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鉄壁の運び屋 弐ノ式 ー二つの帝国と目覚めの花ー  作者: きつねうどん
第1章 亡国
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第肆話 違和感

朱鷺田がいるのは何故か、とあるアパートの一室だった。


「ど、どうなってるんだよこれ」


赤い髪は健在だが、クリーム色の上着を着ており普段、着物姿の彼とは似つかない格好をしている。

それでも、この制服は特別な物という認識は変わらなかった。


「旭は?谷川は何処だ?」


いつも、誰かと一緒にいる事の多い朱鷺田の為。側に誰かがいないとパニックになるのは明白だった。


「とりあえず、誰かと合流しないと。と言うか、移動出来るのか?それすらも不明なんだが」


意識を集中させ、自分の印の場所を探る。

しかし、そのあと彼は顔を真っ青にした。


「なんだよこれ、担当範囲が膨大すぎる。比良坂町の比じゃないぞどうなってるんだ!?」


室内を物色しすると運び屋にとってはマストアイテムである地図が出てきた。だがそれでもなお、帝国本土を全て知る事は叶わない。

そんな中で朱鷺田はある事に気づいた。


「比良坂町と同じ地名が結構あるな。忍岡、氷川、和田、それに越後もある。此処はそもそも何処なんだ?」


外の景色を見ると以前、壁に囲まれた比良坂町と似たような景色だなと朱鷺田は感じる。


「...過去に飛ばされた?いや、此処はそもそも夢の中だ。もしかして、比良坂町は此処を模して作られたのか?いや、そんな事...」


だか、あり得ない話ではないのだ。

地名というのは、少なからず歴史を反映させる物だ。

比良坂町の歴史にも詳しい朱鷺田なら、それは十分分かっている事だろう。それに何処か“懐かしさ”を感じる。

直感的にそれは彼も感じとっていた。


「ようやく、旭と穏やかな日々を送れると思ったのに。もう離れ離れか。まぁ、俺たちらしいか。大丈夫さ、別れと出会いを繰り返せばそれは永遠になるんだから。俺たちの仲は永遠だ」


その思いを自分に言い聞かせ、胸にしまうと朱鷺田は動き出した。

とりあえず、比良坂町と同じ容量で人がいそうである忍岡に移動する事にした。


「谷川!!」


「ごめんね、みどり君。合流が遅くなって、何か谷川さんの移動範囲が可笑しいんだよ。比良坂町と全然違うの」


「それは俺も認識してる。とにかく、無事で良かった。旭は...見てないか?」


その言葉に谷川は申し訳無さそうに首を横に振る。

朱鷺田は彼女に気を落とすなと労いの言葉をかけた。


そのあとだった、もう1人同じく此方へと駆け寄ってきたのだ。


「朱鷺田!谷川!良かった、無事だったか!?」


「山岸!お前も巻きこまれたのか。これは大変なことになったな。集団で同じ夢を見ているという事か」


「だろうな。ただ、颯と小町がいないんだ。何か夢に入るには特別な条件が必要なのかもな。出来るだけ不来方や千体の方でメンバーと合流してきた。さっきも那須野に会えたしな。皆んな担当場所が変わっててパニックになってる。格好も違うのに変えられて...グズっ。隼君とお揃いにしたかったのに。しかも本人も何処かに行っちゃって、俺ウザいって思われたかな」


その言葉に朱鷺田と谷川は呆れながら今後の事を相談する事にした。


「とりあえず、山岸と同じように可能な限り他のメンバーと合流しよう。まずはリーダーである児玉さんを見つけないとな」


「それについてなんだが、まずは協会に行ってみないか?」


その言葉に朱鷺田は目を見開いた。


「此処にも協会があるのか?でも、敷島家の屋敷なんてないだろう?」


同じ忍岡にいるものの確かにそのような建物を見る事はなかった。

此処は比良坂町と異なる存在なのは山岸も周知の事実だが付け足すようにこう言った。


「朱鷺田、谷川。見えるか?あの巨城。あれって協会の近くに存在してるんだよ。しかもだ、ある噂話を聞いたんだ。彼処には“殿様”がいるってな」


それと同時刻、児玉と燕は何故かその城の中におり冷や汗をかきながら何処かの居間で誰かが来るのを待っていた。


「どうしよう、玉ちゃん。燕、こんな所にいて良いのかな?瑞穂や咲羅達は何処なの?」


「やめてくれよ。俺を1人にしないでくれ。望海も光莉も側にいないんだ。こんな事、初めての事態だぞ」


そのあと、初老の着物姿の男性が2人の目の前に現れる。

上品な蒼の着物に、50代程だろうか?白髪が混じる銀髪ながらもやはり上品さ、気品さを感じる。

節子や瑞稀、亘とも似たような雰囲気を持つ方だった。


「顔を上げなさい。そんなに畏まらなくて良い。私の名は朝風(あさかぜ)(さとる)。皆からは殿と呼ばれている。児玉と燕だな。其方達の事は良く知っているよ」


その言葉に2人は顔を上げた。


「燕達の事を知っているの?」


「勿論だとも、信頼の厚い仕事仲間だ。私は一応、運び屋の頭領をさせてもらっている。この帝国に君達の仲間が姿を変え、散り散りになっているのも把握済みだ。“あの病の仕業と見て良いだろう”」


野師屋もそうだが朝風も亡国の運び屋として存在し、危機感を募らせていたようだ。その言葉に児玉は口を開いた。


「俺達は元の現実世界に帰らないといけないんだ。殿、俺たちはどうすれば良い?」


「とりあえず、私の行動範囲的に協会から赤間までは移動可能だ。それは2人も粗方一緒だろう。この膨大な帝国を駆け抜けて仲間を探し出さなくてはならない。出来るか?」


「出来る?じゃなくてしないといけないんだよ。ねっ、玉ちゃん!」


「そうだな。しばらくは燕が俺の相棒になりそうだな、よろしく頼むよ」


そのあと、2人は夜まで小坂で仲間を捜索するも中々巡り会う事が出来なかった。


「何でだ?普段ならここに希輝達もいる筈なんだけどな。比良坂町と此方とでは違うって事なのか?」


「燕だって、担当変わっちゃってるし皆んなバラバラになっちゃたのかもね。...えっ、ねぇ玉ちゃん。あれ、火事じゃない?」


洛陽の方だろうか?山際が真っ赤に染まっている。しかし、周囲で騒いでいる人などいない。

まるでなかったのか?当たり前になってしまったのか?慌てている自分達が可笑しいと思ってしまう程だった。

そんな時だった。目の前に1人の運び屋が現れる。それが剣城だった。


「剣城、無事だったか!所でお前も見てくれないか?あの山、どう見ても可笑しいだろ」


「あぁ、先程越後の方にも行って来たんだ。そしたらどうした事か、目の前に狐火があった。異国の伝承的にな」


「それって、まさか!でもおかしくない?こんな所で見れるの?」


「確かに可笑しな話だ。夢の中とは言えどうなってるんだ?不気味過ぎるぞ」


その不思議な現象に3人は頭を抱えていた。

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