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好きと言わないための練習会 ――続いているだけの夜
※この作品は、
「好きです」と言わないための練習会の記録です。
会話と沈黙が中心になります。
帰り道、特別なことは考えなかった。
コンビニに寄って、
いつもと同じものを買い、
いつもと同じ道を歩く。
家に着いて、鍵を開ける。
靴を脱ぐ。
電気をつける。
一連の動作が、滞りなく終わる。
今日は、
何も確認しなくていい日だった。
問題は、起きていない。
欠けたものについて、考える必要もない。
数える必要もない。
それでも、
風呂に入っている間、
湯気の向こうで、
一瞬だけ、椅子のことを思い出す。
すぐに消える。
ベッドに横になる。
スマートフォンを見るでもなく、
ただ天井を見ている。
明日も、
会は続く。
来週も、
同じ時間に集まる。
それだけのことだ。
安心かどうかは、分からない。
危険かどうかも、分からない。
ただ、
続いている。
目を閉じる。
何も起きていない一日が、
静かに終わる。
――それで、十分だと思うことにする。




