元ネタ解説
皆様、こんにちは。きつねうどんです。
今回は「鉄壁の運び屋 弐ノ式」を読んでいただきありがとうございました。
今回は日本を中心に、旧満洲国や台湾に範囲を絞ってストーリーを制作させて頂きました。
テンポ重視にしたのでもう少し、話数を伸ばそうかとも思いましたが11話で落ち着きました。それでは解説に移ります。
第壱話
最初に倒れた「あさひ」「のぞみ」「ひかり」の共通点は旧満洲国の南満洲鉄道、通称満鉄に名前がある為ですね。
「はと」も零ノ式で登場させているので、あと出ていないのは満鉄の顔とも言われた特急「あじあ」となります。
野師屋の元ネタですね。ここで彼のご紹介をさせていただきます。
野師屋亜門
名前の由来:南満洲鉄道、通称満鉄の特急「あじあ」から名付けました。
・苗字は「アジア」が由来的に昔の中国語の方言で「ヤシヤ」と呼ばれていた過去があるのでその当て字ですね。
ただ、原型がなくなってしまう恐れがあったので「亜細亜」の漢字から一つ引き抜いて名前に入れています。
・満鉄には特急と急行があり、「のぞみ」などは急行に属していました。当時、世界有数の超特急として存在していたので彼らのリーダー、カリスマ的存在と描写しました。
・良く、太陽と言われたり耳飾りをしていますが実際に太陽を模した旗を装飾していたのでそれを再現しています。
インスタント麺が好きなのは、満洲国の皇帝であった愛新覚羅溥儀が「チキンラーメン」を死に際に食べたいと仰ったエピソードに由来します。
他にも元ネタはありますが順を追ってご紹介したいと思います。
と言うか、野師屋の影響力って結構凄いんですよね。
現実世界の望海達にまで侵食しているような箇所があるのでまとめてご紹介したいと思います。
望海→野師屋はラーメンが好きなんですよね。現実世界でも好きなキャラクターいましたよね?翼ですね。いつも一緒にラーメンを食べに行くぐらい仲が良いと。もしかしたら、無意識に野師屋と重ねていたのかもしれません。
光莉→彼女が野師屋の事を「突然居なくなってしまった」と言うんですが1943年に戦局の悪化によって突然「あじあ」の運休が決まった為ですね。そのまま復活する事はありませんでした。
光莉は野師屋もそうですし、亡くなった両親の事もあり大切な人が急に居なくなる事に対してトラウマというか恐怖心を持っているように思えますね。だからこそ、自分の側に居てくれる児玉の事をとても感謝していますし、信頼しているんだと思います。
旭→彼の場合、自分自身ではなくて朱鷺田に影響を与えてしまっているんですよね。
他作品の彼の行動を見るに旭の願いとしては二つあって。
・野師屋の様な人の側にいる事
・自分と対等の関係を築ける相方、相棒が欲しい
という考えがある様に思えるんですよね。
これって一見矛盾しているように思えるんですが、朱鷺田はその願いを叶えてくれる存在なんですよね。
朱鷺田って自分でも言うように「本来の姿なんて何処にもない」んですよ。だからこそ、その弱みに漬け込むじゃないですけど。無意識だとは思いますが、旭は野師屋という役割を朱鷺田に与えた。ですが、それでは立ち行かないし結果的に上手くいかなかった。それ以上に旭は朱鷺田の事を高く評価していて勿体無いなと思っていた訳ですから。それを生かしてあげたいと思考錯誤していたのかもしれませんね。
第弐話
タイトルにある「怪物団地」の元ネタは、満州国ではありませんが同じ中華圏である香港にある「モンスターマンション」を元ネタとしています。
複数のマンションが合体ロボ並みにギチギチに連なっており、その建物内に売店や飲食店もあったりとマンション内で一つの社会が形成されているようですね。
密集住宅というのが中国らしいなと思いフレーバーとして入れました。
この時「児玉ならまだしも、若い青年を望海や光莉に絡ませるのはな」と旭の事を警戒していましたが「そういえば、ゲイだったわ。なら安心だな」と自分で勝手に爆笑してました。
