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魔女の娘  作者: 田中 瑞希
第1章
13/17

第三王姫の肖像

♢♢♢




「⋯これですか。」


(精霊だ)


 ダフネはその瞬間でその肖像画に魅入ってしまった。

 その肖像画はまるで、炎の精霊のようだった。神話の物語に出てくる伝説上の存在だが、一部の人間はその存在を、今でも実在していると信じている者もいる。そして、ダフネはあまりにも大きな肖像に驚くしかない。


 大広間と言って、ダフネは大きいんだろうなとは思っていたが、心のどこかでは公爵家を舐めていたらしい。その肖像画は、私の家の壁よりも大きいかもしれない。


 ダフネは聞いた。


「どうしてこんなに大きいんですか…」


「聞きますか。」


 フランは瞳をきらんとさせて聞き返してきた。


「聞きたいです。」


 フランは、「では。」とこほんと咳払いをさせて喋り始めた。


「今から60年ほど前、このカレンデュラ公爵家は経済難でした。それは、4代前の第12代目公爵様が病弱で思うように身体も動かず、公務が十分に出来なかったというのもありますが、そのお父様、第11代目公爵様の弟君が、博打にハマっていたというのもありまして、公爵家の私財を勝手に横領し、博打に使い始めたのです。それに気づいたのは第11代目公爵様がお亡くなりになる前のことだったのですが、もう既に多額のお金を抜き取られていて、公爵家は伯爵家に降爵するしかない…。と、思われていたのですが、なんと、その時…!!!第12代目公爵様が襲爵された時、第三王姫様が公爵家に提案をしてきたのです!その提案とは、王姫様は王家に干渉されない暮らしを望んでいたので、公爵家は王家から王姫への干渉を防ぐ代わりに、王姫様は公爵様の妻になり、公爵家を立て直す。というものです。王家からの干渉というのは、その時王家も好景気が終わり不景気がまわって来ていたので、第三王姫様を他国の王妃にし、その恩恵を授かろうと考えていました。王家の考えに乗るのは第三王姫様は反対していたのですが、王家は無理に話を進めようとしていたので、第三王姫様も強行突破に出られたのです。そして、第三王姫様はその見事な手腕で公爵家をみるみるうちに立て直し、当時は王家をも上回る経済力だったと言われています。つまり、第三王姫様はこの公爵家にとってはまさしく神のような存在。これくらいでは感謝しきれないほど、とても素晴らしく偉大なのです。」


 フランはまたひとつ、こほ。と咳払いをした。


「なるほど…」


 ダフネはフランのお喋りに圧倒されてしまったが、話を聞いているとこんなに大きく第三王姫様の肖像画を飾っているのも、公爵家にとっては足りないくらいなのか。公爵家にとって、第三王姫様はまさに救世主だ。


「何か、質問はありますか?」


 フランはこれだけ話したのだから質問はないのかとそわそわしているようだった。

 ダフネは、単純に気になったことを聞いてみる。


「第三王姫様の容姿は王家の特徴とは違っていますが、何故なのでしょうか?」


 王家の特徴は金髪にブルーグリーンの瞳だが、第三王姫様はシルバーレッドの髪そして瞳、これはこの国の者だったというのは考えにくい。


「はい。第三王姫様のお母様が東の国のシャムス国出身でして、シャムス国の人の特徴は、主に赤の色素の一族なのです。これは余談ですが、珍しい容姿をしているから、より他国に売られるような形になったのではと考察しています。」


「なるほど。確かに一理ありますね。」


 ダフネははじめて聞いた知識を、記憶しておこうと脳内で反芻する。

 すると、メイドがフランを呼びに来た。急ぎの用件のようだった。


「少し、席を外させていただきます。終わり次第、戻ってきますので、こちらでお待ちください。」


「はい。」


 私が返事をすると、フランはお辞儀をして足早に去って言ってしまった。


(公爵家は来客がひっきりなしに来るんだな。)


 ダフネはまた肖像画に魅入る。

 燃える炎よりも赤く、密度の詰まった赤。赤黒いともいえる髪が長く、ふわふわと癖髪でドレスも赤い。そうして画の中の第三王姫様は、艶笑を浮かべている。シルバーレッドの髪が光の反射で変化したであろう所々にある赤黒い髪の毛はでゴオゴオと音を立てて燃えるような炎に見せ、そしてその炎に包まれているようで、それが炎の精霊のようだと思わせるのだろう。


 精霊、伝説上の存在。まさしく肖像画の第三王姫様はこの世のものでないような美しさだ。それでも人間で、パパに近しい雰囲気が感じ取れる。




 ダフネは思わず独りごちていた。


「たしか、シャムス国か…行ってみたいなぁ。」


「こちらで手配しましょうか?」


 ダフネはその独り言に返答が返ってくるとは微塵思っていなかったため、びっくりして体を震わせてしまった。


「あ、いや。大丈夫です。独り言ですし、行くにも自分で行きます。」


「そうですか。こちら、公爵様から他にも言っておきたかったことがあったのだ。と、お手紙を預かっております。」


 そう言うと、ダフネはフランツから手紙を受け取った。


「ありがとうございます。家に帰ったら、読むことにしますね。」


「はい。」




♢♢♢




 ダフネは家に帰ってきた。

 1日を振り返ってみて、なかなか濃い一日だったと思う。

 フランツさんに帰ると言い、馬車を用意させると言われたのだが公爵家の馬車を使って目立ちたくないのと、転移魔法で帰った方が早いことを理由に断った。

 今まで渡された物はフランツさんが私は馬車で帰ると思い馬車の積荷に置いてくれていたらしく、それを人目につかない部屋まで運んできてもらい、そのまま転移したのだ。

 フランツはとても驚いていたが、おそらく公爵家に行くのはこれで最初で最後だと思うので、驚きすぎで寿命を減らしてしまうことは無いだろう。

 

 家に帰って一息ついたところで公爵様の手紙を読んだら、途中から公爵様のことを叔父さんと呼んでいたことがバレていたらしく、叔父さん呼びは直ちに止めるようにと書かれていた。そして、これから文通を始めないかとも書かれていた。


 ダフネは早速返事を書き、私の手紙と一緒に私の家へ転移させる魔法をかけたシーリングワックスもつけて魔法で送っておいた。

 最後にそのシーリングワックスで封をすると、私の家に届く仕組みになっている。




 そして、ダフネは公爵様に早く吉報ができるようにと、意気込んだのだった。

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