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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻一
16/105

叔母さんの心づくし

●叔母さんへのお願いリスト


 道頼が帰っていったあと、姫君もお粥を口にして、まったりするのでした。

 あこぎは、ゆっくりしていられません。

 今夜の支度について、いそがしく考えをめぐらします。

 

 いよいよ今夜ね。

 三夜目よ。

 手元の「叔母さんへのお願いリスト」にチェックマークを入れていくあこぎなのでした。

 ☑三日夜餅の用意をお願いする

 ☑果物もお願いする

 ☑几帳拝借の延長をお願いする

 ☑手水セット(角盥(つのだらい)半挿(はんぞう))を貸してもらう

 三の君はもうすぐ石山詣でから帰ってきます。このまま三の君のセットをばっくれて使いつづけるわけにはいきません。


 あこぎはまた叔母さんに文をしたためます。

『お餅は、ちょっと妙な理由で入用になりました。理由は聞かないでくださいませ。あれこれお願いばかりで心苦しいのですが……』


 そうこうするうちに、道頼からの後朝(きぬぎぬ)の文が、姫君のもとへ届きます。

『あなたが鏡をのぞいたときに映る影。その影に私はなりたいのです。そうなれば、いつもあなたのそばにいられるでしょう?』――てなことが和歌に詠まれています。

 

 姫君の返しは、

『鏡に映る影なんて、頼りなさすぎですわ。あなたのお心も、そのようにはかないものなのでしょうか?』

 この後で起きる、鏡箱事件の伏線ですね。



●叔母さんの心づくし


 和泉守の使者が、叔母さんの文を届けてきます。

『私のかわいい姪っこちゃん。私には娘がいないし、亡き姉上さまの形見として、あなたを養女に迎えたいと思っていたのに、こちらへは来てくれないのですね。残念だわ。ご依頼の品々はちゃんと手配しますよ。ひょっとして、あなたが婿取りなさるのかしら? うふふ。いまどきの受領は超リッチともてはやされているようだけど、実を言うとね、それ、本当なの。何でも頼ってちょうだいね』


 ほどなく、りっぱな道具類と精白した米や果物などが届きます。

 今日も雨です。

 かなり激しく降りはじめました。

 

 お餅はどうなっちゃったのかしら?

 この雨だから、もうお使者は来ないのかしら……?

 あこぎが、受け取った果物や栗の皮をむきながら気をもんでいると、和泉守邸から使いの男がやってきます。男は供の者に大きな傘をさしかけさせ、りっぱな櫃を抱えています。

 感謝感激!!!

 思わず、スキップしてしまうあこぎです。

 

 櫃には、ふつうのお餅だけでなく草餅まで、いくつもきれいに並べて詰めてあるのでした。

 叔母さんの文が添えてあります。

『大急ぎで作らせたのよ。満足してもらえるかしら? 私の気持ちがイマイチじゅうぶんに伝えられない感じがして、不満なんだけど』


 和泉守邸からの使いの男は、

「雨がひどくなってきましたので――」

 と帰りを急ごうとします。

「待って、待って。一杯、飲んでいってくださいな」

 あこぎは使者をもてなします。

 

 この場面、江戸末期から明治初期の物語のようですね、なんとなく。樋口一葉が書きそうな人情味の世界という感じがします。

 

 あこぎはいつもの達筆で、叔母への礼状をしたためるのでした。

『感謝してもし切れません』

 ひとつの達成感があこぎを満たします。


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