好きと言わないための練習会 ――予定通り(夜)
※この作品は、
「好きです」と言わないための練習会の記録です。
会話と沈黙が中心になります。
「予定通り」
昼に聞いたその言葉が、
夜になっても、耳に残っている。
何が、予定だったのか。
いつ決めた予定なのか。
家に帰って、
いつもの場所に鞄を置く。
順調。
成功。
機能している。
全部、昼の言葉だ。
それを、
夜まで持ち帰る必要はないはずなのに、
なぜか、手放せない。
何も起きていない。
それは、事実だ。
でも、
何も起きないように
整えられている感覚が、
少しずつ分かってきている。
選ばない。
言わない。
動かない。
それを続けることが、
もう偶然じゃない。
「外れたい人は?」
という冗談が、
妙に遅れて効いてくる。
外れる、という選択肢は、
存在していたのか。
考えた瞬間、
少しだけ、息が詰まる。
スマートフォンを手に取る。
連絡はしない。
理由は、ちゃんとある。
ここで言わないことは、
会の中では正解だ。
でも、
会の外では、
正解かどうか、誰も保証しない。
昼は、
それを考えなくて済む。
夜は、
考えなくても、考えてしまう。
予定通り、という言葉は、
安心のための言葉だった。
少なくとも、
昼の間は。
夜になると、
予定通りという状態が、
どこにも用意されていない。
明日も、
会は続く。
問題は起きない。
多分。
でも、
このまま続いた先が、
どこなのかだけは、
誰も予定していない。
それが、
一番はっきりしている事実だった。
電気を消す。
何も起きていない夜だった。
それでも、
予定通り眠れるかどうかは、
まだ分からなかった。
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