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雪と君
しんしんと、雪が降ったのを覚えている。
積もりこそしなかったが、それはそれは、「絶景」と呼ぶに値する景色だった。
一度きりの人生において、こんな感動は何度味わえるものなのだろうと、そう思った。
ふと、思った。
——記憶が完全に消えれば、僕はこの感動を何度も味わえるのだろうか?
「ねえねえ」と、君が囁いたのを覚えている。
記憶は曖昧だが、いつも通り、「くだらない」と呼ぶのが妥当な会話だった。
一度きりの人生において、こんな会話は何度も味わえるものなのだろうと、そう思った。
ふと、思った。
——記憶が完全に残れば、君はその苦痛を何度も味わずに済んだのだろうか?