒野の地中深く。

漆黒の特製潜行服を身に纏い、一切の魔力波長を消去した影の執行者ガーロッドは、地面を深く穿ちながらダンジョンの地下へと静かに、しかし着実に接近していた。

彼の右手には、闇の中で不気味な脈動を繰り返す禍々しい黒色の結晶体――王都の最奥に長年隠されていた古代文明の遺産にして、あらゆる迷宮のコアを強制暴走させ、周囲の地形ごと一切を消し去る禁断の魔導兵器、〈崩界の魔核カタストロフィ・コア〉が握られていた。

ガーロッドの表情には、感情の色は一切なく、ただ任務を遂行する機械的な冷徹さだけが張り付いていた。

「レオン・アークライト……。小規模な特務管理官や潜行工作官がどのような手管で敗北したところで、我がマスターであるバルトロ様が下したこの最終的な決断の前には、いかなる防衛網も無意味な戯言に過ぎない」

ガーロッドはダンジョンの基礎構造を支える最も深部、魔力循環炉の真下に位置する岩盤の隙間に到達すると、その手にした〈崩界の魔核〉を慎重に、しかし容赦なく固定用の魔法陣の中心へと嵌め込んだ。

「この魔核が起動すれば、数時間の遅延ののちに膨大な魔力の逆流と強制暴走が発生し、この辺境の廃墟ダンジョンの一切は、商業区画の賑わいも、集う者たちの歓声も、すべて跡形もないクレーターと化す。我がギルドの絶対的な支配に逆らう者たちの末路がどうなるか、その身をもって知るがいい」

ガーロッドは起動の呪文を静かに唱え、その場から音もなく姿を消した。彼の侵入の気配は極限まで隠されていたが、しかし――。

ダンジョンの最深部、コア・ルームの巨大な魔力モニタリングディスプレイの中央。

突如として、ダンジョンの最下層の根幹部分に、これまで経験したことのない異常なまでに高密度で、かつ破壊的な魔力の波長がポッと赤く点滅した。

「……っ! マスター、これは……!」

ミラの驚愕の叫び声に、レオンの双眸が鋭く見開かれた。

モニタリング画面に映し出されたその禍々しい魔力の正体をひと目で察知した瞬間、レオンの右腕に、かつてないほどの激しい黄金の光が奔った。

「外部からの侵入でも、内部からの汚染でもない……ダンジョンの根幹そのものを強制的に暴走させるための、古代の魔導兵器――〈崩界の魔核〉か!」

レオンの声音には、これまで見せたことのないほどの冷徹な怒りと、一瞬の隙も許さない極限の緊張感が宿っていた。王都の腐敗した権力者たちは、自分たちの敗北を認める代わりに、このダンジョンごとすべてを消し去るという、あまりにも狂気に満ちた最終手段に踏み切ったのだ。

「そんな……! このダンジョンには、たくさんの人たちの夢や、みんなの生活が詰まっているのに……それを一瞬で消し去るなんて、そんなの許されないわ!」

ミラは青ざめた顔でレオンを見つめたが、すぐにその瞳に強い決意の光を灯した。

「マスター、どうすればいいの? 私たちのこの城塞を、みんなの居場所を絶対に守るために、私にできることを教えて!」

レオンは深く息を吸い込み、その冷徹な双眸をしっかりと前方に据えた。

「慌てるな、ミラ。奴らがどれほど巨大で破壊的な禁忌の兵器を持ち込もうとも、このダンジョンのすべての石畳、すべての魔力回路、そしてすべての空間の構造は、すでに俺の〈再構築〉の完全な支配下にある。魔核が暴走を始める前に、その核心構造そのものを完全に解析し、無害な魔力へと逆変換して吸収する……!」

レオンの右腕から放たれた全開の魔力が、コア・ルームからダンジョンのすべての回廊を一気に駆け抜け、地下深くに仕掛けられた崩界の魔核の真下へと直撃する。

すべての命運をかけた、天才管理士と禁忌の魔導兵器との間の最終にして最大の攻防戦が、いま、静かに、しかし凄まじい轟音と共に幕を開けようとしていたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