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魔女の娘  作者: 田中 瑞希
第1章
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調薬

 後日、寿命を延ばす薬を作ること以外何もできなくなる二週間のうちに、魔力暴走が起こって薬作りが失敗することは避けたい。そのため、効果と持続力を三倍にした魔力増強剤を作ってみた。


 一瓶分飲んだ後、飲んだ量なだけに丸一日効果が続いていたが、ちょうど丸一日経つ頃には魔力が体内の中で暴れ出していた。

 ただ、ダフネの身体の中で暴れ出した魔力は昨日送られてきた魔力の3分の2ほどで、自分の身体で抱えきれない魔力で魔力暴走が起こっている時、魔力強壮剤を飲むと魔力の器は大きくなっていくというダフネの読みは当たっていたらしい。ダフネはこのままいけば、送られてきた全ての魔力を自分のものにできるのかもしれない。と考えた。


 ダフネは作業場に、近くに新しく作った魔力増強剤を置いておいた。

 エリスが私に接触してきた以上、これを皮切りに次々とよくないことが起こりそうで、寿命を延ばす薬を早く作っておかないと、と焦っている。


 再び、二週間魔力を注ぎ続ける覚悟をする為に「やるぞ。」と呟いてみた。

 すると、またドアベルが一回鳴り、ダフネのそばにフランツからの手紙が現れた。

 しかし、ダフネはこの覚悟を失いたくはなかったので、これから二週間無視をしておくことにする。


 鍋に水を入れて、火にかけながらずっと魔力を注ぐ。そうして3時間ごとに一つずつ材料を入れていくだけのシンプルなものだが、二週間かけて鍋いっぱいの量の魔力にするために少しずつ魔力をかけるのはなかなか心が折れる工程だとしみじみ思った。

 初めて9時間、昼頃から初めて外が暗くなり寒くなってきた頃、魔法を長時間使い続けるのは何年か前にやった魔法実験以来だったので、どんどん眠くなってくる。

 ダフネは、眠気覚ましも必要だったか。と片手で熱々のコーヒーを出して一気飲みした。


(こんな杜撰なことはしたくないという私の美学に反するけど、こればっかりは仕方ない。超眠い)


 そして、もうしばらく睡魔と格闘していた時、ダフネの体の中で魔力暴走が起こった。


 ダフネの身体の中で、得体の知れない生き物が全身を自由に蠢いているような感覚だった。


(これで2回目)


 ダフネは本格的に暴走が始まるのを待ってみた。


(送られてきた魔力は私のほぼ2倍の魔力量だったけど、今暴走してる分は私の元あった量の約半分、このくらいなら私の魔力操作を鍛える良い実践になるかもしれない)


 気分は悪かったものの意識を集中させ、自分の中にある魔力を貯めている器に意識を向けてみる。


 ずっと、意識を集中させて少しだけの魔力を鍋に注いでいたからか、魔力の器がある場所のイメージが鮮明になってきていた。


 全身に魔力の器が点在しており、コーヒーを出現させる時には、全身の器から魔力を手のひらに集め、具体化しているのだと分かった。ただ、器の大きさはいくら広げようとしても変わらず、ダフネは無理矢理、全身の器に魔力を分散させた。


 すると、魔力が全身を駆け巡っているその道が太くなり、魔力暴走を起こしているという感覚がどんどん消えていき、送られてきた魔力が自分の身体に元々あった魔力と溶け込んでいった。


「これは、面白い。」


 ダフネは思わず独り言を呟いた。


 今まで魔力は身体全体に充満していると思っていたが、血管のように魔力の道が全身に張り巡らされていて、その道はいくらでも広くすることができる。そして、今の行動を繰り返せば自分の身体に収まる限りいくらでも魔力を増やせることが分かった。


 だが、同時に恐ろしいこともある。

 魔の力どれか一つにでも才能があれば、その人、その生物は兵器になりうる。

 魔力を動物、人に詰め込めるだけ詰め込んでおき、使用したい時にこれ以上身体に入りきらない量だけ魔力を注ぐ。その魔力は身体の中での行き場を失い、魔力暴走、魔力爆発を起こす。

 立場の弱い人がそれに使われたら、ということを考えると、私はこの発見をしない方が良かったのではと思った。


 でもこの発見は今後、良いことにも使われるのかも知れない。ダフネは後でサベリアに伝えておいて、考えてもらった方が良いだろうという結論に至った。


 成り行きで発見してしまったとはいえ、私は公表するつもりも場所もないのだからこれ以上考える必要は無いと思考を放棄した。




 面白い発見をしてから四日、2回目の魔力暴走を起こしてから眠気も無いし疲れもない。

 ただ、ずっとじっと同じことをしているのは流石に頭がおかしくなりそうで、今まではよく夜更かししていた身だが、睡眠の大切さに気づく。

 眠気も疲れも無くなった理由は、自身の体に取り込んで、より多くなった魔力が、自動的にダフネの身体を回復させているのだと考えた。


 すると、ドアベルが2回鳴り、サベリアの声が魔術院の方から聞こえてくる。

 ダフネは魔術でローブを取り、魔力を注ぎ込めるように器用にローブを着た。


「こっちです。カウンターの方に入って、扉を開けてください。」


 ダフネはサベリアにこっちに来るように声を掛ける。


 ギィ、と扉が開き、いつもと変わらない美貌のサベリアが現れる。

 久しぶりに人を見たので、サベリアの目を見張るほどの美貌と相まって、サベリアの周りがキラキラと輝いているように見えた。


 サベリアはダフネが作業している物を見る。


「これは?」


「手紙でも書いたように、寿命を延ばす薬です。」


「そうか。」


 サベリアはじっと作り途中の薬を見ている。


「四日目です。あと十日で作り終えます。そのあと、私が毒味をしてから、あなたの身体で試してみましょう。」


 サベリアはダフネの言葉に頷きだけで返し、気に止まっていたであろうことを聞いてきた。


「それで、始まりの魔女、エリスとは?公爵のことはもういい、話をしてきた。」


「そうですか。」


 ダフネはどこからどこまで話をしたのかは気になったが、フランツの様子だとダフネとの関係を簡単に話すような人ではないと、信じておくことにした。


「始まりの魔女、エリスは、簡単に言えば魔女の始祖ですね。」

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