シニア枠の斑鳩も入れてバランスの良いメンバーとなりましたね。
なんか、チャイニーズマフィア感があるなと勝手に思ってました。
帝都である長春の元ネタは満州国の首都だった新京ですね。
5人は元ネタでも新京を起点にしたり、経由して違う所に行くので集合場所として使いました。
他にも北京方面に「大陸」「興亜」以前は「あかつき」なども運行されているのですがルートが異なると言う事で登場させませんでした。
前者の役割としては「ひかり」や「のぞみ」と一緒で昼夜でそれぞれ運行しているので兄弟や親友設定になるのかな?と思います。
第参話
お留守番組の回ですね。
今回、先代がない「はやて」と先代が観光列車で「おばこ」などでも調べたのですが、どのルートを通ったのかが分からなかった「こまち」は病に罹っていません。
颯を黄泉達がいるとは言え、置いていくのも可哀想だし元々バディだった小町と一緒にいてくれた方が安心という事でそうさせました。
颯の祖母について、零ノ式で描写しましたけどイタコって巫女なんですよね。だから、未婚の女性になってしまうのではないか?という矛盾もあったんですが。「颯の祖父が若い頃の彼女を連れ去って、駆け落ちした事にするか」「比良坂町の近くの山から連れて来たんでしょう。あぁ、周り海だったわ」みたいな感じで適当に考えてましたね。
まさか、今作で流用するとは思いませんでしたが。
そう言えば「はやて」が1月上旬に羽田空港の事故の影響で臨時便が出ていましたね。新函館北斗ー東京までという珍しい運行で、こういうのは本当に助けを求める方が利用されるべきですし、それで良いと思うのですが。本心としてはメチャクチャ乗りたかったです。
ただ、深夜便なので下手すると帰れなくなるのでグッと堪えました。
物語の舞台としては戦後の日本をイメージして書かせて頂いてます。
比良坂町がメガロシティと言われていたのも、現在の東京もそうですし。高度経済成長期の日本をイメージしています。
やはり、今作のテーマとしては普段関わりのないキャラクター同士での組み合わせを意識していたので担当場所を変えて普段のメンバーとは違うキャラクター達との交流を大切にしました。
其方の方が新鮮ですし、新たな可能性も生まれてくるのかな?と思います。
でも、新幹線時代のグループの方が実家というか安心感はやっぱりありますよね。頼もしさが違うなとは思ってました。
特急や急行時代だと不安定感は否めないなと思ってしまいましたね。
第肆話
朱鷺田がクリーム色の上着を着ていたのは特急時代の「とき」の車体に由来します。
個人的に国鉄車両はクリーム色に赤い模様というのが印象的ですね。
「ひたち・ときわ」でも復刻として特別塗装されているのを先日、目にしました。
完全に日本地図を今回は使ってますね。
元々、原案だとそのようにするつもりだったのでここで回収出来て作者としては嬉しい限りです。
基本的に、行動範囲は元ネタ準拠です。
特急時代の「とき」は新幹線時代とそんなに変わらないですね新潟ー上野間で運行されていました。
ただ、新幹線のように皆が同じルートをとっている何処か補完するように個々でルートを形成してるので把握するのが凄い大変でしたね。
そもそも「あおば」「なすの」辺りも最初特急とかないだろ、と思ってちゃん調べたらあったという感じだったので危なかったですね。
この世界での協会は江戸城、現実の皇居ですね。
作者も銀座辺りから東京駅、皇居周辺を散歩するのが大好きです。
基本的に山手線、東側は作者の実家みたいなもんですね。ベッドタウン住みが何言ってるんだって感じですが。
ここで朝風のご紹介をしたいと思います。
朝風暁
名前の由来:ブルートレインの先駆けとして生まれた寝台特急「あさかぜ」から名付けました。
