馬鹿四人の処罰
「いい加減にせんか!愚か者共!」
声を荒げた陛下は遠目でも分かるくらい怒り狂った表情を浮かべている。
「警備兵!そこの愚か者、四人を捕らえよ!」
待機していた警備兵達が茶番劇の登場人物達を次々に拘束していく。
「まずラザール!お前は婚約者以外の女性に懸想した挙句、婚約者に対して身勝手に権力を行使しようとした罪がある。よって半年間の謹慎後、除籍とする!」
半年間というのはラザールに与えられた挽回の機会でしょうね。反省するかしないか。それで彼の除籍後の運命が変わるでしょう。
彼に関してはどうでも良いです。
「次にジゼル!貴様は不特定多数の男性と肉体関係を持ちながらも第二王子であるラザールに言い寄り、このような事態を招いた!よって貴様は辺境送りとする!」
彼女が不特定多数の男性の関係を持っていたのは有名な話です。
陛下に知られているとは思っていなかったのでしょう。彼女と関係を持ったと思しき男性達は顔を青褪めさせていた。婚約者を蔑ろにしていた彼らにも近いうちに天罰が下るでしょう。
「ジゼル!どういう事だ!」
ラザールが悲痛の声を出す。
愛する人が他の男と寝ていたと聞かされて衝撃を受けたのだろう。顔を青褪めせて動揺が隠せていない。
「ラザール、黙れ!」
騒ぎ立てようとするラザール、そして言い訳を並べようとしたジゼルの口も塞がれる。
彼らの痴情の縺れは別にどうでも良いです。
「さて、エメリーヌ嬢。其方には悪い事をした。しかし、其方もラザール同様に不貞を働いておったのだな…。失望したぞ」
残念そうな表情をエメリーヌに向ける陛下。
彼女の事を気に入っていたらしいですからね。
顔を真っ青にさせたエメリーヌは俯き、服を握り締める。
私としては事情を聞きたい相手ですね。
「よってエメリーヌ嬢には平民としての追放を言い渡す」
あらあら、本当に追放になっちゃいましたね。
被害者だったのに一気に加害者ですから仕方ないですけど。
「ロイク、貴様はずっと婚約者を裏切っておったのだな。罰として貴様にも平民としての追放を言い渡す」
私としては一番話を聞きたい相手なのですけどね。
すぐに追放されると話を聞けないので困りものです。
「陛下!発言を許可して頂けますか?」
一歩前に出て陛下を見据える。
私を視界に入れた瞬間、眉を下げて申し訳なさそうな顔をされました。
「許可しよう」
「ありがとうございます」
膝を折り、頭を下げて礼をする。
ちらりと裏切り者を見た後で陛下に視線を移す。
「陛下、私は何も知らないのです。エメリーヌとロイクと話をする機会を与えてはもらえませんか?」
「許可しよう」
大きく頷いてくれた陛下に「ありがとうございます」とお礼を言って一歩下がる。
「その愚か者、四人を連れて行け!」
陛下の指示により四人が連れ出される。
ロイクが力なくこちらを見ていたが、わざと視線を合わせなかった。