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異世界ガチャ  作者: 遊尽(YOU-ZINE)
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異世界イシュカニアと召し使いとドラゴンボーイ

イシュカニア

古き神々が生み出した世界である

新しき神々の侵略に敗れた古き神々はその力を失ない、今は新しき神々とその眷属が支配する時代である

古き神々の時代の後に新しき神々が生み出した最初の人類がとんでもない失敗作であり、高度な科学文明を築くも調子に乗りすぎて様々な禁忌を犯したのだ

神話には悪魔を繋ぎ神を辱しめたとあるくらいの天狗っぷりである

ああ、天狗って言うのは

そんな話はどうでもいい?ご尤も

この世界の亜人種はその殆どがのこのイカれた連中が遺伝子操作で生み出した物らしい

まあ、それも五千年も前の話なんでみんな種族として独立してる訳だが

俺達も地球の人間とほぼ同じ見た目だがイカれた連中が労奴として作った物らしい

中々にイカれた連中だ

そいつらはどうなったって?

滅んだよ、五千年前に

新しき神々の寵愛を失なったらあっという間だったそうだ

その後精霊神って言う自然現象を司る神の眷属であるエルフの時代になって今度は高度な魔法王国の時代になったのだとか

この時代に魔法が一般的になり今も大体の事が魔法で賄えている

そのエルフの王国なのだが、千年続いた後に突然消えてしまった

何でもエルフ達が国家運営に飽きてしまい国を放棄してしまったのだとか

何となくその辺りはイメージ通りと言うか

その後色んな種族が国を興しては消えていくを繰り返し、今は我らヒトの時代である

という様な話を転生する前にざっくりと女神様から教わった

先にも書いたが俺はヒト族に転生するらしい

現時点での覇権種族だから動きやすいとか何とかあるのだらう

だだここから先の細かい設定が出来ないらしい

何と言ったか、親ガチャとか国ガチャとか

そう言うのを期待しよう

なに、プランクトンよりは確率は高かろう

等と思案していた所で俺の意識は途絶える

転生が始まったのだろう

(そういや女神様の名前、聞いてなかったなぁ)

これが遠山としての俺の最後の意識だった


「でかしたアリシア、男の子だ」、

ぼやけた意識の中で男の声が聞こえる

どうやら過去の記憶や意識はそのままな様だ

まあ、そうしないと神々の求めなんて忘れてしまうか

つまり、現在俺の目の前で鼻水流して喜んでるのが父親なのか?

この世界の文化水準は良く解らんが身なりは小綺麗だ

取り敢えず親ガチャは当たりだったみたいだな

という様な事を泣きながら俺は考えた

そりゃ泣くさ、俺赤ちゃんだもん

父親の名はベイル=サイモン

猫の額程の領地を持つ地方領主で一応名の通った騎士らしい

母親の名はアリシア=サイモン

良いところのお嬢様らしい

名の通った騎士である父親の知名度を利用しようとした祖父にあたる人物によって政略結婚で嫁いできたらしい

まあ、腹が立つ程仲睦まじい仲良し夫婦…いや、こりゃバカップルとかいう奴だ

「騎士の私と魔法使いの君の血が流れているんだ、将来は高名な魔法剣士になるに違いない」

親バカという奴なのだろう

「まだ名前も決めてませんのに気が早いですわよ」

やや暴走気味なベイルを嗜めるアリシアの表情も満更では無さそうな顔をしている

この世界では両親の能力が遺伝するのだろうか?

「名前、そうだな名前はシローだ」

シロー…四郎?史郎?彼の冒険者仲間で日本に似たアズマニアという国の剣士と同じ名前らしい

我が子の名に取るとは余程の人格者なのだろう

とりあえず俺の名はシロー=サイモンという事になった


「残念ながら御子息には魔法の才能は御座いません」

三ヶ月後、両親の希望は失なわれる事になる

生後三ヶ月で魔力の総量が計られる

この世界の風習らしい

総量自体は修行や成長で幾らでも伸びる

ただしそれは魔力を有していればという前提である

この世界、別に魔法に依存した世界では無いので魔力がない事は別に珍しい事では無いし生きていく上で何の影響もない

ただ魔法が使えないというだけの話である

ベイルは酷く落胆していたが

俺が異世界の人間だから魂に魔力が付与されなかったのだろうか?

「なら立派な騎士を目指せばよろしいじゃないですか」

アリシアは意にも介さないといった所である

「まあ、それはそうだが…」

ベイルはそう言うと深くため息をつく

流石にそれは傷付くぞ

腹いせにちょっとギャン泣きしてみせた

だって俺、赤ちゃんだもん


チョロいベイルをからかいながらそれなりに楽しい日々が五年と過ぎたある日、その時がやって来た

ベイルが俺の世話係にしようと街で奴隷を買ってきたのだ

年の頃は十代半ば

この辺りでは珍しい黒髪に茶色い目をした少女である

突然頭の中で煩く鐘の音に似た音が鳴り響く

俺と少女は同時に頭を抑え踞る

成る程、そう来たか…

早速一人目が向こうからやって来た

だがどうする?