・「あさかぜ」の名前は一作目の解説で書きましたね。節子の手紙を届けてくれた運び屋の候補として名前を挙げていました。
「殿様列車」と呼ばれていたので、高貴な初老の男性をイメージして制作しました。蒼の着物もブルートレインからの着想ですね。
・名前は朝に関わる用語でいいのが無いかな?と調べて、人名に出来そうだったのが「暁」だったので入れております。
裏設定として御三家の先祖が朝風みたいな風に思ってます。
同じ祖先を持つ子孫という事ですね。
本当は比良坂町にいて、節子にも優しくしてくれる近所のお爺様的な感じでも良かったんですが、それだと勿体ないという事でご先祖様ポジにしました。
・生まれ変わった運び屋達は戦争に巻き込まれて、同業者が比良坂町に移住する中、自身の能力を使い人命救助などに尽力した結果、そこで命を落としてしまった勇気ある者だという風に考えています。
それを考えると比良坂町って何処にあるんですかね?鹿児島県の離島辺りにある感じになりますよね。種子島や屋久島なのかは分かりませんが。位置的に沖縄が見えるんだから。そこら辺は濁しておきましょう。企業秘密という事で。
第伍話
今回、キーアイテムに「月花美人」を選びましたが折角なら過去の望海じゃないと気付けない物として夜に関わる物、夜にしか咲かない花を選びました。
現在では寝台特急も定期運行はサンライズのみなので、折角寝台特急が夢の中とは言え複数存在しているのでいいかなと。
月花美人は漢方薬としても使われていて、今作でもありましたスープの具としても台湾で使用されています。
これを知った時に「折角だし、台湾新幹線を登場させよう」と考え最終話に至ります。
第陸話
白鷹が「帝都一の運び屋」と言われていましたが、以前ご紹介したように特急「はくたか」が日本最速の特急だった為ですね。
朱鷺田と2人が合流した温泉地は越後湯沢です。
特急「はくたか」は越後湯沢ー金沢、特急「かがやき」は長岡ー金沢が範囲となりますね。
比良坂町でも朱鷺田達3人の行動範囲を考えると住んでいる家もその辺りになるのかな?と思います。
どちらかというと、住宅地というよりリゾート地の印象が強いですけどね。
そのあと、赤いオーロラを見る事になりますが北極や北欧のイメージが強いですが日本でも北海道では見る事が出来ますね。
昔の記録でも新潟や石川県でも観測記録があります。
ただ、低緯度の為いずれも赤いという事でそれに合わせています。
児玉と燕がこれを見た時、火事と勘違いしていましたが実際に見間違えて騒ぎになったという事があったそうです。
光のカーテンとも言われますが、何故描写したのかというと冷戦時代に共産主義と資本主義の分裂が起き、それが世界各国で起きた為。
その様子をみたイギリスの首相ウィンストン・チャーチルが「鉄のカーテンのようだ」と言った事からその再現をしました。
第漆話
全員集合の回ですね。
同じ名前でも配置が変わると結構雰囲気が変わりますね。
剣城が「23時59分」という細かい時刻を示していましたが。
《帰り道》で描写し忘れてしまったのですが、日本で1番遅くに運行している新幹線は上記の時刻で金沢に到着する「つるぎ」号となっています。
敦賀延伸で変更があるかもしれませんが、流石頭脳派の北陸組ですね。時間を最大限に活用していると言う事でしょう。
剣城がドヤ顔しながら眼鏡をクイッとしているのを想像しました。
浅間の相方は正式には白山ですね。前者は上野ー長野、後者は上野ー金沢まで共同運行していました。
語源的には「しらやま」の呼び名も昔はあったようですね。
希輝から黒百合のような人と言われていましたが、白山連峰は黒百合の産地として有名です。
第捌話
新幹線をゲイバーに連れて行ったり、海に引き摺り込むのは流石に世界中で作者だけだと思いたいです。歴史上でもいて欲しくないですね。自分でもドン引きです。
