後輩を送る道
「じゃあねー玲奈ー」
「うん! またね」
時間になり小林玲奈は帰っていった。
「じゃあ行きましょうか! 先輩」
「ああ……」
なぜか俺が送ることになってしまったが。
もうとことんついていない気がする。なんで俺がこいつなんかを送っているかというと……。
「最下位は一位の人の言うことを一つなんでも聞くと言うのをしてみません?」
トランプで色々遊び最後の一回位かと思っていた頃に、小林玲奈にそう言われた。
「なんだそれ。俺はパスするよ」
「いいんですか? 本当になんでもですよ」
「私はやるぞ! 楽そうだし」
芽衣は何も考えていないだろうし、まぁ良い。それよりなんでもと言っていたよな。
これに勝てば近づくなと言えるんじゃないか。
そう思った俺はその勝負を受けることにした。
「やっぱり気が変わった。やるよ」
「じゃあ決まりですねー」
そして最後のババ抜きをやることになった。
その結果……。
俺は負けて、こいつ——小林玲奈を送っているというわけだ。
ずっとニコニコしていて気持ち悪い。もう早く送って家に帰ろう。
「センパーイ」
「なんだ?」
「なんでもないでーす」
「叩いて良いか?」
「そんな! 可愛い女の子を叩くんですか」
「周りから見たらそうかも知れんが、俺から見たらブスな女だ」
「もう! 連れないですね」
ずっとこんな会話に付き合わされる俺の身にもなってほしい。
本当に疲れるぞ。
「センパーイ」
俺がずっと心の中で不満を呟いていると、また小林玲奈が話しかけて来た。
「はぁ……。今度はなんだ?」
「私がなんでさっきの勝負で、付き合うって言わなかったか分かります?」
「はあ! そんなの当たり前だろ。流石にそれは断ってるぞ」
「でも先輩こそどうせ、勝負に勝ったら『俺に一生近づくな』って言うんじゃないですか?」
「なんでそう思うんだ?」
こいつ心が読めるのか。そんなことを思いながら返した。
「だって私のことが嫌いならそれくらいするでしょうし」
「まぁするつもりだったな」
否定するわけでもなく俺は堂々と言った。
「でしょ。それと付き合うのって対して変わらないと思うんです。もっと言えば私の方がきついと思います」
「それは……。まぁ一理あるな」
好きな人に近づけないのは、本当に辛いことだからな。今現にそうなってるし。
「それを踏まえてまた質問しますけど、どうして付き合ってという命令にしなかったのだと思います?」
「それは芽衣が居たからじゃないのか?」
「芽衣ちゃんはもう私が先輩を好きなこと知ってますよ」
「じゃあ……」
なんでだろう。それ以外に思いつく事が無いな。
「答えを聞きます?」
「まぁ一応」
「私に先輩が惚れて告白させるためです」
「はぁ」
「私は一回大恥をかいたんですから、先輩も味わってもらうべきです」
「天地がひっくり返ってもお前に告白することはないと思うぞ」
お前が後20歳、いや15歳でも年上だったら変わってたかも知れないが。
「そこまでですか! でもまあ良いです。先輩は私に絶対惚れますから」
そう言った小林玲奈「ここまでで良いです」と言って去っていった。
「俺が、小林玲奈に惚れるか……」
前までチャンスがこれっぽっちも無いと思っていたが、もしかしたらと考えてしまう俺が居た。
すると曲がり角の前で小林玲奈はこっちを振り向いて、一言言って来た。
「言うのを忘れてましたけど、あのトランプ私イカサマしましたからね。一応言っておかないとスッキリしないので」
「はぁ!」
全く気づかなかった。
だがもうそんな事はどうでもいい。なんで俺はあいつなんかにチャンスがあると思ったのだろう。
俺は小林玲奈以上に自分を責めたい気分だ。
もう絶対にそんな事を思わないぞ!
そう心に強く誓った俺だった。
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