遠い昔、始祖の記憶を受け継ぐ者。
ついに「奥義」習得へと、動きます。
儀王家秘伝、奥義。
今はもう、絶えた伝承だった。
明治以降の人間は、名も知らない儀王家の奥義。
その名をーーー
⬜︎
(奥義…?何故今、頭に浮かんだ?存在は知っていたが、内容については伝承が途絶えたはず。なのに何故、今私の頭に、鮮明に浮かんでくる?)
考えを巡らせながらも、構えは崩さない。
(さっきので分かった。刃間極刀は意図的に圧を俺にかけ、極端に守りを固くする事で俺の戦意喪失を狙っているんだ。しかし、気付いたところで奴の守りを崩せる訳でも無い。奥義とやらに頼るしか無いのか?)
そんなことを考えていると、脳内に「追憶」が流れた。
⬜︎
『すまぬ、少し良いか?儀王銀殿。』
『どうされた?源義経殿。』
『其方の我流剣術の技術は目を見張るものがある様に思う。そろそろ「奥義」を作っても良いのではなかろうか?』
『「奥義」、であるか。』
⬜︎
(なんだ?今のは。)
するとまた、「追憶」が流れた。
⬜︎
『これが、君の奥義か…愈々勝てる気がせんな。』
『名は、如何にせん。』
『まるで、残像ではなく、光がその場に残っていたように見えた。』
『では、これを「残旭」と名付けよう。』
⬜︎
奥義、その名をーー
「…残旭。」
(ただ、今のでは会話の音だけしか情報がない。「残旭」を再現すると言っても…ヒントがなければどうしようもない。)
「来ないのか?このまま膠着が続けば、俺らは反則でこの試合は無しだ。」
(ん?ちょっと待て。『光がその場に残っている様に見えた』?どういうことだ?光を超えたのか?光をも残像にしたのか?…は?そんなことできるのか?)
扉は頭をフルに回転させる。
(待て待て待て、確か人間というのは「全力のうち30%の力しか出せない」だったはずだ。これをもし、
100%の力を出せたとしたら、「残旭」を再現できるのではないか?)
そして、攻勢へと踏み出る。
グッ
ドシュッ!
「メェン!!」
⬜︎
時間が、止まった。
極刀を含めその場にいた全員は、扉を視認出来なかった。
そして、極刀は倒れた。
胴には大きなヒビと抉れが入っていた。
現場に居た人はのちに、こう言った。
「光がその場に残っているようだった。」、と。
⬜︎
(これが、「残旭」。)
口の端から血を流しながら、残旭を実感した。
(負担がエグいな。ああ、立ってらんねえ。)
しかし最後の力を振り絞り、立ち、残心をとる。
「一本!」
極刀が倒れ伏している中で、蹲踞して納刀、そして礼。
儀王扉、全日本大会出場決定。