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おひさまのばんそうこ  作者: あらうさ(´Å`)
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第7話 神器

  第7話 神器


ーーー 工房 ーーー


「おい、博士はいるか!?」


「なんじゃ、騒々しい」


「三柱神の封印が解けるって話をしたら、なのよが飛び出して行っちまった!」


 セカイノは博士の肩を掴む。


「なのよどこへ行ったのか知ってるんだろ?教えてくれ!」


「落ち着け!」


 博士はセカイノを引き剥がす。


「順番に話さんか」


 博士はネクタイを整えると、


「三柱神の封印が解けるじゃと?」


「ああ、三柱神の力の流れの先に、ヒビが入っている。このままじゃ一年ともたねえ」


「なるほど、それでなのよがいなくなった訳か」


「ああ、先生があんたならなのよの居場所を知ってるって言ったんだ」


「青空教室の先生か」


 セカイノは頷く。


「で、どうなんだ。なのよがどこに行ったのか知ってるのか」


「知っておる・・・じゃが、それを知ってどうする?」


「なのよは何か思いつめていた。何かまた危険な目に遭うんじゃないのか?」


「あの子は普通じゃない。大丈夫だ・・・と言いたいところだが」


 博士は一息置いて、


「目覚めの森ではなのよが世話になったようじゃしの。わかった。教えよう」


「頼む」


ーーーひざしの都の南にある灯台ーーー


「ここか」


 セカイノは灯台を見上げる。入り口のところにカードリーダーがある。

普通のカードでは単に灯台の扉が開くだけだが、

セカイノは博士からもらったカードを通すと、ゴゴゴという音と共に三十メートルにわたって海が割れた。


「すごい仕掛けだな、おい」


 セカイノは入り口に向かう。


ーーーその頃ーーー


「えーと、確かこの手順でよかったのよ」


 なのよは大規模な機械の前で複雑な装置を操作していた。


 慣れない手つきで、複雑な封印を一つづ解いていく。


「あと少しなのよ」


封印が少しずつ解かれてゆく。だが、


「そこまでだ」


 ふいに、背後から声がかかる。

なのよが振り向くと、そこには髑髏のお面をかぶった黒づくめの人間が立っていた。


「工作員?いつから?」


「最初からだ」


「そんなことないのよ。私が気付かないなんて、有り得ないのよ」


「だが事実だ」


「一体どうやって・・・」


ーーー神殿内部ーーー


「どうなってやがんだこれは!?」


 セカイノは神殿に侵入していたが数々のトラップに足止めをくらっていた。


 目の前には長い通路がある。セカイノは足元の石ころを拾うと床に投げる。


ガシャン。


 左右から無数の槍が飛び出す。


「なのよはこんな道を進んでいったのか?・・・いや、おそらくどこかに隠れのショートカットがあるハズだ。・・・くそ!今から引き返しても間に合わねぇか!」


ーーー 一方 ーーー


「これは何だと思う?」


 仮面の男は手の中にあるものを見せる。


「それは・・・魔導具?」


 仮面の黒装束は赤い玉が禍々しく光る珠のついた宝玉を持っていた。


「正解だ」


 言うと同時に黒装束の姿が消える。


「!」


 なのよは構える。


 次の瞬間、なのよの体がくの字に折れ曲がる!そしてそのまま壁に激突する。


「がはっ!」


なのよはそのまま崩れ落ちる。


 黒装束は姿を現し、


「どうだ。姿はおろか、音、呼吸、気配に至るまで、完全に消えているだろう」


 黒装束は首をこき、こき、と鳴らし、


「まあ会話をするためにいちいち姿を現さなければならないがな」


 黒装束はなのよの襟を掴み、持ち上げ、言った。


「神器の在り処を教えてもらおう。神器が起動したら面倒なことになるのでな」


ーーー神殿内部ーーー


 セカイノは壁にある二つのレバーを見つめていた。


「うーん」


 明らかに罠くさい。脳が全力で警鐘を鳴らしていた。


「こっちだ」


 セカイノが右のレバーを下ろした。

どこからか、ゴゴゴと地鳴りのような音がする。

セカイノは嫌な予感がした。

と、突然頭上の壁が開き、大量の水が降り注ぐ!


「やっぱりかぁぁぁぁぁ!」


 セカイノは水に押し流される。

水は単に通路を流れるだけではなく、通路に仕掛けてあるトラップまでも押し流し、壁を砕きながら押し流す。

作られてから二百年もの時間が流れていたのだ。神殿はあちこち老朽化していた。


そして水は高いところから低いところへ、低いところへ、と流れる。


ーーー神殿最下層 神器の間ーーー


 ゴゴゴと音がする。


「なんだ?」


 黒装束の仮面の男が訝しげる。


音は次第に強くなり、ドドド!と黒装束の上に、大量の水が落てくる!


