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おひさまのばんそうこ  作者: あらうさ(´Å`)
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第二章 第4話 三柱神

 

ーーー翌朝、宿屋ーーー


「ふう、昨日は疲れたな」


 セカイノは一呼吸おくと、伸びをする。


「今日はゆっくり過ごすか」


そう言うとベットから降り、入り口のドアの横に移動する。

壁を背に聞き耳をたてると、バタバタと足音が聞こえる。その音は次第に大きくなると、

バン! と、勢い良くドアが開く。

セカイノはすっ、と足を差し出す。


「セカイノ! おはよおおおおお!?」


 なのよは盛大にずっこけた。


「何するのよ!」


「お前こそ何するつもりだったんだ? またフライング・ボディ・プレスでもする気じゃなかったんじゃないか?」


「うっ」


 なのよは図星と言わんばかりに身を引き、話題を変える。


「そ、そんな事より外を見るのよ」


「?」


 セカイノは窓を見やる。


「なんだこりゃあああああ!」


挿絵(By みてみん)


 窓の外には、山々の大きさをも越える超巨大な塔が立っていた。


「きのうはあんなもん無かったよな? それに塔の根元が消えかかってるんだが、あれは蜃気楼なのか?」


 なのよに尋ねる。


「あれは三柱神なのよ」


「三柱神? ってことはあれは神様か? あんなでけぇのが三つもあるのか?」


 なのよは頷き、


「あれの由来は、200年前まで遡るのよ」


 なのよは指を立てて言った。


「結構最近だな。200年前って言ったら、大陸で覇権戦争があった頃か」


「そうなのよ」


 なのよはベットに腰掛ける。


「覇権戦争は、表向きは大陸の大国どうしが大陸の覇権を賭けて戦争したという事になってるけど、実際のところは違うのよ」


「どう違うんだ?」


 セカイノが尋ねる。


「実際は東の大国に君臨する自称唯一神が自分の勢力を拡大し、地域神に邪神のレッテルを張り、滅ぼし、その地位を不動のものにするために仕掛けられた戦争なのよ」


「なるほど・・・戦争の裏に宗教が暗躍してたって噂は聞いていたが・・・」


 セカイノは考え込む。

なのよはセカイノのほうを見ていたが、話を続ける。


「で、三柱神のことだけど」


 セカイノはなのよのほうを見やる。


「そうだ。柱の話だったな」


 なのよは頷き、


「自称唯一神と地方の神々の争いは激しかったのよ」


 なのよは秘められた歴史を語りだす。


 最初は大陸の作物をお互いに減らす程度の被害だったという。


それが次第にエスカレートし、東の大国ではほとんど作物が取れなくなり、飢餓が蔓延した。


「ちょっと待て、なんで神々は食料を狙ったんだ?」


「神々の力は信徒の数と信仰の強さで決まるからなのよ」


 なのよは指を立て、


「そして神々の奇跡の力を行使するには神の器となる依り代が必要になるのよ」


「神の力は制限つきってわけか」


 なのよは頷く。


「しかも一人につき、大体一回しか使えないのよ」


「それで食料を減らして人口を減らし、信徒の数と依り代を減らす作戦に出たと言うわけか」


「そうなのよ、じゃ、話を続けるのよ」


東の大国の食料は底を尽き、滅ぶのも時間の問題となるのは目に見えていた。

そこで東の大国は近隣の豊かな国へ進撃し、食糧問題を解決する方法に打って出た。


「これが覇権戦争の始まりなのよ」


「話を聞く限りではどっちが悪かわかんねぇな」


「戦争に善悪は無いのよ」


 なのよは話を続ける。


東の大国の快進撃は続き、大陸の東側の大半を制覇し、大陸の制覇も時間の問題と思われたが、そこに西の大国が重い腰を上げた。


西の大国は西方諸国と連携し、大船団を率い、東の大国の背後から首都を奇襲、制圧し、壊滅的打撃を与え、補給線を分断した。


「たびたび間に入ってすまんが、ちょっと待て」


「何?」


「首都を制圧できるだけの戦力? それだけの船団をどうやって見つからずに移動させたんだ?」

 

なのよは良く聞いてくれましたとばかりに、


「そう、それこそが神々の使う『奇跡』なのよ」


なのよは得意げに言って、


「船団が西の大国から出発して東の大国の首都に上陸するまで、『奇跡』の力で隠れて進んだのよ」


「なるほどな。『奇跡』の力を使うタイミングとしてはこれ以上は無いほどグッドだ」


 頷き、なのよは話を続ける。


 海に面した首都を難なく陥落した西の大国は、『奇跡』の力で作り出した『神器』で自称唯一神を首都から追い出した。


そして自称唯一神はこの島に敗走して、この島に住んでいた古代神、『三柱神』とその他の地方神によってこの島に封印された。


「これがこの島にある三柱神と自称唯一神にまつわる歴史なのよ」


「この島の伝承はすげぇな。俺が学んだ歴史とはぜんぜん違う」


「関わった国々がそれぞれの思惑で情報操作が行われたから仕方ないのよ」


 セカイノは窓の外の超巨大な柱を見つめ、


「あんな物見せられちゃ、そら納得するしかないわな。でもなんであの塔、透けてるんだ?」


「一説には自称唯一神を次元の狭間に封印されたから、と言われているのよ」


「なるほど」 


と、ここでなのよが話を変える。


「ここまでの情報料1万キャシュなのよ」


「金取るのかよ!」


「当然なのよ。この情報をいろんな酒場で話せば、あちこちで奢って貰えるから元は取れるのよ」


「う・・・わかった。だが事後承諾だから半値の5千な」


 なのよは痛いところを突かれて、


「し、しかたないのよ」


 なのよは受け取ったお金をバックに入れる、

「それより今日は先生に会ってもらいたいのよ」


「先生?」


「そう。この歴史を教えてくれた先生なのよ。

この歴史の続きも知ってると思うのよ」


「また金を取るのか?」


「先生は青空教室をやってるのよ。たぶん無料なのよ」


「へぇ。それなら会ってみたいな」


「じゃあ準備するのよ」


「おう」


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