第壱話 奇病
本シリーズ、他作品から来ていただいた皆様ありがとうございます。初めての方もありがとうございます。
懲りずに、鉄分を過剰摂取した変態が帰って参りました。
遅れての挨拶になりますが、本年も宜しくお願いします。
「いやぁ、まさかこんな所で運び屋さん達に会えるとは思いませんでしたよ。しかも、旭さんにお願い出来るなんて。光栄です」
依頼人を角筈から別の場所へと届ける為、旭は微笑みながらその言葉を聞いていた。
「俺達としても、ようやくと言った所かな。場所は和田の方で間違いないですか?」
「はい、よろしくお願いします」
そしてまた、依頼人の手を取ると一瞬にして姿をくらませた。
あの一連の騒動から半年後、運び屋達は広げた行動範囲を含め業務に当たっていた。
そのネットワークは凄まじく、壁が取り除かれ、人口も潤いを見せれば見せる程に彼らは多忙となって行った。
いつしか比良坂町は急成長を遂げた、メガロシティなどと話題になっていた。
旭達、3人も同じく多忙ながらも充実した日々を送っていたある時、異変が起きた。
「旭、明日なんだが。緊急会議があるらしくてな、同行してもらえないか?」
仕事でもプライベートでも相棒である朱鷺田にそう言われ、旭は顔を顰めた。
「会議は不毛だ。折角、長年の夢が叶ってこれからだって言う時に。誰かが代表して出ていれば問題ないだろう?俺は現場重視の人間なんだよ」
「旭の気持ちは分かるが、今回はそうも言っていられないんだ。黄泉先生や愛が、今回の会議を主催者なんだ。あの“噂話”本当かもしれないぞ」
角筈は夜間、煌びやかなネオン街として存在しているがその分治安も悪く。彼らの難点でもあった。
いつも、映画館側を溜まり場とする少年少女達からある噂を聞いたのだ。
“赤い血を持つ者だけが罹る奇病が存在する。罹った者は夢の中で別の存在へと作り変えられる”と。
「俺は信じないぞ。何処から出てきた噂なのかは知らないが、それに踊らされて何も出来なかったら本末転倒だ。会議の内容は終わった後、屋上で聞く。鞠理にもそう伝えておくよ」
「分かった。だけど、気をつけた方がいい。ようやく、平和を取り戻せたとは言えまだまだ不安要素が残るのがこの比良坂町という町だ。町長の息子として、俺はお前達もそうだけど仲間や町民を守る義務があると思ってる」
「トッキーは立派になったな。流石、俺の相棒だ。さて、明日はどうなる事やら」
それと同時刻、望海達の方でも異変が起きていた。
“達”と言うより、望海本人と言った方がいいだろうか?
「光莉、ティッシュありますか?鼻水が止まらなくて」
「ちょっと!望海、風邪引いたんじゃないの!?まぁ、最近忙しいから体調崩すのも無理ないか。圭太君も向こうで頑張ってるし、看病出来る人もいないしね。玉ちゃん、ちょっと望海を家に送っていくよ。じゃあ、また明日ね。明日、大事な会議だしさ。私も体調整えないと」
「凄い勢いで人口が増えたからな。希輝達とも仕事分担出来るとは言え、若手に無理はさせられないし。俺達の方が知名度もあるからな。特に望海は運び屋の顔みたいな所もあるし。ちょっと、待っててくれ。こう言う時こそ、Dr.黄泉の出番だろう」
そのあと、光莉に介抱されながら望海は帰宅した。
黄泉も数分後自宅を訪問し、彼女の診察をした。
「珍しいね。望海君が風邪を引くなんて」
「面目ないです。でも、最近運び屋の中でも体調崩されてる方いますよね。それに最近、中心街である噂を耳にしまして」
「やはり君達の所にも届いていたか。赤い血の人間のみが罹る奇病。僕も事例を何個か見てきたんだが、この僕ですら対処に苦しむ程の難病でね。患者が植物状態なのか寝たまま動かないんだ」
その言葉に望海もそうだが側にいた光莉も背筋を凍らせる。
「それって、明日会議で話す内容だよね。...あのさ、冗談だと思って聞き流してもらって構わないんだけど。最近夢にね望海が出てくるの。それで何故か私達が姉妹みたいに仲良く一緒に暮らしてるんだ」
