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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻一
5/105

姫君、優等生モードのスイッチを入れる

●三の君の婿取り


 そうこうするうちに、三の君(三女)も裳着もぎ(女子の成人式)を済ませ、婿さんを迎えます。

 

 婿さんは蔵人くろうどの少将という青年貴族です。順調に出世すると、頭中将とうのちゅうじょう(近衛府の中将でなおかつ蔵人くろうどとう)に任命されるだろうポジションにいるのです。

 

 ちなみに、蔵人の頭はみかどの秘書です。無事勤め上げると、次に参議というポスト、つまり公卿の仲間入りが約束されています。

 

 あたし、出世まちがいなしのヤングエリートの妻よ。ルンルン♪

 三の君は舞い上がります。


 一方、落窪姫は、もうほとんど死にそうになっています。新しい婿君が通ってくるようになって、裁縫仕事の量がまたも増えてしまったのです。



後見うしろみが「あこぎ」と呼ばれるようになる 


 さらに、困った事態が生じます。

 女童の後見は髪が長く、なかなかの器量よしですが、見た目のいい侍女はどこでもひっぱりだこなのです。三の君が、後見を自分専属のようにして、手放しません。


 忠義者の後見うしろみはそれが辛いのでした。落窪姫のママンが亡くなった当時のことを振り返り、涙ながらに訴えます。

「姫君にずっとお仕えしようと思って、親しい人がうちで働かないかと言ってくれたけれど、行かなかったんです。姫君以外の誰にもお仕えしたくありません。三の君にお仕えするのは不本意なんです。マックス不本意なんです。悲しいです。ぐすん、ぐすん。あ~鼻水出てきちゃう」

 

 ここで、落窪姫の優等生モードのスイッチが入ります。

 落窪姫、澄んだ瞳で諭します。

「ドントセイザット(そんなことを言うものじゃないわ)。一つ屋根の下、誰にお仕えしても同じでしょう。私は何もしてあげられなくて、あなたがいつもみすぼらしい恰好をしているのが心苦しかったの。だから、三の君にお仕えできるようになって、よかったわ。嬉しく思っているのよ」

 

 けれども後見は、三の君に呼ばれないかぎり、大好きなご主人さまである落窪姫のそばを離れません。二人でガールズトークに花を咲かせます。

 

 すると、ここでまた、うるさい継母が邪魔をします。

「ちょいと。後見は三の君付きになったはず。落窪、おまえがいまだにその女童を独占しているのは、どういうことなのかえ? 後見という呼び名が気に入らないね。落窪の後見ということじゃないか。呼び名を変えよう。そこの女童、おまえは今日からあこぎ。ただの、あこぎ。いいね? 返事をなさい。返事をっ!」

「は……はい……」

 こうして、後見はあこぎとなったのでした。



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