プール
明日は仲のいい友達とプールに行く事になった。
親友の『たけし』のお父さんが経営しているらしく、僕たちだけの貸し切りだ。
前から気になっていたあの子も来るらしい。
もう夜の11時だと言うのに、胸が高鳴って眠れない。
なぜなら、僕は明日あの子『みか』に告白するからだ。
◇
翌日、プールは貸し切りということもあり、みんな大はしゃぎで遊びまわった。
ふと気づくと、たけし達はどこかに行ってしまったらしい。
どうしよう。今はみかと二人きりだ。
これはチャンスなのか。でも、まだ、心の準備ができていない。
ふと、僕はみかを見る。
すると、みかも僕を見ていたようで二人して視線をそらし始めた。
「あっちいけよ」
僕はみかにそう吐き捨てた。
するとみかも、
「あんたがいきなさいよ」
と言った。
どうしようもなくなった僕はプールの水をみかにかけた。
すると、みかも僕に水をかけ返してくる。
「やめろよ」
と、僕が言うと
「あんたが最初にかけてきたんでしょ」
とみかが言った。
次の瞬間、みかの肩に、水をかけようとした僕の手が触れてしまった。
「「あっ」」
二人とも動きを止め、見つめ合う。
今だ。
僕はついに告白を決意する。
「「あの」」
二人の声が重なる。
「あんたが先にいいなさいよ」
「お前こそ言えよ」
「もう、知らないっ」
みかはその場から離れようとする。
「ちょっと待てよ。お前のことが好きなんだ」
「もう、前からずっと好きだったのに」
「「えっ?」」
セミの声が二人しかいないプールに鳴り響いている。
長い長い僕の夏休みが、二人だけの静寂と共に始まりを告げた。