「!?」
その言葉に驚いたのは何故か黄泉ではなく、望海だった。
「光莉もなんですか?実は私もそうなんです。何故か深夜に運び屋の仕事をしていて。誰かいるんですよ。私の尊敬する人が、私達のリーダーが」
その光景に黄泉は顔を珍しく引き攣らせた。
「2人で同じ夢を見てるという事か。そう言うのをシンクロニティと言うんだが。偶然か、またまた必然か?」
その言葉に2人は目を合わせ、顔を真っ青にした。
「...いいえ、違うんです。2人だけじゃないんです。旭さんも同じように出てくるんです。本人は偶然だと訝しいんでいましたけど。私は偶然に思えません」
「怖いよね。なんか、夢の中でもう1人の自分が生きてるんだ。そして、新しい関係を作って暮らしてる。でもさ、望海も分かってくれると思うけど何処か“懐かしい”ようなそんな感じがするんだよね」
「分かります。前世なんて今まで信じた事もなかったですけど、そう思うぐらいアレは“昔の自分”じゃないかって。そう思わせてくれるぐらいには心地良い夢なんです」
「成る程、真相心理の奥底にある“もう1人の自分”か。確かに僕達運び屋は異能力者だ。そのルーツも謎に包まれている。この奇病はそれを突いてくるような存在という事か。だとすればそれは、病というより自分との戦いになるだろう」
その翌日、望海は体調が中々戻らず会議に欠席する事になった。
運び屋の顔である彼女が仕方ないとは言え、欠席する事は異常事態の予兆と言っても差し支えないだろう。
その会議の最中、とある人物の無線機が鳴った。
「朱鷺田、お前のじゃないか?旭か谷川なのか分からないけど」
近くにいた山岸にそう言われ、朱鷺田は慌てて席を外すと顔を真っ青にしながらも大声でこう言った。
「旭が屋上で倒れた!黄泉先生!愛!俺と一緒に来てくれ!」
その言葉に2人は顔を真っ青にしながらも朱鷺田についていくようだ。
「皆さん、落ち着いてください。イレギュラーな事態ですが、お静かに。まだ会議は終わっていません」
そんな中で1人残された初嶺は皆を落ち着かせようと、残された人達を席へと戻した。
しかし、とある人物もまた身体に異変をきたしていた。
「旭!ねぇ、急にどうしちゃったの!どうしよう、意識がないよ!」
谷川が彼を抱き抱え、脈などを測るが次第に弱くなっているのを感じる。
そのあと朱鷺田達も駆けつけると皆、目を見開き黄泉と愛は治療に当たる。
側で見ていた朱鷺田は今にも泣き崩れそうになっていた。
「旭!どうして!急に倒れるなんて可笑しいだろ!なぁ、お願いだよ!目を覚ましてくれ!」
それと同じく会議室でも異変が起きていた。
光莉が急に椅子から倒れ、顔を真っ青にし意識がない。
児玉がなんとか、倒れそうになる光莉を抱き抱えるもののこの異常事態に手は勿論、身体を震わせていた。
「...嘘だろ。おい!おい、光莉!どうなってるんだ!」
「...や」
その時だった、旭も光莉も同じタイミングで目を開けそれぞれ朱鷺田と児玉の胸倉を掴むと訴えるようにこう言った。
「「野師屋様は何処だ!頭領であるあのお方は何処にいる!」」
そのあと、自宅にいた望海も同じく床に就き涙を流しながらこう言った。
「....野師屋亜門様。私達の頭領。崇高なる存在。あのお方は私達の太陽」だと。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
続編について、色々な案があって。特急について先代「かがやき」とか「はやぶさ」の要素を入れたりとかしてて、新幹線ネタも尽きてきたので今度はそっちにシフトしようと思ったんですが。そうすると全部新キャラみたいな扱いになるのでそれは作者に取ってはかなりの負担になるのでだったら、新幹線の中に特急とか急行として名前があったキャラがいるんだからそれで一回やってみようと言う事で異世界転生に近いような夢の中での出来事として今後描写させて頂きたいと思っていますのでよろしくお願いします。