第6話 封印
ーーー青空教室ーーー
「で、なのよ君からどこまで話を聞いてるのかね?」
先生は尋ねる。
「200年前の『覇権戦争』が自称唯一神の大陸布教に始まり、依り代を使った飢餓戦争に発展し、食料争奪戦になり、東の大国が大陸の東部を制圧した辺りで西の大国と諸勢力が反撃に転じ、東の大国の首都が陥落し、自称唯一神がこの島に敗走し三柱神と諸神によって封印されたところまで聞いた」
先生は頷き、
「なるほど。大体のところは抑えてあるな」
そう言うと紅茶をすすり、続ける。
「君は、神の存在を信じるのかね?どこかの宗教に入ってるとか?」
「どこにも入ってねぇよ」
セカイノは腕を組み、
「ただ、結構な数の土地神と面識があるだけだ」
「土地神?」
「その地域ごとに根付いてる土着の神様のことだよ」
セカイノは紅茶をすすり、
「大抵は気候神だな。その土地の日照や降雨をコントロールして大地に恵みを与える神だ。たぶん、世界で一番多い神々だな」
「なるほど・・・君は神々と交信できるんだな」
先生はアゴに手をやる。
「交信できるっつーか見えるし言葉も聞ける」
「「!?」」
なのよと先生が驚いたように互いを見やる。
そして先生が続ける。
「で、君は三柱神を見てどう思った?・・・まあ三柱神自体はかなり強力なので普通の人にもたまに見えるが」
セカイノはため息をつき、声を落として、だがはっきりと。
「封印が消えかかっているんじゃないか?」
「「!」」
先生となのよは、また顔を見合わせる。
そして聞き返す。
「何故、そう思うんだ?」
「見えるからな。姿だけでなく力の流れも」
「「!」」
またも先生となのよは驚く。
「具体的にどう見えるんだ」
「三つの柱の中央、塔のてっぺん辺りに力の亀裂が見える」
セカイノは腕を組んで、
「あれはもう今年中には封印が解けるな」
言い切る。
なのよと先生はしばらく沈黙していたが・・・
なのよは頷き、
「セカイノ。今までありがとうなのよ」
「? どういう意味だ?」
「もうこの島の案内は出来ないけど、セカイノのことは忘れないのよ」
「オイ待て、案内がいなくなったらこれから俺はどうすればいいんだ?」
「先生、セカイノを宿まで送って行って、次の案内人を紹介してほしいのよ」
「わかった。君は行くといい」
なのよは頷き、駆け出す。
振り向かずに、真っすぐに。
セカイノは先生に詰め寄る。
「おい! なのよはどこへ行ったんだ!」
「行き先は私も知らない。が、おそらく博士なら知っているだろう」
「博士のところへ連れて行ってくれ!」
「・・・君は部外者だろう? 何故そんなに関わろうとする?」
「・・・子供が死ぬところなんてもう二度と見たくないからだよ」
セカイノは顔を上げ、
「あいつは危険なところへ行ったんだろう?」
「そうだ。だが、彼女なら問題ないと思った。だから止めなかった」
「そういう問題じゃねぇ・・・俺は行くぜ」
「わかった。なら案内しよう」
「頼む」