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好きと言わないための練習会 ――未処理のまま生きる練習

※この作品は、

「好きです」と言わないための練習会の記録です。

会話と沈黙が中心になります。


シャワーを浴びている間、

頭の中はずっと同じところを回っていた。


未処理。


昼間、あの言葉が出た瞬間、

空気が一段、下に沈んだのを覚えている。


後悔ではない。

未練とも違う。

終わっていないだけ。


髪を乾かしながら、

無意識にスマホを手に取っている。


通知はない。

それも、もう確認し慣れた。


トーク画面を開く。

一番下に、下書きも履歴もない空白。


そこに言葉を置かなかった事実だけが、

妙に存在感を持っている。


送らなかった。

消したわけでもない。

ただ、置かなかった。


未処理というのは、

何もしていないようで、

実はずっと何かをしている状態なんだと思う。


考えないようにしても、

思考は勝手に続く。


もし言っていたら。

もし、あの時。

もし、今日じゃなくて。


仮定は、実行よりも体力を使う。


布団に座り込んで、

一度、深く息を吸う。


理屈で整理しようとする癖が出る。


言わなかったのは、

関係を守るため。

自分を守るため。

場を壊さないため。


正しい。

全部、正しい。


だから困る。


正しいまま、

終わらせられない。


未処理の感情は、

生活の隙間に入り込む。


歯を磨いているとき。

信号待ちの数秒。

誰でもない名前を呼ばれた気がしたとき。


そのたびに、

一瞬だけ、胸の奥が反応する。


使われなかった反応。

行き場のないまま、

内側で回り続ける。


「終わらせるには、言うしかない」


そんな結論は、

とっくに出ている。


それでも、

言わないという選択を、

今日も更新している。


布団に横になる。


未処理のまま生きるのは、

想像よりずっと、日常的だ。


誰も気づかない。

問題も起きない。

世界は、何も変わらない。


ただ、自分だけが知っている。


この静けさは、

完成じゃない。


目を閉じる。


今日もまた、

未処理を抱えたまま、

眠る練習をする。


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