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鉄壁の運び屋 弐ノ式 ー二つの帝国と目覚めの花ー  作者: きつねうどん
最終章 名も無き運び屋
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最終話 後継者

【コード:700 承認完了 魔神仔(モシナ)を起動します】


「ここも、人魚(ジンユー)が多いネ。でも、これが有れば安心ヨ」


比良坂町では見慣れない、白と橙の民族衣装を身につけた彼女は福爾摩沙の運び屋だ。

この島の海岸線を沿うように運び屋業をしており、人魚とも面識が多い。

そんな中で肩身離さず身につけているのが、黄泉が制作した武器達だった。


「やっぱり、ここにいた。高先生が怒ってるよ。早く、平埔に行ってこいって」


仲間である女子生徒とその弟だろうか?姉に捕まり隠れるようにチラチラと其方を見る少年がいた。

彼らは同じ学校の出身であり、運び屋としての能力を持っている。

少人数教育で3人に1人の教師が付く、高は彼女達の担任であった。


「そんなのバリケンに頼めば良いんだヨ。彼だって立派な運び屋、(わたし)は我の仕事で忙しいの」


「また後輩に変なあだ名付けて。今回はそう言う訳にも行かないの。比良坂町からのお客様なんだから。音無さんって方がいらっしゃってるの。特別なお仕事なんですって」


“比良坂町”という単語に彼女は自分の持っていた武器と目の前に仲間を交互に見やる。


「本当!?会いたい!会いたい!沢山、お話聞きたいヨ!我、比良坂町大好き!」


福爾摩沙という地域は歴史的に様々な国の支配を受けており、今尚影響されながら人々は日々の暮らしを営んでいる。

運び屋達も例外なく、育成校では沢山の国籍を持つ先生のもと指導を受けており、彼女達も比良坂町は勿論の事。圭太やティムとも縁のあるメトロポリテーヌやその隣国などからの教師の指導を受けながら実戦的に運び屋業を営んでいる。

そんな背景もあってか、比較的此方に友好的に接してくれる地域でもあるだろう。


平埔に3人で向かうと握手をする音無と高がいた。


「こらっ!来客が来る前にお出迎えしろとあれ程言ったのに」


「お気遣いなく。君達がここの運び屋かな?やっぱり異国の運び屋を見るのは新鮮と言うか、不思議な感じがするな」


「そうでしょ!そうでしょ!ほら、高先生もそんなに怖い顔しない。スマイル、スマイル!ところで、お兄さんは何しに来たの?お仕事?」


その言葉に音無はメモを確認しながら彼女達をチラッと見ているようだ。


「ねぇ、君達。月下美人を使ったスープの作り方って知ってる?今、比良坂町の運び屋が急に倒れてピンチなんだ。俺達も彼方さんも。だけど、目を覚ました人達が揃って夢の中でそれを食べたって言うんだ」


「確かに此方で良く食べます。薬用としても使われるので、風邪を引いた時に良く妈妈(マーマ)が作ってくれました」


「運び屋さん、皆んな風邪引いてるの?」


その少年の言葉に音無は迷いながらも頷く。

その言葉に少年少女は目を泳がせた。


「ねぇ、我達に手伝わせて!高先生!良いよね!いつも、お世話になってるのにこう言う時だけ都合良く見放すなんて我達には出来ないヨ。助けてもらったんだから助けに行かないと!」


「お前達ならそう言ってくれると思ってたよ。音無さん、我達を比良坂町に連れてってもらえますか?必ずやお力になって見せます」


「此方としてもありがたい限りです。では直ぐにご案内します」


それと同時刻、協会前に送られた大量の月下美人に望海達は驚愕の表情を浮かべていた。


「凄いですね。どなたですか?こんなに沢山」


「全斎さんがね、わざわざメクヒトリまで行って採って来てくださったんですって。突然、お花を贈りたい気分になったそうよ」


「そうか、贈りたいならしょうがないね。うん。だとしても、やり過ぎだと思うけど。ほぼ、地球の裏側じゃん」


光莉が唖然とする側で、更に異変が起こった。

此方に元気良く手を振る異国の運び屋達がいる。

しかし、初対面とは言え望海も光莉も何処か懐かしさを覚えていた。


你好(ニーハオ)!会えて嬉しいヨ!我達の仲間!お友達!」


「光莉、見つける事が出来ましたね。“名の無い運び屋”を」


「うん。野師屋様の言ってた事、本当だったんだ。凄い懐かしい感じがする。なんでだろう、初めて会うのにね」


そう言いながら、望海と光莉は其方に手を振っていた。


「...ん」


「玉ちゃん、目が覚めた!良かった!やっぱり、これで合ってたんだね」


それぞれ、口や無理そうな患者は注射から月下美人の成分を入れ治療にあたった。

虚ろながらも児玉は目を覚まし、心配そうに見守る光莉と望海を見ていた。


「お前達。そうか...戻って来たんだな。俺もお前達も」


そう言うと2人はしっかりとした仕草で頷いた。


「私達は夢の中で月下美人のスープを飲んだんです。そしたらいち早く目を覚ましまして。皆さんの力も借りて、何とか全員分用意する事が出来ました。異国の運び屋さんにも来て頂いたんですよ」


「それは大層な事だな。後でお礼と歓迎会をしないと。そうだ、2人に話したい事があるんだ。疑問に思っている事があってな」


そのあと、児玉は帝国の帳であるカーテンについて話したのだが2人は勿論の事。颯も首を傾げていた。

しかし、そんな中で知っている人物がいた。

そう、海の向こうにいる圭太だった。

その意味をその夜の国際電話で知る事になる。


「あぁ、昔。王国の偉い人が言ってたんだ。女王様じゃないよ?政治家がね。多分、比喩表現が具現化した物なんじゃないかな?今もやっぱり、戦争はないにしても関係性が上手く行っていない国同士もあるでしょ?主張だって異なっていたそんな関係を“カーテン”で表現したんだ」


「壁ように断絶されてないにしても、仕切られてして別れているという事ですよね。圭太、ありがとうございます。勉強になりました」


「本当は直ぐにでも姉貴の見舞いに行きたかったんだけどね。僕の事を必要としてくれる人がいて。今は比良坂町よりコッチの方が恋しいんだ。ごめんね、姉貴」


「いいえ、謝らないで下さい。それで良いんですよ。圭太、貴方は望海の弟ではありません。東圭太、その人なんです。貴方は貴方を大切にしてくれる人の元にいてあげて下さい」


「姉貴ならそう言ってくれると思ってた。まだまだ、僕の所も姉貴の所も不安定で世界平和なんて綺麗事は言えないけど。でも、今回みたいに国を超えて助けてくれる人達がいる。そう思えるだけで一つの平和になり得るんじゃないかな」


「勿論です。1人では成し得ない事も沢山あります。私だってそうです。そんな中で皆と協力して今と未来がある。全部、繋がっている。過去も、今も、未来も。...あぁ、そう言う事だったんですね。貴方が言いたかったのは」


「どうしたの、姉貴?」


「いいえ、其方は今午後過ぎでしたっけ?では、good afternoon」


「うん、good afternoon.良い旅を、望海」

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