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好きと言わないための練習会 ――定例(夜)

※この作品は、

「好きです」と言わないための練習会の記録です。

会話と沈黙が中心になります。


「定例」


その言葉が、

夜になると、妙に硬い。


定例というのは、

変えないための仕組みだ。


変えないことを、

確認するための時間。


帰宅して、

靴を脱ぐ。


今日、何か話しただろうか。

声は出した。

笑いもあった。


でも、

何も運ばれてきていない。


負荷は低め。

確かに、楽だ。


ただ、

楽であることが、

ここまで均一だと、

少し不安になる。


想定内。

特筆なし。

記録密度を上げない。


それは、

起きていないのではなく、

起こさないという選択だ。


定例は、

安心の形をしている。


けれど、

安心が形になった瞬間、

それはもう、

中身を見なくていいものになる。


スマートフォンを伏せる。


言わない。

選ばない。

動かない。


それを続ける理由は、

もう自分の中にはない。


それでも、

続けてしまう。


会があるから。

定例だから。


夜は、

その理由が、

少しだけ空虚に聞こえる。


明日も、

定例は行われる。


問題は起きない。

記録も増えない。


それなのに、

「このままでいい」という文だけが、

どこにも見当たらない。


電気を消す。


楽なはずの夜だった。


ただ、

楽であることに、

慣れ始めている自分が、

一番、気になった。


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