former 火は目覚める。
そう簡単に無双はさせませんよ。
東日本大会個人決勝戦。
赤 儀王扉 対 白 刃間極刀
刃間極刀は祖父、そして父が共に範士であり、現時点10代剣士の中で最も範士に近いとされる。
剣道界には、四叡刀と呼ばれる剣道の名家が存在する。
歴史が古い順に、儀王家、北堂家、玄青家、刃間家である。
また例外的に天皇家も在籍するが、それはまた後の話としよう。
刃間家は明治時代と、四叡刀の中で最も歴史が浅いものの昔から剣道界隈に名を響かせてきた。
⬜︎
F県のホテルにて。
「刃間家の者ですか。これはまた、凄い人が相手になりましたね。」
「決勝は明日か?てかなんだ、ハザマって。」
寝転がりながら三瀬嶋が言う。
「知らないんですか?三瀬嶋先輩。四叡刀の一家ですよ。」
「シエイトウ?なんだよー難しいよー。」
「四叡刀と言うのは剣道の四大名家のことです。儀王家も在籍しています。」
「はーすげーな。お前レベルのやつが来るかもしれないんだろ?」
すると少し不安そうに扉がつぶやく。
「可能性は、あります。」
「謙虚なのか自信家なのかわかんねーよな、お前って。」
⬜︎
決勝戦当日。
(刃間極刀か。そういえば四叡刀と戦うのは今日が初めてだな。)
そして、入場。いつもの流れを済ませ、試合開始の合図がなる。
「初めッ!」
牽制から始める。
⬜︎
刃間極刀。
(儀王扉か、どれほどの腕前かな?噂によれば儀王史上最強と聞くが。)
カチャッカチャッ
竹刀を叩き合う。
(なかなか出ないな。どうした?びびっているのか?)
「メエエエエン!」
「メエエエエン!」
互いに打ち合うが、外す。
中央で構え直す。
牽制が、続く。
⬜︎
一方で、儀王扉。
(流石、四叡刀。全く隙がない。いつもの力技でも受けられてしまうだろう。)
構えは、同じに見える。
その隙の無さは、集中力に由来する。
並の人間はどのタイミングで攻撃に出るべきか、相手がどう出るのか、その他諸々悪く言えば「気を散らしている」。
しかしこの男、相手の動き一点に集中している。
故に、攻勢に出ることが、出来ない。
(一度、儀王閃を試してみるか。)
「メエエエエン!」
弧を描く様に刀を振り下ろす。
(いけぇっ!)
カチャアン!
竹刀で防がれてしまう。
「クッソ」
(どうすればいい?)
彼自身、こんなに時間のかかる試合は久しぶりである。
この試合、難しい。
⬜︎
(どうした?こんなモノなのか?最古の歴史を持つ儀王家は。)
「エエエエエン!」
「ヤアッ!」
バシッバシッ
一進一退の攻防が続く。一見すると激しい打ち合いだが、進展は無い。
(しかしそうは言っても、流石に一本は取らせてくれないな。)
もう一回!
「メエエン!」
バシッ
(外したかっ…!?)
バン!
突如側頭部に大きな衝撃。
「メエエン!」
バッ
赤旗が上がった。
(!?裏面か。クソッ!)
裏面とは側頭部に面を喰らわすことだが、
要するにカウンターの様なモノである。
(一歩上を行かれたな。)
⬜︎
(これは、今日はダメかもしれない。)
辛うじて一本取った扉だが、不安と違和感を感じていた。
(なんでだろう、勝てるのかこれは。
…待てよ?なんでこんなに自信が持てないんだ?確かに守りは硬いが、一本取れたじゃ無いか。)
深呼吸。身体中の悪い空気を入れ替える。
(自信を持て、勝てる、勝てる…)
「メエエン!」
カシャッ
「ヤアーッ!」
返される。
取り戻した自信は、空っぽの自信だった。
打開策は、未だ掴めていない。
(どうすれば良いんだっけ。…そうだ。)
面の奥で、口を緩める。極限状態で、記憶が目を覚ます。
(忘れていたよ。そうだ、そうだ。
…儀王家には奥義があったじゃ無いか。)
遠い昔のことを。