表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/28

第一章(5)



  ***


 日が沈むと、あたりはだいぶ冷え込んできた。

 小屋を出て空に輝く星を見あげれば、ユニのようなまだ幼い巫女にはすでに遅い時間となっている。

 このムラで修業中の巫女たちは、離れに作られた大部屋で共同生活送っていた。帰りの遅いユニを、寮長の巫女はきっと心配しているだろう。

 声を再び声をかけて起こそうとしても、ユニは眠り続けている。

 冷えないようにと、ユニの肩に干し草をそっとかけ、アミネは寮長の小屋に向かった。扉をそっとたたくと、かっぷくのいい寮長が、わざわざ表まで出てきてくれた。二人で星空の下を歩きながら、アミネは、ユニが自分の小屋にいること、そのまま寝ていることを告げた。

「ご心配をおかけしてすみません」

「気にしない、気にしない。神殿に行ったとは聞いていたし、あの子、あんたには懐いていたからね。こっちもそんなところだろうと思っていたさ……。ところで、明日には旅立ちだって聞いたけど」

「ええ、クタガのムラへ、日の出とともに。……ユニには気づかれないように日の出前にはムラを去るつもりです」

「それはまた急だねぇ……。さみしくなるわ」

 寮長はアミネを抱きしめると、旅の安全を祈る祝詞をイアに捧げてくれた。アミネは深く頭を下げる。

「ありがとうございます。いろいろとお世話になりました」

「とんでもない。世話になってたのは、こっちの方さ。今までは『いい子にしてないと、アミネ様が帰ってこないよ』って言えば、一発だったからねえ……。あんたがもう帰ってこないとなると、きかんぼうのユニをどうやって修行にだしゃいいのか……。私しゃ頭が痛いよ、本当にね」

 深い皺のよった眼尻をぬぐうと、寮長は目をしばたたかせながら、首を振ってわざと苦笑いを浮かべてみせた。

 もともと活発なユニだから、すぐにおてんばを始めるに違いない。

 でも、もしアミネの帰りを信じて、いじらしく『いい子』を続けたとしたら……それはあまりにもやりきれなかった。

 ユニは修行を終えたら、昨日までの自分のように、やがては大王のあとに続いて、各地の森を征伐するシルメトの巫女になる。一方の自分は、明日から辺境のクタガで、一生をムラの祭祀に捧げる身だ。もう会えることはないだろう。

 明け方前には迎えの者を送るから、忙しいとは思うけれど、最後の晩ぐらい一緒にいてやってくれ、と寮長は言った。

 ユニはそのままアミネの小屋に寝かしておくことになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