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魔王クリエイター  作者: 百合姫
V章 侵掠
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85

赤髪のフォルフォー少年。

青髪のルービィ少年。


この2人は手始めに、サドラン帝国南部に急速に建設された迷宮都市にて設立された助成機関と言う名の迷宮ギルドと言う場所へ向かった。


この街の領主館よりも大きなそれは田舎者である彼らを圧倒する。


彼らは元々はエルルの住まう農業国家プラベリアの北に位置する大都市の一つの小さな商家に勤める子供であった。

いわゆるサラリーマン的な立ち位置の家庭の子供にあたる。

しかし、彼らは貧乏だった。


農業国家プラベリアは自らが食べる糧を自ら得られるために、他国に比べて食糧に困ることはまずない。

全国的な人口過多による食糧不足ゆえに作物が売れに売れる。

ゆえにプラベリアは豊かな国だ。しかし。

プラベリア全体は裕福でも、庶民の一人一人に目を向けると違う。

あくまでもプラベリアの農家が金持ちで、下手な貴族より力を持っているだけであり、他の職種の人間はさほど金持ちでない人間が大半なのである。


つまり。


貧乏なフォルフォー少年やルービィ少年は一攫千金を狙い、ダンジョンのある迷宮都市にやってきたわけである。

の割には100万円を道中の村に置いてきたりするあたり、フォルフォー少年は大物なのか、馬鹿なのか。

幼馴染で兄弟のように育ち、付き合わされているルービィ少年の苦労が窺えるというものである。


「おお、自動ドアじゃないか!」

「ばかっ、その程度で大騒ぎするなっ、田舎者丸出しで恥ずかしいだろっ」

「恥ずかしいも何も、田舎者なんだから恥ずかしがる必要はないだろ?

何を意味のわからないことを…」

「そのバカを見るかのような目をやめろ。よりにもよってフォルフォーにそんな目で見られたら僕は君を殴りたくなる」

「…お前って時折、やたらと血の気が多いよなぁ。吐血してくるか?」

「吐血?急に何を言い出すんだ?」


フォルフォー少年の言葉に首を傾げるルービィ少年。


「あん?知らないのか?ったくしゃーねーなぁー。ちしきじんの俺が教えてやるよ。血を抜くことを吐血って言うんだ。これでルービィも一つ賢くなったな!」

「それを言うなら瀉血しゃけつだ。難しい言葉を使おうとするなと昔から言ってるだろ?馬鹿が滲み出るんだから」

「そうだっけ?まあ、どっちでも意味は伝わるんだ。こまけぇことは良いんだよ。それよりも受付はあっちみたいだ」


伝わってないから、とボヤきながらルービィ少年は歩き出したフォルフォー少年の後をついていく。


迷宮ギルドは実に盛況な様子で複数ある受付は全て10数人の列が出来ていた。彼らは受付Aと書かれた場所に並ぶ。


「結構並ぶんだなぁ。だりぃ」

「もっとシャッキリしなよ。恥ずかしいなぁもう」

「うっせー。お前は昔から小言が煩くてダメだ。そんなんじゃモテねーぞ?」

「お生憎。僕は既に婚約済みだよ」

「はぁっ!?初耳なんですけどっ!?なんで!?いつ?!誰と!?つかっ、なんで言ってくれないのっ!?」

「隣の家に住むパ…」

「なんだ。パジィおばさんか。お前が熟女好きとは知らなかった」

「そんなわけないだろ!?その娘のパルパちゃんに決まっているじゃないか!!」

「はぁっ!?なんで!?近所で1番の器量良しなあの子が小言メガネのお前と付き合うんだよっ!?世の中狂ってるっ!?」

「小言メガネって、僕は眼鏡をしていないし、付き合っているんじゃなくて既に婚約、もとい結婚が決まっているし、僕の婚約者が誰であろうと、その程度のことで世の中が狂うはずないだろ?だから君は未だに婚約者は愚か、女の子と目を合わせるだけで挙動不審になるんだよ」

「ってめっ!ふざけんなよ!!俺だってなぁっ」


思わずとばかりに怒鳴り散らそうとしたフォルフォー少年に


「おい、ガキども。喧嘩なら外でやれ。さっきからうるせーぞ」

「あんっ?っと、…っすんません」

「申し訳ありません」


彼らの前で並んでいた男に注意され、謝る2人。


「それとな。赤髪のガキ。

迷宮都市があんだ。1発当てて故郷に凱旋すりゃあ、彼女の1人2人はすぐにできらあな」


とだけ言い残して、笑いながら受付へと向かう男。

いつの間にか、列はだいぶ進んでいた。


「そ、そうだった!俺は女の子にモテるためにこの街に来たんだった!!」

「いや違うよ。普通に金持ちになるためって事でやってきたんでしょ?」

「そこにアルファルファ、女の子にモテるためってのを付け足すのさ!」

「アルファルファ?プラスアルファって言いたいの?」

「お次の方、どうぞこちらへ」


なんて馬鹿話をしていたら順番が来たようである。

並んでいた人数の割には意外と待たされなかったようだ。


受付Aに座る人はこれまた綺麗な女性だった。


「あ、あの、お、おおぃぅれは、ふぉふぉふあふぉっ」


普段は滅多な事は気にしない図太い神経で生きているわりに女の子と話そうとすると途端に使い物にならなくなる赤髪のバカを押しのけて、ルービィ少年が代わりに応対する。


「彼はフォルフォー。僕はルービィと言います。迷宮に入りたくてやってきました」


あまりのフォルフォー少年の挙動不審っぷりにクスリと笑う受付嬢は身分証はありますか?と尋ねる。

迷宮で手に入るアイテムの悪用をできる限り防ぐために、迷宮に入るには迷宮ギルドで身分証を出して通行許可証を取らなくてはならなかった。

犯罪歴などが無いのかを調べたりするのである。


「魔科学武器で大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」


魔科学武器は魔法を使うための道具であるが、これも魔法という力を悪用されないように基本的には所持するのに個人情報が必要になる。

魔科学武器の型番を見て、それが正規の手段で売り出されている物である事がわかれば、身分証を提示して購入したということが分かるため、魔科学武器は簡単な身分保証に使える。

その後、迷宮ギルドの簡易的に規約などを聞いて手続きは終わった。


「これにて手続きは終了です。

迷宮ギルドへようこそ。当局は貴方達を歓迎致します。命の危険があることを忘れずに、頑張ってくださいね?応援してます」


にっこり。


フォルフォー少年は去り際の受付嬢の笑顔にノックダウン。

受付を離れたがらないフォルフォーを引きずって去るルービィ少年はため息を吐きながら、迷宮ギルドを後にした。

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