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第2話 森での出会い

それから数年の歳月が経った。

ガイウスは今なお森の中を彷徨っていた。

というのもこの森、大陸一広大な面積を有する原生林で、人々の生存圏まで徒歩で行くとなるとその道の険しさも相まって真っ直ぐに進んでも1年以上はかかる距離がある。

どちらに進めばよいのか方角も知らないガイウスが迷ってしまうのも仕方がないことと言えた。


ちなみにこの間分かったこともある。


まず、自分がなぜかエルフ族の少女になってしまっていること。

これが一番重要である。

少女になってしまったのはなんというかあの女神とのやり取りを思い起こすと心当たりがないこともない。割とはやくに受け入れられた。(それでも慣れるまでは数カ月はかかったが・・・)

しかし、エルフとは・・・

ガイウスが居た世界にもエルフは存在した。

しかし、なんというか、あまり良い印象がないのだ。

排他的で独善的、森に住み自然を信仰しているとは云うものの、その実頻繁に森林火災を発生させるなどよく分からない生き物を云う印象が強い。

そんな生物に自分がなってしまうとは。

しかし、どうやらここは自分が居た世界とは異なるらしいことはガイウスも気が付いていた。

あの召喚のことは実はガイウスはまったく覚えていない。

死の間際で既に物質世界には意識が無く、精神世界であの女神と対面していたのだから仕方がない。

ではなぜ気付けたのか。

こんな森が前世には見たことも聞いたことも無かったから、これもまぁ理由の一つにはなるかもしれない。

しかし、それ以上にインパクトのある光景を見てしまったのだ。

そう、この世界の月が明らかに前世のそれとは違っていたのだ。前世では月は色で言えば黄色く、まん丸な形をしていた。よく秋には月を見ながら酒を呑んだものだ。

しかし、この世界の月は、なんというか赤かった。そして形だ。まん丸なのはそうなのだが、その周りに輪っかがあった。

初めて見た時には本当に驚いた。


その時のことを思い出しながら、ガイウスはなおも歩く。

途中、かなりデカいドラゴンに襲われたり、巨大な亀や燃え盛る鳥に襲われたりと大変ではあったが、木の枝を削り木刀を作ってからは余裕だった。

前世のスキルを全部使えたのだ。

しかし、魔法の方はさっぱりだ。確か女神には魔法を極めてみたいと願ったと思ったが・・・

とりあえず、ガイウスはひたすら月を背にして歩くのだ。

そしてようやく、出会う魔物も小型サイズになってきたなというところでガイウスはこの世界にやってきてはじめて人の声を聞いた。


「ぐわぁっ!」


「大丈夫かっ!?お前は逃げろっ!!くそっ!なんでこんなところにこんなやつが・・・」


複数人の声だ。察するにパーティーでも組んでいるのだろうか、人数の気配から軍隊というわけでは無さそうだ。


茂みを掻き分け現場を覗くと4人組の男女パーティーが居た。

一人は魔物の攻撃を受けてしまったようで、脇腹を押さえながら木の下で蹲っている。

そしてその男性を庇うようにしゃがみ込んでいる女性。


魔物の方は、身長2メートルほどのオーガだ。

それに対するは大きな盾と片手剣を装備している獣人族の男性。その横には杖を構えているとんがり帽子に濃紺のローブを羽織った少女。少女とは言っても今のガイウスよりは年上に見える。

なお、ガイウスの見た目はこちらへ来て数年は経ったはずだがやって来た時のままだった。

なんならずっと歩き通しで少しやせ細った分幼く見えるかもしれない。

それはさておき、戦闘が始まった。

もっともすでに味方が一撃食らっている以上、とっくに始まっていたわけではあるが、ガイウスの視界に入ってからでははじめて動きがあった。

オーガが手に持ったこん棒を大盾を構えた男性に振り下ろした。

男性は何とかこらえたが表情はかなり苦しそうだ。

その横で、魔法使いの少女が詠唱に入る。


ん?この世界には略式は無いのか?

略式とは、この場合正式には略式詠唱を指す言葉で、魔法名のみで魔法を発動させる技術である。

というより、詠唱なんぞ戦闘中にやっている暇はない。

それが当たり前だと思ったのだが、少女は長々と詠唱をしている。よほどの大規模魔術を使うつもりなのか。

オーガの攻撃を数発防いでいた男性が遂にこらえきれずに盾ごと吹っ飛ばされる。

そこになんとか少女の詠唱が間にあった。

これほど長い詠唱をしていたのだ。

一発で決めれる大魔法に違いない。

さてどんな魔法が拝めるのか期待に満ちた目で見ていたガイウスであったが、発動された魔法はその期待を見事に裏切るものだった。


火矢ファイアアローっ!!』


少女の甲高い声に乗せられて炎の矢がオーガへ迫る。

その一撃は見事にオーガへ命中し、その巨体をよろけさせたかに見えた。


「やったか・・・?」


吹っ飛ばされた獣人男性がフラグの立ちそうなセリフを放つ。


オーガは倒れる寸前で片足を斜め後ろへ引いて踏ん張り、少女を睨め付ける。


「ひっ・・・」


少女はそれだけでもう戦意喪失してしまった。


これは助けに入った方が良いだろう。

エルフがこの世界でどう思われているのか不安なこともあり、なるべく関わらない方向で行きたかったがそうも言っていられない。


ガイウスは茂みから飛び出すとオーガの首を一瞬で斬り飛ばした。

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