番外編「あなたにも見えていますか」
先輩は、その日を境に来なくなった。
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最初は、寝坊かと思った。
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連絡も来ないし、
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電話にも出ない。
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「……珍しいな」
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それくらいの認識だった。
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でも、
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次の日も来なかった。
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その次の日も。
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「……」
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さすがにおかしいと思った。
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「……体調でも崩したのか」
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そう思って、
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スマホを取り出す。
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履歴。
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昨日のやり取り。
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最後に話したのは、
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あの動画のとき。
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「……」
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嫌な感じがする。
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「……」
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思い出す。
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あの時の先輩の顔。
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「……」
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笑っていた。
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ずっと。
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「……」
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おかしい。
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「……」
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あの時、
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自分は、
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何を見ていた?
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「……」
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動画。
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あのアカウント。
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「……」
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アプリを開く。
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履歴。
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残っている。
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「……」
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例のアカウント。
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まだある。
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「……」
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動画を開く。
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再生。
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「……」
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部屋。
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「……」
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違う。
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「……」
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何もない。
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ただの、
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部屋の映像。
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「……?」
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机。
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椅子。
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パソコン。
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「……」
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でも、
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人はいない。
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「……」
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巻き戻す。
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もう一度再生。
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「……」
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何も変わらない。
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「……」
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「……は?」
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思わず声が出る。
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「……」
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昨日、
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あそこに、
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先輩がいたはずなのに。
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「……」
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画面の奥も、
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ただ暗いだけ。
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何もない。
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「……」
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「……おかしい」
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手が震える。
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「……」
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あの時、
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先輩は何を見ていた?
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「……」
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何も映っていない画面を見て、
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笑っていた?
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「……」
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「……そんなわけ」
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言いかけて、
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止まる。
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「……」
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スマホが震える。
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「……っ」
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通知。
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DM。
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「……」
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見覚えのないアカウント。
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でも、
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名前は、
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見覚えがあった。
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「……」
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あの、
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アカウント。
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「……」
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指が止まる。
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開きたくない。
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でも、
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目が離せない。
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「……」
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タップ。
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メッセージが表示される。
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『あなたにも見えていますか』
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「……」
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喉が鳴る。
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「……」
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画面を見つめる。
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黒い。
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何も映っていない、
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ただの画面。
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「……」
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それでも、
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「……」
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“何かがいる気がする”
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「……」
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ゆっくりと、
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指を伸ばす。
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画面に向かって。
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「……」
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触れた瞬間、
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微かに、
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震えた気がした。




