狭い世界で、羽ばたき始める。
いよいよ全国大会。もう少しで完結予定です。
「なー扉ー、決勝のお前の動きえぐかったな。あれなんだ?本気出したのか?」
F県宿泊最終日、ホテルにて三瀬嶋が問いかける。
「あれは、実は僕にもよく分かりません。本気を出したことは事実なのですが…」
「詳しく聞かせてくれよ。」
少し考えたようだったが、扉は口を開いた。
「あの時、刃間極刀にはだいぶ追い詰められてた気がします。所謂ピンチに直面した時、脳にぼやけた音声が流れました。」
「ほう、…?まあいい、それで?」
三瀬嶋はあまり理解出来ていないようだったが、話は続く。
「遠い先祖である「儀王銀」様と「源義経」様の会話が聞こえました。どうやら儀王流が生み出され、「奥義」をどうするかについて話しているようでした。」
「???ん?…………???ん?」
全く追い付けていない三瀬嶋に気付かず、扉は話し続ける。
「そして奥義が生み出されました。その名は「残旭」。名前の由来は光が追い付けてなかったからだそうです。」
「…………」
半ば死にかかっている三瀬嶋には一切気付かず、話し続ける。
「何せ情報が音だけでしたから、イメージに凄く苦労しました。そして僕は限りある情報の中から、「人間として、限界を超える」という結論に辿り着きました。その結果があれです。」
「」
話終わり、三瀬嶋の異変に漸く気付く。
「先輩?」
肩を揺する。
「先輩!先輩!」
ユサユサ
「先輩!先輩!」
ユサユサ
「センパッ」
「プハアッ!ん?なんだ?どうした?え?なんだ?」
「意識を感じませんでしたので。」
三瀬嶋は何も無かったことを装って白ける。
「話は聞いてたぞ。な、アレだろ?な。うん。ね!」
「理解出来ないことを前提として話していたので別にいいですよ。僕だって理解出来てません。」
「そ、そうか。全国は来月だったか?」
「ええ。西日本には四叡刀が二人いますから、なかなか厳しい戦いになりそうです。」
やはり三瀬嶋はどこか腑に落ちないような顔をしている。
「北堂家と玄青家だったな。いや、待て待て、んん?今年は四叡刀が集結してると言う事になるな。そんなにうまく行くのか?」
「確かに、今年は四叡刀が全て集まっていると聞きます。そうですね。不思議な年です。特に北堂家は西日本最難関と謳われています。ルーツは東日本だそうですが、西日本にいてくれて良かったです。当たる心配もしなくて良いので。」
時は十時。三瀬嶋に睡魔が襲う。
「ん…扉ぁ、もう寝ようぜぇ。あ、俺もうO大学入学決定してるからさ、応援行くよ。」
「開催地はたしかN県でしたね。」
「お、そんな遠くないな。電車乗ってくよ。寝よ。」
セミダブルベットに浴衣で寝転がる。
「ありがとうございます。大浴場で少し流してから僕も寝ます。」
もう寝てるようだ。
⬜︎
N県県立体育館。
全日本剣道大会当日。
「よし、頑張るか。」
新幹線の席を立つ。
荷物を棚から下ろして、新幹線から降りた。
「先輩、やっぱ来てないか。」
まあ良いや、とホームまで歩く。
…「ワッ!」
「うおっ、あ、来てくれたんですね。」
「おお、頑張れよ。見てるぞー、因みに暇がある奴らみんな来てるし、監督も来てるから、負けんなよ。」
「負けることについては、考えたことがないので。」
「まあ良いや、頑張れよ。」
すると、
「「「「「ガンバレーー!!」」」」」
振り返るとそこにはチームメイトと監督が立っていた。
「みんな、ありがとー!頑張るよー!
じゃ、先輩、ありがとうございます、頑張ってきます。」
⬜︎
一日目、予選大会。
一回戦、世建町高校との対戦。
儀王扉2本先取により勝ち。
試合時間はおよそ一分半。
二回戦、楼聰高校との対戦。
儀王扉2本先取により勝ち。
試合時間はおよそ一分半。
予選一位勝ち抜け。
「予選一位のヤツやばくね?見えないし、これ全国大会だよね?」
「てか世建町優勝候補なの知ってた?あれはえぐいわ。一回戦も二回戦もまさに余裕って感じ。」
二日目、本戦。
吼雀高校との対戦。
赤 儀王扉 白 玄青傭
いつも通り儀礼を済ませ、竹刀を構える。
「四叡刀か、傭さんは高校三年生。一年上だが、ここは最古家、負けるわけにはいかない。」
そして、玄青庸。
「来たか、儀王よ。見える、我の元にひざまづく未来が。来い、そして沈め。」
静かな号令が響いた。
「初め。」