───12月25日──
「───ん」
あまりに明るい日差しを浴びて、瞼を開く。
先程まで眠りにふけっていた自らの瞳孔が一気に覚めてゆくのを身に染みて感じる。
躰を起こすと同時に、躰を伸ばし時計を確認する。
9時40分。
大丈夫だ。
今日は会社は休みなのだ。
会社では、一日中クリスマスパーティが開催されていて、出勤する必要は無い。とはいえパーティは気になるから夜にでも行ってみようかと思う。
軽く自分で朝食を作り、口へと運ぶ。
一般成人男性がつくる、窒素な食事だが、それなりに味は自慢できると思う。
証拠に、味にうるさい翡翠も褒める程だ。
───まぁ、翡翠の方が何倍も料理が上手なのだが。
そうして、自由気ままな時間を過ごす。
いわゆる、朝チルという奴だろうか。
最近は忙しかったから、たまにはいいなと思う。
ーー
現在、10時10分。
そろそろ翡翠の所へ行こうか。
今日は何を隠そうクリスマスなのだ。
正直、時間はあるし、プレゼントを───
「─────」
いや、いい。
直ぐに行こう。
ーー
何も考えず、ただ走った。
別に急ぐ必要なんてないのに。
それだと言うのに。
どうしてか不思議と身体が勝手に動いた。
───あの笑顔を覚えている。
───沢山した会話を今も思い出せる。
───あの部屋の、あの夕日を覚えている。
根拠なんでない。
理由なんて無い。無くたっていい。
無くたっていいから。分かんなくたって、
───それでも構わないから。
早く彼女の元へ行かなければ。
早く彼女と会わなければ。
そうしなければ、何故だか、
どうしてか、
彼女が。
────俺の手の届かない所へ行ってしまいそうだ。
ーー
病院内に足を踏み入れる。
院内はいつも通りで、エントランスで、入院患者やその配偶者などが軽く談笑を交わしている。
一方で、看護師達はそれぞれ忙しそうに業務をこなす。
「あの、すいません。翡翠の……園田翡翠のお見舞いに来ました」
いつもやっている事。
いつもと同じ算段で、受付を済ます。
「あ、苅原さんですね、どうぞ」
顔見知りの看護師は軽く微笑む。
───、と。
「あ、待ってください。これを」
「───?」
呼び止められて、
1枚の紙を渡される。
「あの、これは?」
「それがですね。先程、それもほんの数分前に、翡翠さんが貴方にと」
内容を確認する。
思ったよりも大きな紙。
「───」
即席で用紙したであろうそれは、明らかに大きい。
そう思うよな内容だった。
───瞬間、僕は事態を察した。
刹那、、
「あ、苅原さん!?」
病院の階段を駆け上がった。
ーー
走る、
走る。ただ走る。
躰が、心が。
酸素が欲しいのだと根を上げている。
それでも、止まらなかった。
息を切らして尚、
屋上へと急いだ。
「────────翡翠」