流石に両親の目の前で帰還させる訳には行かない

それを頭の中で必死に女神に訴える

「大丈夫かシロー!?」

頭を抑えて厳しい顔をする俺を見て何が起きたか解らず駆け寄る

「大丈夫てすお父様…」

共鳴が収まり何とか返事をする

女神にも願いが届いたのか今のところ彼女が帰還する様子はない

「リンコさん、着替えますから此方へ」

ベイルの所にアリシアが嫁いできた時に連れてきたアリシアの世話役の女性、メアリーがリンコと呼ばれた少女を連れていく

まあ召し使いは彼女しか居ないのだが

「シローちゃんが寂しく無い様にお世話をしてくれる子を連れてきたのよ、仲良くしてあげてね」

アリシアは言う

良いところのお嬢様であるアリシアと名の通った騎士であるベイルは社交界でもそれなりで中々に忙しい毎日を過ごしていたのだ

それを不憫と思ったのだろう

尤も、いい歳したオッサンが一人だから寂しいとか思ったりはしない

「ありがとうございますお母様」

にっこり笑って見せる

子供なりの処世術をマスターするには流石に苦労した物だ

そうこうしていると着替えの終わったリンコとメアリーが戻ってくる

メイド服…というよりは簡素な制服とでも言うべきか、そんな姿をしている

リンコはスカートの両端を持ち片足を後ろに下げ挨拶をする

どこで習ったのだろうか、様になっている

「済まないシロー今日も男爵夫婦に呼ばれていてな、一緒に居られないのだ」

ベイルが申し訳無さそうに後頭部を掻きながら言う

まあ現状居ない方が助かるのだが

「解りましたお父様お母様、お気を付けて」

男爵夫婦はすぐ近くの城に住む王の血統の貴族である

まあ、アリシアの父親の方が偉いのだが

アリシアの父親にお近付きになりたくてベイル夫婦に粉を掛けているのだろう

「行きましょうリンコさん」

手を取りリンコを部屋へ招く

「シロー様っ」

何かさせたい事が有ったのかメアリーが俺に声を掛ける

「ごめんなさいメアリーさん、ちょっとお話がしたくて」

そう言うと頭をペコリと下げて部屋へ入る

彼女は悪い人間ではない

事務仕事から家事から何でもこなす有能な人物である

ただこちらが非常事態なだけである

『会えて嬉しいです、リンコさん』

部屋に戻った俺は日本語で彼女に呼び掛ける

それを聞いた彼女は涙を流しその場に崩れ落ちる

『あなたは誰?一体なんなの!?』

リンコは酷く動揺している

無理もない、奴隷として売られた彼女がこの五年間どの様な人生を歩んだかは想像を絶するに十分だ

『俺の名は遠山、あの時同じバスに乗って死んだオッサンだよ』

これまでの経緯と目的をリンコに打ち明ける

『帰れるの…』

地獄の様な日々の終わりが見えて彼女情緒は崩壊寸前である

『他には仲間は居ませんでしたか?』

俺の質問に彼女は青ざめて身震いする

『解らない』

ただ短くそれだけを答えて

彼女はあの時居合わせた高校生のグループの一人だった

何故か歳を取らず見た目の変化は無いと言う

女神が帰還する時の為に配慮でもしたのだろうか?

青ざめ震える十代の少女を宥める五歳児というのもシュールな物である等と思いながら次の事を考える

人一人いきなり消えたらそれが例え奴隷でも騒動になるだろう

どうせ捕まる事もないし逃げた事にでもするか

等と考えていると頭の中で声がする

【状況を確認】

スキル 任意帰還命令 を習得しました

これにより異世界からの来訪者の帰還のタイミングを任意で決める事が可能になりました

来訪者はこの命令を拒絶する事は出来ません

なんだこれは?

まるでゲームのスキルみたいだが、女神様に願った事が受理された結果か何かか?

