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後輩に迫られる

「はぁ……」

「何ため息なんかついてんだよ」


 俺に話しかけてきた男は柊透俺とは全く別の男だ。


「お前には分からんよ。ロリコンだからな」


 そう、こいつはロリコン。小さい女の子が好きという、俺からしたら全くもって分からない。

 しかし俺とこいつは特殊な趣味を持っているためか、息が合う。そのためよく一緒にいるというわけだ。


「何があったんだ?」

「後輩に告白された……」


 俺はなんだかんだでこいつのことは信じている。だからこいつにだけは言ってもいいと思った。

 

「誰にだ? 返答次第でお前を殺すかもしれんぞ」

「ちょ! 物騒だな。でもお前のストライクゾーンに入ってないと思う」

「じゃあ、誰だ?」

「小林玲奈」

「……なんだ。それならいいや」

「だろ?」


 こいつは根っからのロリコンだ。本当にミニマムサイズにしか興味がないらしい。そのため、小林玲奈のような、色んなところが大きい女子には興味がないらしい。


「もちろん断ったんだろ?」

「当たり前だ。年下なんて。今俺は英語教師の小野先生にゾッコンなんだ」


 小野先生はとても魅力的だ。俺はこの人に会うためだけに、学校に来ていると言っても過言ではない。


「はぁ……。あんなババア教師を……」

「何を言う。最高じゃないか。あの汚れの知らない髪」

「ただの白髪な」

「あの誰に対しても笑顔で接する余裕のある姿」

「そうか……。ちょっと吐いてきていいか?」

「何でだよ!」


 こんな日常的な会話が結構好きだったりもする。だから学校生活はこのままが良かった。のに、


「あ、いたいた。横井センパーイ」


 俺のクラスに小林玲奈が来た。あの告白は夢ではなかったのか。

 教室に入ってきた途端教室の中のがざわめきだした。

 しかもその美少女が一直線で俺のところに向かったため、より一層ざわめきが強くなった。


「横井先輩。一緒にご飯食べましょう」

「…………」

「なんで無視するんですか!」

「うん? なんだいたのか? 俺は35歳以上の人じゃないとよく見えなくなるんだ」

「なんですか! その変な機能は」


 はぁー。しんどい。これだから若い女は嫌なんだよ。うるさいし。


「じゃ。俺は食堂行ってくるからー」

「逃げないでくださいー」


 そう言って小林玲奈は俺についてきた。


「なぁ、ちょっとついてこられたら、俺がこの後死ぬんだけど」


 現に色んな男子生徒から睨まれている。小林玲奈が来てから透もいつの間にか居なくなってるし。


「あー……。それはごめんなさい」

「ちゃんと自分の立場が分かってるなら早いよ。だからせめて人が多いところでは、関わらないでくれ」

「はい……。——では一緒にご飯を食べましょう! 誰もいないところで」


 はぁ。何を言い出すかと思えばそんなことか。


「食べるわけないだろ。俺から言わせてみれば、お前なんてブスだし眼中にもないんだよ」

「な。そんなことを言うなんて酷いですよー」


 俺は絶対に嫌われるだろう言葉を小林玲奈に向けた。

 言葉では酷いと言いながら、小林玲奈は若干嬉しそうにしている。


「お前ってドMか?」

「い、い、いきなりなんてことを言うんですか!」

「だって俺が罵倒してもなんだか嬉しそうにしてるし」

「そ、そんな事ないですよ!」

 

 小林玲奈はそう言って口を膨らませて怒った。


「じゃあ何個か質問するぞ」

「はい、なんでもどうぞ」

「俺を殴れる権利と、俺に殴られる権利どっちが欲しい?」


 俺が丸わかりの質問を問いかけた。すると小林玲奈は即答で


「殴られる権利です!」


 と答えた。


「はぁ。やっぱりドMじゃねえか。俺変態にはもっと興味ねえ」


 俺がそう言って小林玲奈を振り払って進もうとすると小林玲奈が反撃をしてきた。


「殴られる権利を選んだのは、私が横井先輩を殴りたくないからです。それに、横井先輩の方がよっぽど変態じゃないですか」

「別に普通だろ」

「いやいや、普通じゃないです! こんな若くて可愛い女の子に言い寄られているのに、私たちより一回りも二回りも年上の人を好きになるなんて」

「いやいや、年上の魅力が分からないなんて終わってるな」

「いえ、年上の良さは分かってますよー。だって私横井先輩のことが好きなんですから」

「たった一歳差じゃねえか。それじゃあ分かったと言えねえよ」

「ならどこが良いのか教えてもらおうじゃないですか!」

「ああ、良いぜ。骨の髄まで年上の良さを叩き込んでやる」

 

こうして俺は小林玲奈とご飯を食べる事になってしまった。

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