ただ「あさひ」の名前は主に3回使用されていて満洲国時代、特急時代、新幹線時代となっています。
良く調べると愛知県の私鉄でも超特急として使用されていますね。
その為、旭を使って情報を共有させる為にも場所を移させないといけないんですよね。
当時のアクセスを調べると元ネタの羅津。現在の北朝鮮ですね。
そこから船が出ていて日本本土に接続出来るようになっているようですね。しかも接続先が新潟ー東京間なんですよね。此処からもう既に新潟への縁があるのが凄いですよね。
「ひかり」も九州の方で臨時急行があったそうですが、古過ぎて資料がないので確実な「あさひ」を選びました。
ただ、鉄道はあっても船の情報が出て来なくて。接続先は「富士」のようなんですがそれ以上は流石に無理でしたね。
じゃあしょうがないと思って人魚達に引き摺り込んでもらいました。
その前に事務所で野師屋が「冷房が壊れている」と言っていましたが当時では珍しい空調設備を搭載した列車として有名になりましたが、急ピッチで製造を行った事や、試運転もせずに運行してしまったため。冷房が動かないなどの設備不備があったようですね。
第仇話
この話で運び屋達が遺伝以上に前世というか生まれ変わりとして比良坂町に存在しているというような情報が出てきます。
人間関係も潜在意識に合わせて次第に似てくると言った感じですかね。
野師屋の言っていた“名も無き運び屋”の正体は台湾新幹線の事ですね。日本のように番号の振り分けはあっても愛称が現在定められていない事からそのように描写をしました。
一応、種別として直達車、各駅停車、区間車と大きな区分ですがあるようなので3人組の少年少女という事にしています。
台湾新幹線の開業年は2007年なので若い学生設定にしています。
第拾話
月花美人は光莉の言う通りサボテンの仲間でメキシコ、中米原産の花です。全斎が気前良く探しに行ってくれましたが「日本からメキシコまでの直行便ってあるのかな?」とふと疑問に思って検索したらANAはあるんですよね。JALはないんですけど。
凄いなと驚いたと共に、だったら全斎は自分にしか出来ない事をするのが好きなので案外やってくれるじゃないかと思って頼みました。
音無が台湾に向かいましたが、定期便はありませんがチャーター便で実績があるので不可能では無いと言う事で頼みました。
大体、新幹線か飛行機があれば何でも出来ますね。
最終話
台湾新幹線との交流です。
3人の指導者を高先生と表記しましたが、台湾新幹線は略称で「台湾高鉄」「高鐵」と呼ばれているので共通して「高」が入っていて実際に苗字の少ない中華圏の中にもあるので入れました。
王、李、金などが多い印象ですね。
後輩と言われた、バリケン。台湾では鉄道に別名をつける文化があるようですね。
台湾の特急は自強号と言われますが、近年で代表的な物は太魯閣号と普悠瑪号ですかね。
後者は側面が白く、先頭が赤い事から赤いアヒル。ノバリケンと呼ばれる事から入れました。
本編&解説を最後読んで頂きありがとうございました。
気が早いですが続編について、もう大まかなテーマが決まっておりまして《参ノ式》は「地下鉄」をテーマとした作品にしたいと考えています。
長さとしては《弐ノ式》より長くなる予定なので、まだまだ試作段階ですし、出来るだけ丁寧な描写を心がけたいと言う事で本連載には間隔があいてしまうと思いますが出来るだけ形になるよう努めて参りますのでご理解とご協力をお願いします。
先行して、あらすじだけご紹介します。
《あらすじ》
舞台は秋津基地との戦闘後、翌日に遡る。
協会の屋上で朝日を眺める望海達とは裏腹に節子は執事を連れ、地下に存在する“下町”へと足を伸ばしていた。
九つの迷宮にはある“怪物”が眠っているという御伽話が真実だった事に驚く節子。彼女は再び運び屋の協力を仰ぐ。
と言う事で、次回作も気長にお待ち頂けると嬉しいです。