第29話 至精霊
ーーー至精霊の間ーーー
そこは広大な空間だった。
壁には幾何学的な模様の文字がびっしりと刻まれており、それが光って空間を照らしていた。
「これは・・・真夏島中央部と同じ部屋じゃねえか」
「そうなんですか?」
トトが聞き返す。
「似てるのよ」
なのよも頷く。
セカイノは壁を注意深く調べる。
「これは・・・似てるけど違うな」
なのよも壁を調べる。
「文字の形が違うのよ」
トトは思案げな顔をし、
「前々から思ってたんですが・・・」
セカイノに尋ねる。
「文字や言語のルーツってどこから来てるんでしょうか?」
セカイノは腕を組み、
「それはそれぞれの地域で独自に生まれて独自に発展したんじゃないのか?」
「本当にそれだけでしょうか?・・・僕は思うんです。自称唯一神や至精霊様のような存在が人に干渉して出来たものではないのかと」
「なるほど・・・そいつは考えなかったな」
トトは俯き、
「文字や言語のルーツを調べることは聖精教では禁じられてるんです。もしかしたらまだ他に何かあるんじゃと思うんです」
セカイノは笑い、
「トトは冒険者か考古学者に向いてるかもしれねぇな」
トトの背中を叩く。
「僕も今回の旅が終わったら、司教様にお願いするつもりです」
セカイノは尋ねる。
「何を?」
「セカイノさん達に同行する許可をです」
「いいね。お前さんがいてくれたら俺も楽を出来る」
そこになのよが、
「セカイノは怠けることばっかりなのよ」
突っ込む。
「俺ほどの働き者もそうはいねぇよ」
セカイノはそう返し、
「ところで至精霊のほうは放っておいていいのか?」
「あっ!いけない、つい」
トトは慌てて奥に案内する。
広大な空間の反対側の壁際まで来ると、トトは、
「あれ?」
首を捻る。
「何も無いな」
セカイノは周りを見渡す。
「いない?・・・そんなはずは」
トトは視線を宙にとめる。
「あれ?あの黒いの何だろ?」
セカイノはハッ、とし、
「近づくな!」
大声で止める。
「ど、どうしたんですか?セカイノさん」
トトはびっくりする。
構わずセカイノは、
「ブラックホールだ」
「えっ?」
「それ以上近づくと吸い込まれるぞ」
警告する。
「あれがブラックホール・・・初めて見たのよ」
なのよがズレた感想をもらす。
「俺だって初めてだよ。・・・だが凄げぇ重力場だ」
「でも何でそんなものがここに・・・」
トトは、はっ、として、
「まさか至精霊様はあの中に?」
セカイノは呻く。
「おそらくな」
「そんな・・・」
トトの顔からは血の気が失せていた。
それでもなんとか声をかける。
「至精霊様!聞こえますか!」
しかし返事はない。
トトは考え込み、
「そうだ!念話なら届くかもしれない!」
トトは集中し、思念を送る。
すると、返事が返ってきた。




