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幕間:好きと言わないための練習会 ――確認事項は、特にありませんでした

※この作品は、

「好きです」と言わないための練習会の記録です。

会話と沈黙が中心になります。

その日の会は、予定通り始まった。


開始時刻。

出席者。

会場。


どれも、いつもと同じ。


「今日は、特に新しい議題はありません」


彼女はそう言って、ホワイトボードを見なかった。

書く内容がない、というより、

書かなくても進行できると判断したようだった。


「前回までの確認だけします」


誰も異論を挟まない。

確認は、この会で最も安全な作業だ。


「言ってしまった人はいません」

「連絡を取った人もいません」

「関係が壊れた人もいません」


淡々と、報告が続く。


「つまり」

彼女は言う。

「問題は起きていない」


その言葉に、誰も安堵しなかった。

否定もしなかった。


ただ、受け取った。


「では」

彼女は少しだけ間を置く。

「今日、ここに来る途中で――」


言いかけて、止まる。


「……いえ」

首を振る。

「これは共有事項ではありませんね」


誰かが、笑いそうになって、やめた。


「進行を続けます」


それ以降、会は滞りなく進んだ。


確認。

確認。

確認。


予定時間より、少し早く終わる。


「以上です」


解散の合図は、いつもより短かった。


立ち上がる人。

椅子を戻す人。

何もせず、少し遅れて動く人。


誰も、何かが足りないとは言わない。

誰も、何かが余っているとも言わない。


ただ、

会は成立していた。


成立してしまっていた。


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