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コーヒー缶に込めて。  作者: ココノカ カンナ
2/2

これを一目惚れと呼ばずになんと呼べばいいのだろう(1)

「あのぅ…す、すみません……と、隣…いいですか?」

 「隣いいですか?」だなんて。カップルか?どんな距離感なんだよ。なら初対面?ラブコメじゃあるまいし…そんな状況あるわけないだろ。まあどうでもいいか。そんなくだらないことを考えながらツイッターを素早くスクロールしていく。

「このアニメ2期やるのかぁ。ほんと見たいアニメが増えていく一方だな…」

「あ、あの!聞いてるんですか!と、隣いいですかって、、き、聞いてるんですけど」

 「またブツブツと呟いてしまった…キモすぎる…」などと危うく自己嫌悪に陥りそうになっていると、先ほどの彼女が不満そうに声を上げた。自分の声にびっくりしたのか、後半からはさっきの調子に戻ってしまっている。

「どんな奴なんだ…?」

 スマホから顔をあげ、声の主の方へ視線を向ける。意外にも声の主は瞬時に見つかった。

「や、やっと顔を上げてくれましたか、、えっと、隣、いいですか?」

 雪のような人。はらはらとこの世に舞い降り、あたりを白で彩り、些細なきっかけで溶け、終いには一切の痕跡を残さずこの世から消えていく、雪のような存在。それが僕の彼女に対する第一印象だった。

 降ればその景色は老若男女問わず愛される。

 積もれば平凡な風景は一変して映画のワンシーン。

 さながらそれは神からの祝福。

 初雪に忘れ雪。新雪に宿雪。襖雪に斑雪。

 浅雪に深雪。銀花に六華。不香の花に雪の花。


 ——ああ、この少女は神に愛されている。


 そう直感的に感じてしまうほどに、彼女は美しかった。

「……もういいです!隣、座りますね!」

「………は?他にも席が空いてるんだし、そっち座ればいいんじゃないですかね?」

 思ったよりも語気が強くなってしまったが、まあこれでこの少女との会話は終わるだろう。そしてまた各々の人生を歩み始めるのだ。僕はスマホに視点を戻し、再びツイッターを漁り始めた。


 結論から言うと、僕の考えは甘かったと言わざるをえなかった。

 10分、30分、1時間。どれだけ時間が経っても彼女は一向に動こうとはしなかった。


 最初の会話から3、40分ほど経った頃。初めて僕は彼女に話しかけた。

「そうやって人の休憩時間を邪魔して。何が目的なんですか?」

「面白そうじゃないですか」

「………。平凡な僕と雪のように綺麗な君。周りから視線を感じるんですが。そろそろ…」

「まあ!雪のように綺麗だなんて!すごく嬉しい!」

 彼女はパァーッと笑った。少し見惚れてしまった。だがそれほどまでに綺麗だった。

 例えるならば、朝日に照らされキラキラと輝く雪のよう。

 なんだか負けたような気がして、イヤホンを付けYouTubeを開いた。推しが配信していたのでその勇姿を見届けることにした。

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