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幕間:好きですと言わないための練習会―― 記録


記録者は、今日は書かなかった。


書けなかった、ではない。

書こうともしなかった。


ノートは膝の上にあったが、

開く理由が見つからなかった。


言葉は、場に存在していた。

ただ、形を取らなかった。


いつもなら、

開始時刻。

参加人数。

空調の状態。

誰が遅れたか。


そういうものを、

無意識に拾っていた。


今日は、それが起きない。


拾おうとすると、

音だけが先に来る。


椅子の軋み。

呼吸のズレ。

誰かが立ち上がったときの、重心の移動。


記録に向かないものばかりだ。


境目、という言葉を使ったのは、

自分だった。


使った瞬間、

少し遅れた。


言葉が、

場の速度についていかなかった。


境目は、

記すものではない。


越えたかどうかも、

後からしか分からない。


記録者は、

ノートを閉じる。


閉じたまま、

終わりを待つ。


待っているつもりはない。

ただ、

書かれなかったものが、

確かに残っている。


それだけを、

覚えておく。


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