第32話
ーーーアラート山、南の平野ーーー
セカイノ達は猛スピードで車を飛ばしていた。
「おい!工作員達も車に乗ってるのか!?」
セカイノがトトに尋ねる。
「いいえ、街の人たちの話では数台の馬車に乗って逃走したそうです!」
トトは付け加える。
「車はだいぶ普及してきたとはいえ貴重品、工作員達が手に入れようとすれば必然とあしが付きます」
「じゃあここまで飛ばす必要は無いんじゃないのか!?」
セカイノは車にしがみつきながら指摘する、
「連れ去られた二人が心配なんです!あの二人は僕もよく知る人たちですから」
「危害が加えられるとでも?」
トトは俯き、
「それは無いと思います・・・依り代に何かあったら信者はより強固に団結しますし、依り代は取引材料としても貴重な存在。殺すつもりなら街でそうしていたでしょう。ですが催眠くらいはかけられてるかも知れません」
「とりあえず気持ちはわかったから安全運転で頼む」
トトは幾分落ち着きを取り戻すと、荒い運転から正確無比な運転へと切り替える。
しばらく街道を進むと、
「見えてきた」
前方に馬車の集団が見える。
「しっかり掴まってください!」
トトが車を左に寄せる!
すると少し遅れて弾幕が少し前にいた場所に、雨あられと降り注ぐ。
「機関銃か!」
セカイノが舌打ちする。
トトはそれからも車を左右に振り、弾幕を避ける。
「ちっ!動いてるもの同士じゃこちらの能力の優位が取れねぇ!」
セカイノとなのよは車にしがみつき、やり過ごす。
最後尾の馬車から細長い筒のようなものが現れる。
セカイノはハッ、とし、
「対戦車ライフル!あんな物まで!」
セカイノはトトに向き直り、
「貴重品の購入はあしが付くんじゃなかったのか!」
「たぶん北部のゲリラ組織『反政府戦線』から買ったんだと思います」
トトの台詞が終わると同じくらいのタイミングでズドン、と音が響き渡る。
対戦車ライフルから発射された弾はしかし車の眼前でそれる。
「力の流れを操る?その力凄いですね」
トトが感嘆の声を漏らす。
「機関銃の方は弾が多すぎて全てを捌ききれねぇ。車を馬車に寄せろ!」
「わかりました!」
トトはアクセルを全開に踏み、馬車との距離を一気に詰める。
その時、もう一発対戦車ライフルから弾丸が発射された。
セカイノは今度はその弾を正反対にはじき返す。
弾はそのまま対戦車ライフルを破壊する!
そしてその馬車の横に車を寄せた時、
「切・断・花!」
なのよが馬車の天幕を切り裂いた。
すかさずセカイノが飛び乗る。
「このっ!」
馬車に乗っていた3人の工作員達は銃をナイフに持ち替え、セカイノに切り掛かる!
まず一人目の工作員のナイフを上半身だけでかわし足を引っ掛ける。
工作員はその勢いのまま馬車から転げ落ちる。
二人目の工作員が足払いを仕掛けてくる。
セカイノは前に飛び、その工作員の頭を踏みつけ、三人目の工作員にとび蹴りをかまし蹴落とす。
踏みつけられた二人目の工作員が体勢を立て直し掴みかかってくる。セカイノはその腕を取って懐にもぐりこみ、背負い投げで馬車から放り投げる。
最後に馬車の運転で身動きが取れない御者を蹴落とすと、セカイノは機関銃を前を走っている馬車の車輪に向け、撃ち放つ!
前方を走っていた馬車2台の車輪が、煙を上げ地面に引きずられる。
程なくして馬車の動きが止まる。
中から6人の工作員達が出てきた。
セカイノとトトは馬車と車を止めて迎え撃つ。
次の瞬間、
「爆・発・花!」
セカイノ達の背後から飛んできた2本の花が、工作員達の足元に突き刺さり爆発する。
工作員達はなすすべも無く吹き飛ばされる。
セカイノがなのよを向くと、なのよは胸を張って、
「久しぶりに見せ場がきたのよ」
そう言うなのよにセカイノは、
「トトが入ってきて、最近お前の影少し薄かったからな」
「それを言ってはいけないのよ!」
なのよは怒る。
そんなななのよ達に構わず、トトは馬車の中を調べる。
馬車の中には二人の女の子が拘束されていた。




