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おひさまのばんそうこ  作者: あらうさ(´Å`)
3/35

第3話 襲来

ーーーーー宿屋ーーーーー



「きのうは色々あったなあ。

  ・・・今日はゆっくり休むか!」


 そう言うと布団の中で寝返りをうつ。


「てぇぃっ」


 掛け声とともに何かが勢いよくセカイノの上に落ちてきた。


「ぐえっ」


 セカイノがつぶれたカエルのようなうめき声をだす。


「なにすんだ」


「朝食の時間なのよ」


「・・・あーそりゃわかったが」


 息を吸い込む。


「もっとやさしい起こし方があっただろうが!」


「生き馬の目を抜くこの業界にそんな甘えは許されないのよ」


「いや、意味わかんねぇ」


「とにかく顔を洗ったら食堂におりてくるのよ」


「しゃあねぇな・・・って一食だけじゃなかったのか?」


「サービス・・・と、ちょっとつきあってほしいのよ」               

「構わんが・・・どこへ?」


「目覚めの森」



ーーーーー街より東にある目覚めの森ーーーーー



 真夏島。その東には広大な森と湿原が広がっている。


 そこは巨大な動物や植物が徘徊し、人間を寄せ付けない地である。


 その森の入口。


「森の中は怪物がうじゃうじゃいるのよ。準備はいい?」


「よし、やめた!」


「言ってみただけなのよ。私がいれば安心安心」


「頼むぜ、オイ」


「じゃあ出発なのよ」


 飛翔機は音もなく浮かび、前進する。


 森はドーム型で地面は湖底になっている。


 そこから様々な植物が生えており、一つの生態系が形成されていた。


「すげえな、オイ」


「ここから先はもっとすごいのよ」


「へ?」


 突如、後方の水面が盛り上がって、巨大な魚が飛びかかってきた!!


「うおおおおおおおお」


挿絵(By みてみん)


 セカイノの雄叫びとは関係なく、飛翔機はすれすれで回避する!


 しかし巨大魚はしつこく追ってくる。


「おいどうす・・・」


バリバリバリッ!!


 突如、巨大魚に電撃が走る!


