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鉄壁の運び屋 弐ノ式 ー二つの帝国と目覚めの花ー  作者: きつねうどん
第1章 亡国
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第参話 残された者

「おい、どうなってるんだよこれ!」


「隼!寿ちゃん!お願い、目を覚まして!」


場所は会議室、光莉だけでなくドタバタと他のメンバーも倒れ意識もなく眠りに就いた。

今、残っているのは颯と小町だけだろうか?

同じメンバーである山岸、隼、青葉、那須野、翼も含め、他全員ぐったりと目を閉じたまま動こうとはしない。


そんなおり、初嶺も黄泉に呼び出され。屋上に来ていた。


「Dr.黄泉。会議室でも重症患者が...!?」


旭の側、同じく倒れている朱鷺田と谷川の姿があった。


「もう、手遅れだ。運び屋の大半が行動不能になってる。朧君、まだ健康な人物はいるか?」


「はい。颯と小町の2名です。この2人に何か共通点があると言う事でしょうか?」


「分からないが、得に颯君は赤い血について詳しい。彼が残ってくれただけありがたいと思わないとね。とりあえず、1人1人づつ医務室に運ばなくては」


「この異常事態。黄泉先生、ワクチンが効くとかそう言う問題ではないと思います。おそらく、比良坂の出入りが頻繁に起こった事によってウイルスが入り込んだのか?それとも違う感染源があるのかは不明ですが旭さんが今、危ない状態です。念力の質が変わってきてる。

運び屋の念力を操って、別の者に作り変える。それがこの病の正体と言う事でしょうか?」


「大方、愛君の言うとおりと見て良いだろう。自宅にいる望海君も危ないかもしれない。とりあえず、2人を会議室から出して僕達と合流してもらおう」


そのあと、敷島会長や節子もいる会長室に全員集まり対策会議を開く事になった。


「成る程な、メカニズムとしては分かった。あのさ、俺の家系が特殊なのは知ってると思うけど。その祖先が何をしていたのかまでは教えてなかったよな?」


「寿ちゃんも良く言ってたの。「颯は特別な子」だって。赤い血も颯が良く知ってるって」


「青い血はここ、比良坂町に土着していた血統だって言うのは僕も知ってる。以前、望海君達から聞いた事もあるしね。だが、確かに今まで謎めいていたんだ。赤い血が何処からきたのか?」


「では颯にはそれを知る機会があったと?」


その言葉に颯は頷く。


「あぁ、うちの婆ちゃんは元々。帝国のイタコだったんだよ。それを若い頃爺ちゃんが攫って駆け落ちしたんだ。巫女は未婚の女性っていう条件があるからな。それで150年前から壁に囲まれていた比良坂町に目をつけて此処に隠れて暮らしてたという訳だ」


「ねぇ、ちょっと待って欲しいの。颯、帝国って何処にあるの?比良坂町の外?」


その小町の言葉に颯は口を噤んてしまう、その様子を見て黄泉は察した。


「もしかして、もうないのかい?僕達のルーツと言うべき場所は?嘘だろう?いや、秋津基地があると言うのが何よりの証拠か」


「あぁ、戦争だよ。それで帝国は滅んだんだ。爺ちゃんは元々、兵隊として駆り出される予定だったんだ。でも、本人は嫌で嫌で仕方がなかった。それ以上に婆ちゃんに惚れてたんだ。だから2人で駆け落ちした。Dr.黄泉の言う通り、秋津基地もそうだろ?あれも元々、戦争で使っていたんだと思う。だけど今になって必要無くなった」


「戦争が終わったから、と言う事だね。ありがとう、颯君。君がいてくれて良かった」


そう言うと颯は悲しそうな笑みを浮かべた。


「ただ、俺は医者じゃないし。こう言うのは婆ちゃんもそうだけど、鶴崎とか全斎の方が詳しいんじゃないか?折角の機会なんだ。応援を要請した方がいい」


「そうですね。運び屋達は動けませんし、外の世界の事なら彼らが1番良く分かってる。詳しい話を聞けるかもしれません」


そのあと、未だ険悪な仲なのか要請を受け鶴崎のみが協会を訪問した。


「粗方事情は聞いている。大変な事になったな、確かに私達は少年兵として戦地に駆り出されていた。しかも終盤になれば成る程、過酷な任務を与えられた。爆弾を持って、敵兵に突っ込めとね」


「それでも君達は生きながらえてきた。それなら尚更、おかしいと思うはずだ。過酷な任務を与えても戻ってくるのだから。帝国の事を颯君から聞いたのだが粗方合っているかな?」


「この国と言うべきか。帝国は敗北し、今は別の戦勝国が領地を支配しているような状況だ。そんな中、イレギュラーがあった。壁に囲まれた比良坂町だ。ここの領地分配は後回しにされ、今も放置されている。帝国の最後の領土と言っても良いかもしれない」


その言葉に同じく、戦局にいたであろう初嶺も首を垂れた。


「私が少年兵として出兵する前にもう殆ど戦争は終わってる状態でした。でも、残された人々はそれを信じられなかった。秋津基地の皆さんは全員同じ気持ちだったと思います」


その言葉に鶴崎は頷く。


「生存兵として、仲間を弔ってやらなければならないし遺骨採取も終わっていない。おそらく、比良坂町にいる運び屋達はその戦争から逃れる事が出来た唯一の存在なのだろう」


「場所を移動出来るテレポーターだからと言う事ですよね。成る程、そしてその運び屋に危機が迫っている。黄泉先生、私の見立てでは」


「あぁ、おそらくこの病の手がかりは今は亡き帝国に存在する。僕達のルーツの中に。おそらくだが、倒れたメンバーはその中に入っている可能性が高い。過去の記憶を追体験しているのかもしれないね」


そのあと、会話を終え鶴崎は別れ際にこう言った。


「手がかりがつかめたら私に連絡して欲しい。移動なら制限はかかるだろうが此方でも不可能ではないだろう。しばらくは運び屋の代理になるか分からないが私達の方で業務を引き受けよう」


「こう言う時、頼もしい仲間がいてくれて助かるよ。では、颯君。早速だが、過去の文献を漁ってみよう。手伝ってくれないか?」


「エースの隼も倒れたんだ。この颯様が動かないでどうするんだよ。小町、お前達も手伝ってくれ。久しぶりのバディ結成だ。皮肉だよな。こんな時に病に罹らないなんて。だが、期待には応える。必ずな」


その言葉に小町は真剣な表情でうなづき、帝国に関わる手がかりを探す事にした。

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