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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻四
94/105

子供たちの成長

※この段あたりから、物語の時間経過がちょっと「あらら?」なことになってきます。故大納言の服喪明けの描写はまだありません。なのに、道頼の太郎君が十二歳になったと書かれているのです。

 姫君と父親との再会(太郎君三歳)から法華八講まで、法華八講から七十の賀まで、七十の賀から父親の死まで、記述はないのですが、それぞれ数年が経過していたと考えざるを得ません。

 千年前の作者さん、ちょっと、はちゃめちゃすぎ。編集者が怠慢なのか? 校正の責任者、出てこい!



●太郎君と二郎君


 左大臣道頼の太郎君(長男)は十二歳※(正しくは十歳)になり、しっかりしてきたので、道頼は殿上童てんじょうわらわとして春宮とうぐう※に仕えさせることにしました。

 太郎君は賢くて性格もすばらしいのです。まだ年若い帝は、管弦の遊びの際にはいつも太郎君をそばへ呼んで、かわいがります。


しょうを吹いてみるかい?」

「吹いてみとうございますが、できますでしょうか?」

「教えてあげよう」

「もったいのうございます」

「ははは。そんなにかしこまらなくてもいいよ」


 祖父の太政大臣の養子となっている二郎君(道頼の次男)は、九歳です。兄の太郎君が童殿上わらわてんじょうをしていると聞いて、うらやましくてなりません。


「お祖父さま、まろも参内しとうございます」

「おお、そうであったか! その気があるなら、もっと早く言ってくれたらよかったのに。私も迂闊であった。太郎君ばかり帝と春宮のおぼえめでたいというのでは、不公平であるな」


 孫であり養子である二郎君がかわいくてならない太政大臣は、早速、二郎君を参内させます。


 父親である左大臣道頼は、いかがなものか、と思います。

「童殿上には、あれはまだ幼すぎると思いますが」

 太郎君と二郎君は年子ですが、太郎君は正月生まれ、二郎君は翌年の秋生まれなので、一歳六か月~八か月ほど離れているはずですね。

「そんなことはない。ウチの二郎は太郎君以上に聡明であるぞ。兄より優っている弟ぞ」

 道頼、苦笑します。自分の子を祖父が溺愛してくれるのです。嬉しくないはずはありません。


 太政大臣は、孫である帝に、このように願い上げます。

「ここにおります二郎は、このジイジめが、かわいくてならんと思っている子です(これなむ、翁の、限りなくかなしとおぼえはべる)。帝もお目をおかけください。太郎君にもまして、ご寵愛ください」


 さらに、太政大臣はこんなことまで思いついちゃうのでした。

「二郎は、将来、官職に就けさせても、太郎君以上に務めるだろうて。もう何事につけても、この子が太郎君でよいではないか。そうだ! この子を弟太郎おとたろうと呼ぶことにしよう!」


※太郎君(長男)は十二歳――あきらかに誤りで、十歳でしょう。後段に出てくる四の君と面白の駒とのあいだの女の子が十一歳で、太郎君は女の子より一歳下だったはずです。十歳としても、故大納言の喪が明ける話はこの後に出てくるので、大納言の死の直前に九歳くらいになっていたことになります。やはり、落窪姫と父親との再会から父親の死まで、数年が経過していたと考えるべきですね。


※春宮――今上の弟。こちらも道頼の甥。太郎君と二郎君は今上・春宮とは従兄弟いとこどうしになります。


 帝、太政大臣、左大臣、全員が身内同士です。祖父、孫、叔父、甥といったファミリーの世界なのですね。帝の前で太政大臣が「翁」なんて自称しちゃうんです。藤原兼家や道長も、そんなふうだったのかなぁ、なんて想像がふくらみますね。『落窪物語』は()()()()()()ホームドラマです。



●いつのまにか、第五子誕生!


 太郎君、二郎君(弟太郎クン)の下に女の子がいましたね。八歳になりました。お約束どおりに超絶かわいい姫君です。左大臣道頼と北の方(姫君)は、この姫君を大切に大切に育てています。将来の入内を見据えているのですね。


 その姫君のすぐ下も女の子です。六歳です。

 さらに、四歳の男の子がいます。第五子になりますが、あれ、いつ生まれたの??? 

 そして、なんとなんと、北の方(姫君)は第六子の出産を控えているのでした。おめでたいことではありますね。 


 道頼はあいかわらず、母体の健康やら胎教やらに神経をつかっています。北の方(姫君)がそばにいれば、抱きしめてキスして髪を愛撫せずにはいられません。

「愛しているなんて台詞は、虚しい? でも、言わずにいられないんだ。愛しているよ。私の大切な人……!」


 整理しておきましょう。道頼と北の方(姫君)のあいだには――

 長男 十歳(十二歳と書いてありますが)

 次男 九歳

 長女 八歳

 次女 六歳

 三男 四歳

 ?? もうすぐ誕生

 


●太政大臣の六十の賀


 太政大臣は六十歳を迎えます。

 道頼は父親の六十の賀を盛大に執り行います。太郎君と二郎君(弟太郎クン)が童舞※を披露します。太政大臣、ボロ泣きします。


 算賀にかぎらず、執り行われるべきイベントは、すべて時期を失することなく執り行われます。経費たるや莫大なものです。贅沢が過ぎるのではないか、と批判されるでしょうか?

 いいえ。そんなことはなく、左大臣は世間の徳望を弥増いやまし集めるばかりなのでした(かくすべきことは、過ごさず、いかめめしうしたまへど、御徳はいやまさりなり)。


※ふたたび、算賀での童舞のエピソードが出てきましたね。

 兄弟による童舞というと、藤原道長の嫡男(田鶴君たづぎみ=頼通、母源倫子)と次男(頼宗=巌君いわぎみ、母源明子)が、道長の姉・東三条院詮子の算賀の折に舞った話が有名ですね。一条天皇(詮子の子、道長の甥)も来臨しての祝宴でのことでした。


 田鶴君は蘭陵王を上手に舞います。そして、巌君は納曾利をさらに巧く舞ったのです。一条天皇は、その場で、巌君の舞の師匠である多好茂おおのよししげに従五位の栄誉を与えます。


 すると、道長は不機嫌そうに席を立ってしまいます。子供みたいに拗ねて、宴席へ戻ろうとしません。道長の甥っ子である一条天皇は、「あ、まずったかな」と感じたことでしょう。


 道長の行動は幼稚にも見えますが、長子頼通はいずれ左大臣位(太政大臣はほぼ名誉職なので、政治的には実質的トップ)に就くことが既定路線であり、異母弟の頼宗は常に下役と決まっているのです。道長がそう決めたのです。厳然としてある生まれながらの身分差を、たとえ座を白けさせたとしても、世間に(わけても帝に)はっきりと認知させておきたい、という考えがあったかと思います。最高権力を握る男のロジックは単純で、冷徹なものですね。


 来年のNHKの大河ドラマで、兼家の六十の賀か詮子の四十の賀か、どちらかが映像化されないかしら、と楽しみにしているのですが。



●故大納言の喪が明ける


 故大納言の喪が明けます。左大臣の北の方(姫君)は、この一年間身にまとっていた鈍色にびいろの喪服を脱ぎます(服脱ぶくぬぎ=喪明け)。


 第六子は生まれたのでしょうか?


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