「ぎぇぇぇぇぇっ」


「へ?」


「先を急ぐのよ」


「今のお前?何したんだ?」


「すぐにわかるのよ」


 飛翔機は何もなかったのように森の奥に進む。



ーーーーー森の中心部ーーーーー



「着いたのよ」


 そこは遺跡だった。石で出来た祭壇は木々と混ざり合って、厳かな雰囲気を漂わせていた。


「さあ、始めるのよ」


 すると遺跡の奥から声がした。


「あら、お客人かしら」


 現れたのは痩身の老婆だった。


「こんにちわなのよ、マージョ先生」


「あら、なのよちゃん、こんにちわ」


「どうも」


「あなたは・・・初めてお会いする方ですね」


「セカイノといいます、どうぞ宜しく」


「なのよちゃんが連れてきたということは・・・」


「そう、『適正者』なのよ」


「では『覚醒の義』をするのですね」


「そうなのよ。潜在能力を引き出すの」


「お前らちょっと待て」


「どうしたの?」


「潜在能力を引き出すとか覚醒とかいったい何をするんだ?」


 セカイノは疑問を口にする。


「それをしたら手から炎を出せるようになったり水を出せるようになったりするのか?」


「人によっては出せるようになるのよ」


「マジかよ」


「マジなのよ」


 その雰囲気にセカイノはただならぬ予感を感じた。


「ちょっと待ってくれ。判断する材料と気持ちを整理する時間がほしい」


「別に構わないのよ、とりあえずマージョ先生に会ってもらう必要があったのよ」


「セカイノさん、よく考えてお決めになってください。潜在能力を引き出さずにいるという選択肢もあるのです。そして時にはそのほうが正しい場合も」


「ああ、わかった」


「そうだ。マージョ、一つ聞きたい」


「なんでしょう」


「潜在能力は事前にどんな能力か分からないのか?」


「漠然とでよろしければ、わかります」


「じゃあ教えてくれ」


「・・・わかりました」


 そう言うと、マージョは円を描くように手を動かし、その空間に水晶球を呼び出した。


「おお」


「この水晶に手を触れてください」


「おうよ」


 触れると、水晶は虹色に光った。


「これは?」


「これは・・・かなり珍しいですね。・・・あなたは一分野の潜在能力を引き出して、そしてそれを使いこなしています」


「そうなのか?」


「珍しいのよ」


「ここではこれ以上能力を引き出すことは出来ないので、別の場所を紹介しましょうか?」


「そうするのよ。セカイノも次までには覚悟を決めるのよ」


「ちょっと残念だな、だが・・・わかった」


「マージョ先生、また来るのよ」


「気をつけてね」


 マージョの見送りを背に、なのよ達は森の出口へと向かおうとした。


 その時。


 ピシリ


 何かが砕けるような音がした。


 なのよとセカイノは音のしたほうを見やる。


 音はドームの天井辺りから聞こえてきた。


「なんだありゃあ」


 セカイノは呟く。


 ドームの天井辺りの木々が灰色に染まっていた。それが少しずつ拡大しているのだ。


「ドームが枯れている?」


「あそこを見るのよ」


 なのよは灰色の中心を指をさす。


 そこには痩身の男性が立っていた。


周りの木々から淡い光のようなものが男に向かって集められている。


「木々のエネルギーが吸われているのよ」


「見つけたぞ」


 痩身の男性が呟く。


「知り合いか?」


 セカイノがなのよに尋ねる。


「知らないのよ」


 痩身の男はなのよを一瞥し、


「なのよ、はお前だな」


 痩身の男はなのよを見やり、声をかけてきた。


「向こうはお前を知ってるようだが」


 セカイノがまたなのよに尋ねると、


「誰なのよ?」


「知らないとは言わせないぞ、大国のスパイをことごとく退けているのはお前だろう」


「・・・・・・」


「どういう意味だ?」


 セカイノはなのよに問う。


「博士の依頼で、スパイ駆除のアルバイトもやってるのよ」


「・・・アルバイトで出来る仕事なのか?」


 問うが、なのよは答えない。


「さあ、始めようか。俺は今までの敗北の教訓を生かせるように送られてきている。これまでと同じようにいくと思ったら大間違いだ」


痩身の男は告げる。


「花を使うんだろう? お前の能力は」


「バレバレなのよ。半分は」


 言うなのよに、動じる様子はない。


「すべて枯らしてやる。俺の半径十メートル以内にある生物のエネルギーはことごとく吸い取る。お前の花は通じない」


「これを持っててほしいのよ」


 なのよは背負っていたリュックを外し、花を二本抜き取り、セカイノに渡す。


「どうすんだ?」


「倒すのよ」


 言うとなのよは木々を飛び移りながら敵に向かう。


「いい度胸だ。敬意を表して一撃で倒してやる」


 なのよが男の射程範囲に入る。


「さあ、枯れるがいい」


 しかし、なのよは構わず突っ込んでゆく。

エネルギーを吸い取られても動じずに。


「なに?」


「爆炎花。手持ちの花では最もエネルギー量の多いほうの花なのよ」


 なのよの手に真紅の花が輝く。

 そしてなのよは男のみぞおちに蹴りを放った。


「ぐはっ」


男はよろめきながら、


「は、はははは。そうだ。それでこそだ!こんな辺境の地に、小娘一人相手の相手をしに来たかいがあるというものだ!」


「さあ、来い。全て吸い尽くしてやる」


 男はエネルギーを吸う速度を上げた。


 しかし、


「なぁっ?」


 男の全身の血管が浮かび上がる!


「この花のエネルギーは、あなたの許容量を

超えるのよ」


「なんだ・・・と」


「さあ、もう終わり。おとなしく捕まるのよ」


「は、はははっ」


「?」


 突如、


 なのよに向けて、閃光がほとばしる!


「!」


 なのよはもう一本の花をかざす。


「フィールド花!」


 なのよの周りにエネルギーのフィールドが展開される。

が、しかし。

閃光はフィールドごと、なのよを吹き飛ばす。

 ドガッ!

なのよは太い木々に背中を叩きつけられ、そのまま意識を失い、

ーーーーー落下する。


「おいっ!」


 セカイノは落ちてくるなのよに飛びより、

枝の上でキャッチする。


「ははははは!誰がエネルギーを吸い取るだけが俺の能力だと言った?俺は吸収したエネルギーを放つことも出来るんだよ!」


 痩身の男は満足げに、


「言っただろう?今までの教訓を考慮して俺が送られてきた、と」


「そうかい」


「?」


 セカイノの声は痩身の男の真後ろから聞こえてきた。


 刹那、


 セカイノの蹴りが男のわき腹に決まり、男の体がくの字に曲がる。


「ぐはっ」


 男は吹き飛ぶ。


「なっ?」


 動揺する男はなのよのほうを見やる。


 そこにはなのよを抱えるセカイノが立っていた。


「一体どうゆうっ?」


「俺にはお前達となのよの関係はわからねぇが」


 セカイノの声がまた背後からする。


「案内人がいないと俺がいろいろ困るんだよ」


 振り向く男のみぞおちに、セカイノの拳が突き刺さった!


「・・・!」


 男は意識を失った。



「うーん」


 なのよが目を覚ます


「気がついたか?」


「あれ?ここは?」


「まだドームの中だ。おれは小型飛翔機が使えねぇからこうしてお前が目覚めるのを待ってたわけだ」


「!男の人は?」


 なのよは辺りを見回す。


「木の蔓でぐるぐる巻きに縛ってある」


「セカイノがやっつけたの?」


「ああ。まあな」


「すごいのよ」


「ひとつ聞いていいか?」


「何なのよ?」


「お前は俺がスパイだと思ったから近づいてきたのか?」


「見くびってもらっちゃ困るのよ。これでも人を見る目はあるのよ」


「だな」


 セカイノは笑う。


「ま、色々あったし、今日はもう宿に帰るか」


「了解なのよ」

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