38/58
好きと言わないための練習会 ――自動(昼)
※この作品は、
「好きです」と言わないための練習会の記録です。
会話と沈黙が中心になります。
「では、始めます」
彼女は言った。
声の高さも、間も、いつも通り。
名簿を開く。
「本日、四名欠席です」
誰も反応しない。
数字が増えたことに、
意味は付与されない。
「議題はありません」
「確認のみです」
ホワイトボードには、
すでに書いてある。
――通常運転
「前回以降」
彼女は淡々と続ける。
「特記事項はありません」
「ありません」
誰かが復唱する。
「発言は任意です」
「沈黙も問題ありません」
説明は、流れる。
質問は、出ない。
「では」
彼女は言う。
「以上です」
誰も驚かない。
解散の速度も、揃っている。
立ち上がるとき、
誰かが小さく言った。
「もう、言うこと決まってますよね」
「そうですね」
彼女は頷く。
「確認事項ですから」
確認は、
何かを確かめるためじゃなく、
形を保つために行われていた。
ホワイトボードの
「通常運転」という文字は、
消されないまま残る。
誰も、気にしなかった。




