エリス
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始まりの魔女、エリスは、魔女という存在、一族を確立させた人です。まだ一族と言っているのは私たちのエゴですけど、
魔女とは、魔の力を扱う者。今の時代では、魔術を扱える者は皆魔術協会に入り、魔女証を持った者は皆、魔女です。
魔女は女しかなれないわけではありませんが、女の方が、唯一、不可能を可能にできる、想像力というものが長けているので、男はごく少数になります。
さて、今から約二千年前、魔の力の存在そのものが悪でした。魔の力を使用できる者は悪魔に自身の魂を売り、その者は人ならざるものとして落ちてしまったと考えられています。
人々は、皆が悪いと言っているものは悪だと決めつけ、徹底的に遠ざけ、モノの本質を知ろうともしません。
エリスはそんな中、魔の力全般を善いモノとして認識を改めてもらおうとし、世界中旅をして、健康、人間関係、恋愛、家族、仕事など、人々を魔の力でできる範囲で、助けようとしました。
エリスは魔術は使用しませんでした。命を狙われる危険があったのです。
魔女といえば魔術ですが、なんでも生み出せると知った欲深い者達から搾取されるのを防ぐためです。エリスは皆の前で魔術を使ったその日の夜、盗賊に襲われたそうです。それ以降、エリスは人前で魔術を一切使用しなくなりました。
現代では魔の力を扱える者は増えてきて、魔法の方は貴族と魔塔に所属している者は扱えて当然ですが、魔術の方はエリスも使用しなかったので、恐れられて当然です。
市民は生活に余裕がないということもあり魔法に触れられるような機会も、学ぶこともできず、魔の力そのものを排斥しようとするのだと思います。
今もその風潮は残っていますが、魔の力そのものを排斥する傾向はだいぶ薄れているので、エリスには尊敬や憧れ、感謝の意を込めて、始まりの魔女として呼ぶようになりました。
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ダフネはローブの下で苦りきった顔をする。
「ただ、記録ではエリスは亡くなっているのです。厳密にいえば、亡くなっているとみなされる。ですが…」
サベリアも眉を寄せ、ダフネの言葉を聞き返す。
「というと?」
「エリスは三十代後半からの目撃情報が一つもありません。エリスは人間なので、寿命でそのうち死ぬはずなのですが、私の前に現れました。」
サベリアは目を見開いた。
「そういうことか、」
「心中お察しするよ。どういうわけだか魔女の始祖が寿命をなくすために王族に代々呪いをかけていたと。」
ダフネはサベリアの方をちらと見る。
サベリアは何か考え込んでいる様子はなく、じっとこちらを伺っている。
「こちらとしては、呪いを解除するのはほぼ不可能なので、寿命を伸ばす方向に完全にシフトチェンジするしかないのですが、いいですか。」
呪いを解く方法は、本人が直接解呪するか、呪いをかけた本人が死ぬかの二択。流石にエリスを殺すのには技量も魔力も足りない。
サベリアは至極真面目な顔で言った。
「それでいい。ただ、もっと進めていくとまたあの魔女が現れて今度は命を狙ってくるかもしれない。死ぬなよ。」
かっこいいことを言ってくれる。私も死ぬ気も殺される気も毛頭ない。だが、エリスは呪いが解かれるのを嫌がっていたようだし、エリスが来たということは私は解呪するのに近い距離にいるということだ。高い確率で、もう一回やって来るだろう。
ダフネはどこか諦めたような笑みを浮かべて言葉を返す。
「それは保証できそうにないです。ですが、この薬が完成するまでは、なるべくやります。」
サベリアはそういったダフネを見てふっと笑うと、踵を返した。
「また五日後くらいに、生存確認に来るよ。」
ダフネはあっという間に店を出ようとしているサベリアに、大きい声で声をかけた。
「お待ちしてます。」
ダフネは久しぶりに誰かと話ができたので、知らず知らずのうちに笑みを浮かべていた。