まあ帰還させるだけだし気にする事は無いだろう

俺は彼女を落ち着かせたら今後の事を話始めた

取り敢えず両親やメアリーを信用させて外に自由に出られる様にする

外に自由に出られる様になったら俺のスキルとやらでドロンという寸法だ

最初は今すぐ帰りたいとゴネたが最終的には俺の立場を理解して折れてくれた

この地に骨を埋めねばならない俺の事情もある

なに、ベイルもアリシアもチョロい善人だからそう時間は掛かるまい

等とたかを括って居たが結局一年近く掛かってしまった

どれだけ信用を重ねても奴隷は奴隷と言うことか

凛子の視線が痛い

彼女の名前は葛城凛子と言うんだそうだ

気が付けばもうすぐ6歳になる

俺はベイルの許しを受けてベイルの領内の街で買い物をしていた

『今日でお別れだ、凛子』

計画の実行を彼女に伝える

彼女はうつ向いて何も言わないので感情は読み取れない

『ありがとう…』

ボソッと凛子は返事をする

『お願いがあるの…』

凛子はうつ向いたままそう言う

彼女が俺に何かを頼むのは初めてだ

『解った』

内容を聞くまでもなく了承した

『聞かないの?』 

凛子の反応も尤もである

が、

『構わないさ、言ってごらん?』

見た目は六歳児だがアラ還である

子供への配慮は忘れない

『ふふっ、小さな子なのに不思議』

凛子が微笑む

歳相応の笑顔を見せる

そういう顔も出来るのだなと思った

『友達も助けて、そして私は大丈夫だよって伝えて』

俺の手を取り彼女は真剣な眼差しで訴え掛ける

俺は頷くとスキルを発動させた

「スキル、任意帰還命令発動」

凛子の足元に円形の光が発生し光の柱が凛子を一瞬にして飲み込んでいった

光に包まれる瞬間何かを俺に伝えようとしえいた

多分サヨウナラとかそういう事だろう

これであと九人…

と思っていると頭の中で聞き覚えの有る声が聞こえてきた

【ミッション:異世界遭難者の救助(1/10)の達成を確認】

これにより報酬として新たなスキルが付与されます

リストの中から選んでください

『その前に質問が有るのだが?』

俺は頭の中で語り掛ける声に質問をする

【ヘルプQ&Aの確認】質問をしてください

事務的と言うか機械的だなぁ

『凛子は…帰還した遭難者はこの後どうなる?』

六年経っていきなり生きてましたでは八方困るだろう

最悪こちらで生きるという選択肢がある程度には

【ヘルプQ&A遭難者の救助について】

帰還した遭難者は遭難した直後の時間に戻されます

異世界での記憶は失なわれこちらで受けた怪我や病気は全て無かった事になります


【ヘルプ:チュートリアル 呼び出し方法】

今後機能を使う時はOKゴーグルと言ってください

声に出さず心中での呼び掛けでも有効です


成る程、兎に角帰還が出来たら後は狭間の空間の神々が上手くやってくれるのか

寧ろ消えた召し使いについて言い訳する俺の方が大変そうだ

「それにしてもゴーグルって…」

等と苦笑いをしていると大きな土煙を上げて一頭の馬が此方に向かってくる

「無事かシローっ」

馬に乗っているのはベイルだ

おそらくは帰還の際に発生した光を見てすっ飛んで来たのだろう

これは対策が必要かも知れん

それよりも凛子が消えた言い訳だな

「お父様…」

ベイルに声を掛けるが言い訳は見付かって居ない

逃げたと言った所で馬で探して出て来ないのは不自然だろう

どうしたものか…

「おのれ魔王め!」

思考を遮る様にベイルが叫ぶ

俺の頭の上に?が付く

「ああ、なんと言う事だ…リンコが犠牲になってしまうとは…」

何を言っているのか解らないが取り敢えず言い訳を考えずに済みそうだ

その帰り道、ベイルの馬に一緒に乗せてもらいベイルから色々と話を聞く事が出来た

目的は不明だが魔王軍は転位魔法を使って人浚いをしているらしい

一応俺のスキルも転位なので見た目が似ていたのだろう

今後は魔王の仕業という事にしておこう

と静かにしているとベイルは俺の頭を撫で肩

「折角仲良くなれたのにな…すまない…」

ベイルが謝る理由はないと思うのだがと思いながら子供としての処世術を発動させた

これはリアルスキルだがな


「OKゴーグル」

その日の夜ゴーグルを呼び出す

中断していたスキル習得とかヘルプ機能とか知りたい事が沢山あった

【お呼びでしょうか?】

相変わらず機械的な反応が帰ってくる

「中断していたスキル習得の再開を」

ゴーグルに指示を出すとリストが出てくる

魔力の無い俺に魔法や魔力アップは死にスキルだ、除外

武器スキルも肉体強化も子供の俺には無用だな、除外

等と思案していたら気になるスキルを見付ける

これは…

俺はそのスキルを獲得する事にした

そのスキルの名は

【ボーナススキル:操気を習得しました】

操気は気のコントロールをするスキルです


来たこれ

全国の子供が夢に見たアレですよアレ

80~90年代の覇権漫画ドラゴンボーイの主人公のセン達が得意としてたやつ

南の島の大王のエネルギー砲とか空飛んだりとか実質魔法じゃないですか

テンションブチ上がりですよ


実際にはそんなに甘い物では無かった

確かにこの操気は生命力を様々なエネルギーに変換する事が出来る

ベイルの書斎の本にはフォースマスターと呼ばれる格闘職最上位の職業の者のみが習得可能な固有スキルであると書いてあった

エネルギー弾を放つ技も有るが子供の俺にはそもそも生命力の総量自体が絶望的に足りていない

世知辛いというか、チートスキルで何とやらとはならない物である

とは言え最上位職の固有スキルだけあって色々と便利な能力なのだが先ずは体力を付ける所から始めなければならなかった

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