黒装束は、なのよを機械の上に放り投げ、自分は水に押し流される。


しばらくして、


 セカイノはうーん、と声をあげ、気がつき、辺りを見回す。

 

 セカイノは機械の上に引っかかっていた。


 すぐ近くにはなのよも機械に引っかかっていた。


「なのよ!」


 セカイノはなのよに声を掛ける。


「うーん」


 なのよは気が付く。


「セカイノ・・・何でここに居るのよ?」


「お前が心配で追いかけて来たんだよ!」


「・・・また、助けられたのよ」


「さ、帰るぞ」


 セカイノはなのよに手を差し出す。


「まだ終わってないのよ」


 なのよは神器の間の入り口を見やる。


そこには髑髏の仮面をした黒装束が立っていた。


「お前がセカイノか?」


「何で俺を知っている?」


「ここは非常に狭い業界だからな。お前が『痩せ男』を倒したのも知っている」


「じゃあとっとと帰るんだな。同じ目に遭いたくなければ」


「月並みな言葉で悪いが、私をあいつと一緒にしないでもらおう」


 言うと、黒装束の姿が消える。


「気を付けるのよ!姿だけじゃなく音や気配も消せるのよ!」


 なのよがすかさずフォローを入れる。


「わかった!」


 セカイノは少し観察すると、走り出す。

真っすぐ走って急に曲がり、飛び蹴りを放つ!


「ぐわっ!」


 黒装束の男が吹っ飛び、姿を現す!


「な、なぜ・・・」


 セカイノはちょいちょい、と足元を指差す。


黒装束も足元を見て、気付いたらしい。


靴跡だ。泥水に黒装束の足跡がくっきりと残っていた。


「くそっ!」


 黒装束が身構えるより早く、セカイノが懐に飛び込む!


黒装束の動きに合わせてセカイノがカウンターを決めた。


 黒装束は吹っ飛ぶ。


「運が悪かったな」


 セカイノの言葉と同時に、黒装束の意識が途切れる。


「終わったな」


 セカイノがなのよの方に向く。


「ちょっと待つのよ」


 なのよはなにやら機械を操作している。


「そいつは?」


 セカイノの問いに、


「神器の調律機なのよ」


「調律?」


「神器にに集まる力を集約して思う結果に導く機械なのよ」


「水で壊れてるんじゃないのか?」


「そうなのよ・・・でも、神器を取り出すことは出来るのよ」


 なのよはそう言って機械を操作する。

機械の中央上部の蓋が開く。


「これでいいのよっ・・・と」


 なのよが機械から、首飾りのようなものを取り出す。


「なんか光ってんな」


「二百年にわたって集められた三柱神への信仰の力が凝縮されてるのよ」


「それだけでも歴史を感じるな」


「じゃ、行くのよ」


 なのよは首飾りを首にかけ、出口の方へ向かう。


「ちょっと待て」


「何なのよ?」


「こいつも連れて帰ろう」


 言うとセカイノは手の裾から極細ワイヤーを取り出し、黒装束をぐるぐる巻きに縛る。


「この神殿も水のトラップでいつ崩れるかわからないしな。連れて帰って治安委にでも引き渡そう」


 なのよは頷く。

 そして、カードリーダーにカードを通すと、中に乗り込む。セカイノもそれに続く。


その仕掛けはエレベーターだった。

上昇するのをしばらく待ち、出口に到着する。そこはーーー


「灯台の内部かよ!」


 セカイノは呻く。


 エレベーターは灯台の一階の床からせり出していた。

 

なのよは、


「おそらくセカイノは、博士からカードを灯台で使え、としか言われてないのよ」


「その通りだよ!」


「でもどの道セカイノが持ってるカードと私が持ってる要人用のカードでは、作りが違うのよ」


「・・・そうなのか」


「ねぇ。セカイノ」


 なのよは改まったように聞いてくる。


「何だ?」


「セカイノは何で私の世話をしてくれるの?」


 セカイノはしばらく考え込んでいたが・・・


「昔、ちょっとな」


 それだけを言い返してきた。


「ふーん」


「まあ、いいや、そんなことは」


 セカイノはなのよの頭をくしゃくしゃに撫で、


「もう今度は一人で突っ走るなよ」


 なのよを見て、笑う。


「わかったのよ」


 そしてなのよ達は灯台を後にした。

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