おごれるもの
前編
貧しさで言えばおそらく私はこの世の誰にも負けない
私は小さい頃、両親に捨てられた。
…と言うと少し冷たく聞こえる。
本当の事を言えば。言い換えるなら、
両親は小さい頃の私に捨てられた。
その時は確か
「おかあさん、いまからどこにいくの?」
「今から丁度、島に行くの。"ヒバリ"も行くでしょ?」
「うん!わたしもいく!」
「そうかそうか、いつもお寝坊さんのヒバリも今日に限っては早いなあ」
「だってじいじにあえるから!」
「あっちに居るのは日帰りなのにテンション上げちゃって…よおし!私もヒバリの為に昼ごはん、はりきって作っちゃうぞ!」
「やった!」
もう取り返しの尽かない事だ。そんなやりとりから1時間後私が乗った車、2人が乗っている車は高速道路で事故に遭った。私は奇跡的に後部座席から"クッション"に支えられて生き延びた。そのクッションは2人の死体だった。
目眩、頭痛、溢れる血、血血血血血血血…
全てを差し置いて、私の目の中に入り込んできたのは、前で、高速道路の上で、立ち尽くして笑って狂気とも言える動きをする老人。
高速道路で老人が立っていた。
それは私の祖父だった。
そのまま私の意識は飛んだー
「どう?ここまでの話で私の事、少し分かった?」
「ああ、痛いくらいに分かった。いいや、痛く分かってしまった。俺にそれを言及する義務も権利も方法も無い。もっと早く、何か出来ていれば…」
「でもね、たった1つだけおかしい事がある。
私の祖父は"立つ事が出来ない"
私の祖父は私の祖母が亡くなった後、交通事故で両足の神経を無くしているの、車椅子で移動していたの。」
「っつう事は…つまり…」
「そう、私の祖父はこの事故に何も関係無い、と言える可能性が高い。」
「それが幻か幻影か…どう言えば言い表せる…お前が良いならこの話の続き聞かせてくれないか?」
「ええ。」
事件から翌日ー
実は私達が事故に遭った直後、私の祖父は自宅で亡くなっていたらしい。
老衰。病気でも何でもない、ただの老衰だった。
祖父は事前に自分の死期を悟っていたのか、祖父は遺言書を遺していた。そこに「葬儀はいらん。さっさと埋葬してくれ」と電話のメモの様に書き遺していた。
私はその時、事故のショックで一種の鬱状態に陥っていた。物聞かず、食いもせずただただ寒気がしていた。もう一方の祖父母とは険悪の中であり、実質縁を切っている様な状態だった。
なので私は孤児院に入る。
予定だったが"それ"が続いた状態だったのでそのままどこへ引き渡すか、周りで日に日に問題に直面する物議がされていたらしい。
その時の事は全く覚えていないから、全て聞いた話だ。




